379 ただいま!!【挿絵有】
三百七十九話 ただいま!!
ダイキの体として再び戻ってきた翌日。
優香とともに無事退院して家に帰ったオレだったのだが、まさかその日、かなりのどんちゃん騒ぎになろうとは……。
「お、おかえりお姉ちゃん!」
自宅マンションに着いたところでオレたちに気づいた結城が満面の笑みで駆け寄り優香に勢いよく抱きついてくる。
「うわあ、元気だね桜子。 ただいま」
「お姉ちゃん、もうどこも痛くない?」
「うん。 桜子のお守りが効いたのかな? あんなにたくさん集めてきてくれてありがとうね」
「うん!」
優香の元気な姿を見て安心したのだろう……結城の表情が一気に明るくなり、より一層優香を強く抱きしめ胸に顔を埋めた。
「あれ、それよりも桜子学校は? 今日って平日じゃない?」
「うん! でもママにお願いして風邪ってことにしてもらったの!」
「えええ!?」
どうやら結城は今日優香が退院することを聞かされていたらしく、どうしても優香をいち早く迎え入れたいと高槻さんにお願いしたところ高槻さんは一切渋る様子もなく「他の子には内緒よ」と快諾。
朝のうちに帰ってくることも聞いていたので、自宅の窓からずっとオレたちが戻ってくるのを待っていたとのことだった。
なんと健気……
「お姉ちゃん、私、荷物持つ!」
「ええ、いいよちょっと重いし」
「ううん、お姉ちゃんはゆっくりしてて! 今日は私が家事全部するから!」
こうして結城は優香から荷物を受け取るとそれを抱えながら自宅へと先行。
家に着くなり掃除や洗濯、朝ごはんの用意とテキパキとこなし始めたのだった。
ーー……うん、わかるぞみんな。
どうして結城がオレの心配をしてないんだって思うだろ? その理由はこのメールにあるんだ。
今朝高槻さんから送られてきたんだけど……
【受信・高槻さん】今日お二人とも退院らしいですね。 おめでとうございます。 桜子には福田くんが入院してたことは伏せてますので心配されなくても気を落とさないでくださいね。 お姉さんだけでなく福田くんも意識を失ったと聞いたら桜子、どうなるか分からなかったので。
とまぁこんな感じだ。
ぶっちゃけオレも昨日の三好みたいに結城には抱きつかれたいという願望は……正直言うとめちゃくちゃあるのだが、まだ傷が完璧に塞がったわけでもないし仕方ない。
オレはソファーに腰掛けながら、机で向かい合って楽しそうに話をしている優香と結城の姿を眺め癒されていたのであった。
平和よ……こんにちは!!!
◆◇◆◇
午後。
相変わらず結城がやること全てをやってくれていたこともありオレたちは平和な時間を過ごしていたのだが、それは大体夕方に差し迫ったあたり。
ここから一気に家の中の雰囲気が変わる。
インターホンが数回鳴ったので玄関の扉を開けると、そこには三好・多田・小畑の同じクラス3人組。 そしてその後ろにはエマ・エルシィちゃん・西園寺の姿。
「え、どうしたんだ皆揃って……」
オレがそう尋ねると皆お互いにアイコンタクトをし合った後に背中に隠していた何かを取り出しそれをオレに向け……
「「「退院、おめでとーー!!!」」」
向けられていたのはクラッカー。
皆が同時に糸を引きクラッカーの中身が一斉にオレ目掛けて飛んできたのであった。
「うおおお!? なんだなんだ!?」
オレがいきなりの爆音に驚き尻餅をつくと三好たちは満足そうに「やったー! 大成功!」と手を取り合って喜んでいる。
「だ、大成功!? お、おいエマ、これはどういうことだ!?」
オレはちょうど視界に入ったエマに今のがなんだったのか尋ねることに。
するとエマは微笑みながらオレの目の前に歩み寄ると、急にオレの頭をワシャワシャと撫で始めた。
「お……おおおお!?」
