387 オンステージ!!【挿絵有】
三百八十七話 オンステージ!!
さぁ、とうとう始まってしまったぜ。
メイプルドリーマー妹グループメンバーオーディション!!!
オレや多田・エルシィちゃんが観客席のゲートに入るとすでに中は超満員。
前方の席はすでに全て埋め尽くされており、オレたちはなんとか2階観客席エリア後方に空席を発見。 席につけたのだった。
「もぉー、もうちょっと早めに出てたら前の方座れたかもしんないのにー」
オレの右隣で多田が頬を膨らませながら「ぶー」と拗ねる。
「ごめんって」
「なんであの時、ウチが『そろそろ向かおうよ』って言ったのに渋ってたの?」
「え?」
「なんかあの時の福田、微妙そうな顔しながら『あー』って言ってはぐらかしてたじゃん」
多田が「ねぇなんで?」と目を細めながらオレに詰め寄り尋ねてくる。
ちくしょうめんどくせぇな。
オレがどう言い訳をしようかと考えていると、オレの左隣に座っていたエルシィちゃんがヒョコンと前のめりになり多田の顔を覗き込んだ。
「どしたぁマユちゃ、プンプンしてゆー?」
エルシィちゃんが頭上にはてなマークを浮かばせながら可愛く首を傾げる。
「そりゃあそうだよ。 エルシィちゃんももっと近くで見たくなかった?」
「なんでなー?」
「だってここじゃ、エマおねーちゃんもエルシィちゃんがどこから応援してるか……とか分かんないんだよ?」
「んー? エッチー、ダイキと、マユちゃといっしょ、うれしーのよー?」
「エ、エルシィちゃん。 それは反則だってぇー」
これには知能の高い多田もあっさり完敗。
背もたれにもたれながら「これだから可愛いって罪なんだわー」と若干火照った顔を両手で隠し出す。
ナイスだエルシィちゃん!!
オレは追撃するようにそんな多田に向けて、ちょうど思いついたばかりの言い訳を小さく囁いた。
「まぁ多田、あれだ」
「ーー……なに?」
「多田ならもう分かると思うけどな、オレ……あの時おっきくなってたから立ち上がれなかったんだよ。 ほら、周囲にバレちまうだろ?」
「!!!!!」
あえて何がとは言わないでおいたのだが……多田はオレの言葉に素早く反応。
目を覆っていた指の隙間からオレの身体のどこかへと熱い視線を向けたのだった。
「いや……流石にもう落ち着いてんぞ」
それからしばらくしてオーディションが開始。
基本的に参加者1組につき約3分が与えられ、各自この日のために磨き上げた歌やダンス、持ちネタをステージ上で次々と披露していく。
審査員にはどこかのお偉いさんなのだろう……いろんな大人もいるのだが、その中にはあの鬼マネことメイプルドリーマーの女性マネージャーの姿も。
これは少しの気の緩みが後々に響きそうだな。
しかし他の参加者はそんなプレッシャーを物ともせずにレベルの高いパフォーマンスを連発。 オレが心の中で『これヤベェんじゃね?』と焦りだしていると、とうとう……
『それでは続いてエントリーナンバー62番! 可愛い小学生仲良し3人組の登場です!! 盛大な拍手でお迎えください!!』
「あ、もしかして美波たち!?」
「だな」
「エマおねーたーん! がんばえー!!」
アナウンスの後、観客たちの拍手を浴びてステージ脇からエマ・小畑・三好が笑顔で手を振りながら登場。
ていうか小畑のやつすげぇな。 足、かなりの激痛のはずなのにそれを耐えてまさかの駆け足で……
オレが小畑の姿に感心し釘付けになっていると各自それぞれの所定の位置に到着。 会場内のスピーカーからポップな音楽が流れ出し、小学生らしいコミカルなステップとともに小畑たちのパフォーマンスが始まった。
◆◇◆◇
それは夢のように短い3分間。
小畑を中心に、左右に展開したエマと三好が元気よく周囲をクルクルと走り回ったりぴょんぴょん跳ねたり……子供らしく楽しそうな空間が会場全体を包み込み、見ている人の表情筋を少しずつ緩めていく。
それだけでも癒しなのだが、要所要所で重なる同じステップがこれまた綺麗に揃っており美しく……もう本当にオレの語彙力が追いつかないほどの最高の仕上がりとなっていたのだった。
「もうすぐ曲が終わるよ! 美波、佳奈、エマ、頑張れ!」
「がんばえー!」
小畑たちのパフォーマンス終了まであと僅か。
オレの記憶だと最後に3人は人差し指と親指を開いてL字を作り、それを胸のあたりに持ってきてダンスは終了。 最後にセンターの小畑がピョンと前に1歩出て……そこでお辞儀をして三好とエマもそれに続くという流れのはずだったのだが……
なんとか3人はダンスをミスなく踊りきり、無事にパフォーマンスは終了。
小畑・三好・エマが胸のあたりで手でL字を作り、軽く息を切らしながら客席を見つめている。
さぁ、あとは小畑のお辞儀でーー……
「どうしたのかな美波」
多田がステージに視線を向けたままオレの袖を軽く引っ張る。
「え」
「あの後って美波が前に出て頭下げて終わりだよね」
「う、うん」
「なんであのポーズのまま動かないんだろ、それになんか……震えてない?」
ーー……小畑?
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な、なんとか……ラフな感じですが……!!笑




