386 超短編特別編・オーディション開始前
三百八十六話 超短編特別編・オーディション開始前
ダメだ……絶対にこの痛みを顔に出してはいけない。
美波は歯を思い切り噛み締め痛みに耐えながら歩く。
1歩進む度に走る激痛。
あれからトイレで……包帯でかなりきつく締め付けてはいるのだが、その効果はほぼほぼ皆無。 唯一の救いがあるとすればギリギリまで落ち着いた空間で座れていたことだろう。
美波が全身から冷や汗を大量に流しながら待機部屋へと向かっていると、ちょうど更衣室からジャージに着替え出てきたエマと佳奈と鉢合った。
「あ、美波ーー!!」
佳奈が満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
佳奈のこの表情……ということはなんとか振りを思い出せたということなのだろうか。
「佳奈、どんな感じ?」
「ふふふ、間に合いましたぁー!!!」
佳奈はその言葉を待ってましたと言わんばかりにニコリと笑ってピースサイン。
「おー、やったじゃん」
美波が佳奈に「思い出せてよかったねー」と軽く右足を浮かしながら話していると、エマが「本当に一時はどうなることかと思ったわよー」と近づいてきて佳奈の背中をポンと叩いた。
「本当ごめんてー。 でももうバッチシ思い出したからね! 美波やエマの迷惑はかけないから!」
「頼むわよー。 エマたちのせいでミナミに迷惑かけてらんないもの」
「えへへー、そだね! 美波、私もエマも頑張るから絶対合格しようね!」
佳奈とエマの眩しい笑顔が美波の胸に突き刺さる。
ここで自分が折れてはいけない。
美波は再度自身の心に気合をいれると、エマや佳奈たちに痛みを悟られぬよう……激痛走る右足から夢に近づくための一歩を踏み出した。
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夜に本編、更新します!!