「さっきのはエマたちを余計に心配させたバツよ。 ともあれ無事でよかったわ」
エマの言葉に同意しているのか周囲の皆が「ウンウン」と頷きながらオレを見ている。
「し、心配させた……バツ!?」
「そうよ。 なーにアンタまでピンチに陥ってんのよ。 今朝学校で佳奈たちに聞いてから心配で……授業どころじゃなかったんだから」
エマはクスリと笑うとオレの額に軽くデコピン。 その後に「ほら、早く立ちなさい」と優しい表情を向けながらオレに手を差し出した。
「え、あ……ありがとう。 まさかそこまで心配してくれてるとは思わなかったぜ」
「当たり前でしょう。 ダイキとエマの仲じゃない」
「お、おう……」
そうだな、エマが小山楓の生まれ変わりだということを知っているのは小山楓の親友・松井ユリを除けばオレしかいない。
もしオレが目覚めなかったり前のダイキの魂が目覚めてたとしたらエマはどうしていたのだろう……エマは人の身体に他の魂が入ることがあるって知ってるし、知らないダイキに嫌気がさして唯一の理解者・松井ユリのいる東北にでも移っていたのだろうか。
そんなことを考えながらエマの手を握り立ち上がっていると、途中でなぜか三好が割り込んできた。
「ちょ、ちょっと……なに仲睦まじい雰囲気になってんのさ」
「「え?」」
オレとエマが頭上にはてなマークを浮かべながら少し顔を赤らめ視線を外している三好に視線を向けると、三好の言葉に同調するかのように西園寺が「そ、その通りだよぉ……!」と小畑や多田の後ろから顔をひょこりと覗かせてくる。
「えええ、西園寺までどうした」
「そうよ、別にエマもダイキも普通だと思うけど」
「ううん、そんなことないし! なんか福田にエマ……めっちゃ付き合ってる感出てたけど!」
三好が首を激しく左右に振りながら訴えると続けて西園寺が「だよね三好さん! 私もそんな感じした!!」と多田や小畑の間を割って入って三好の隣に並ぶ。
「だよね! 西園寺さんもそう見えたよね!」
「見えた見えた! え、エマ……もしかして……!!!」
三好と西園寺の視線がエマに集中する。
「どうしたのよ2人とも。 まさかエマがダイキと付き合ってるとでも?」
「わ、私は別にそこまでは言ってないし! ただエマや福田が妙に仲良いなーって思っただけ。 ね、西園寺さん」
「ウンウン、福田くんもまんざらでもないような顔してたよ?」
「ーー……なに、カナもノゾミもダイキのこと好きなの?」
「「それは言ってない!!!」」
いやちげーのかよ!!!
オレが心の中で突っ込みながら周囲で見ている小畑たちに視線を向けると、小畑・多田はニヤニヤ笑っていてエルシィちゃんは「エッチーは、しゅきよぉー!?」とオレに天使の微笑みを向けてピョンピョン飛び跳ねている。
あーもう。 心配して来てくれたのは嬉しいしエルシィちゃんはバチ可愛いけど……一気にやかましくなったなぁ。
「どうしたのダイキ、結構賑やかそうだけど……お友達?」
「福田……くん?」
その後この賑やかさに気づいた優香と結城がリビングから顔を出し、「このままだとご近所さんに迷惑だから」と皆をリビングへと招き入れたのだった。
まぁそれで賑やかさが治るわけもなく……
「えええ!!! なんで結城さんいるの!?」
「えええ!!! なんで桜子いるのーー!?」
あぁ……少し前の平和が懐かしい気がするけどなんかやっと日常に帰って来たっていう実感が湧いて来たぜ。
オレは皆の姿を見つめながら心の中でこう叫んだのだった。
ただいま!!!!
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帰って来たって感じしますね!
もちろんまだ終わりませんよ!笑




