376 運命の選択!!
三百七十六話 運命の選択!!
現世に戻った場合と輪廻転生の道を歩んだ場合……2つの夢を見た元祖ダイキが決めた答えとは。
オレと神様が見守る中、元祖ダイキがゆっくりと口を開いた。
「ぼ、ボクは……」
ゴクリ。
オレが見たのは元祖ダイキが現世に戻ってすぐの映像だけだったのだが、そこには温かさが満ち溢れていて元祖ダイキも戻らない理由はない。
おそらくダイキは「現世に戻る」と言うはずだ。
あぁ……こうなることが分かってたら三好やギャルJK星、他のみんなとももっと話しておけば良かったな。
オレは心の中で今までの後悔をしながら元祖ダイキの選択に耳を傾けた。
「ボクは現世に……」
「『うんうん』」
「ーー……戻らない」
ーー……。
「『エエエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?』」
神様もオレと同じで元祖ダイキは【現世に戻る】選択をすると思っていたのだろう。
オレと声を重ねながら元祖ダイキに視線を集中させた。
「ちょ……え、ダイキ君!? なんで!?」
『そうじゃぞ! ダイキのその後の人生……恋愛以外は順風満帆だったはずじゃが……!!』
オレと神様の問いかけに元祖ダイキは「まぁ……そうなんだけど」と小さく頷く。
その後少し恥ずかしがりながらその選択をした理由を話し出したのだった。
「あ、あのね……ボクね……」
「うん」
『うむ』
「その……一目惚れしちゃって」
『「誰に?」』
「陽奈さんのお姉さんの……愛莉さんに……」
陽奈の姉の……愛梨にいいいいいいいい!?!??!?
「はあああああああああああ!?!? 愛莉!?!?」
『はあああああああああああ!?!? あの愛莉ちゃん!?!?!?』
元祖ダイキはガチで恋に落ちてしまっているのだろう……オレや神様の過度なリアクションにも怯える様子もなく「う、うん……」と顔を赤らめて頷く。
ちなみにどこで出会ったのか聞いたところ、それは【輪廻転生の道を歩く】を選択した時とのこと。
ふと現世のことが気になり優香たちの様子を見てみようと思い降り立ったところ、そこにちょうど陽奈が遊びに来ており、一緒に愛莉も隣にいたらしい。
そこで愛莉に『えええ!? なんでダイきちくんが2人いるの!?』と驚かれたので元祖ダイキが正直に説明すると、愛莉はそれに納得……『それじゃあ本来のダイきちくんはお姉さんが心配で様子を見に来たんだ。 私と一緒だね』と優しく微笑んだんだと。
「ーー……え、その微笑みにノックアウト?」
「う、うん」
その後元祖ダイキと愛莉は『お互い陽奈や優香の幸せを見届けてから真面目に輪廻転生の道を歩もう』と話し、それまではお互いに話し相手もいないからたまにこうやってどこかで集まって盛り上がろうと約束。
それが元祖ダイキにとっての選択の決め手になってしまったらしい。
「でもそれってさぁダイキ君よ、オレが実際に見えてたんだから現世に戻ってももしかしたら愛莉の姿視えるかもよ?」
「ううん、それだと愛莉さんに触れられないし好きな時にお話しできないもん。 ボク、ここまで心がワクワクしたのって初めてなんだ」
「ーー……」
胸のあたりで手を組みながら嬉しそうに話してくる元祖ダイキの姿を見たオレはゆっくりと視線を神様へと移す。
「お、おい。 どうすんだよこれ」
『いやワシに振るでないわ。 ワシだって予想外の報告で空いた口が塞がらないのじゃから』
「てことはこのままいくと……?」
『うむ、お主が再び現世のダイキの身体に入ることになるな』
「となればさっき見たオレの夢は……?」
『うむ、時期がずれると生まれ変わるタイミングもずれる。 あの未来はなかったことになるな』
「うわあああああ!!! ほぼ確定だったから歩む気満々だった……オレの青春確定ストーリーがあああああああ!!!!!」
オレはその場でドサリと膝から崩れ落ちる。
「お、お兄ちゃん? どうしたの?」
「いや……オレはてっきりダイキくんが現世に戻るとばかり思ってたからさ。 そんなしょーもな……コホン、まさか輪廻転生ルートに行くとは思わなくて」
「うん。 現世も良かったよ? でもそれよりもボク……愛莉さんと一緒にいたいんだ」
ーー……頼む、心の中だけで留めるから大声で叫ばせてくれ。
クッソしょーもねえええええええええええ!!!!!
オレは声に出さずに思いっきりエアーで発狂すると、ようやく落ち着いて一息つく。
「あのさダイキ君……」
「あ、もしかしてお兄ちゃん、輪廻転生したかった感じなの?」
元祖ダイキがオレの希望を察したのかルートについて尋ねてくる。
「ーー……まぁ。 というよりはオレには選択肢それしかないって思ってたからな。 だからそっちを前向きに考えてただけなんだけど……」
「でもお兄ちゃん、ボクの意思を尊重してくれるって言ったもんね。 ボクちゃんと覚えてるよ」
「ですよね」
「うん!」
「てかダイキ君、この短時間で驚くくらい自信ついたね。 これも愛莉との出会いのおかげなのか?」
「は、恥ずかしいからそんなこと言わないでよ!」
ぐああああああああ!!!!
恋する乙女ならぬ……恋する少年強すぎワロタアアアアアアア!!!!
こうして元祖ダイキは体を輪廻転生への道へと向けて神様の腕を引っ張る。
「じゃあ神様、ボク、輪廻転生頑張るね!」
『後悔は……しとらんようじゃの』
「うん!! ボク、ここまでワクワクしたの初めてだから! だから早く行きたいんだ!」
『そ、そうか。 まぁ理由はどうあれ……達者での』
「うん! 神様、今までボクをここに置いてくれててありがとう!!」
元祖ダイキは満面の笑みで神様にお礼を告げるとそのまま視線をオレへと向けてくる。
「それと……お兄ちゃん!!」
「あ、はい」
「お兄ちゃんのおかげでボク……こんな幸せな未来を見ることが出来た! ありがとう!!」
「あー、いえいえ」
「お姉ちゃんの様子とかはたまに見にくるけど……お姉ちゃんのこと、よろしくね!」
「お、おっす」
「うん! じゃあ……バイバイ!!!」
元祖ダイキは前をまっすぐと見据えると、己の進むべき道へと元気よく駆け出して輪廻転生へ……もとい愛莉との甘い日々を求めて旅立って行ったのであった。
そしてオレは現世のダイキの身体のもとへと戻るべく神様に「じゃあ頼んだ」と体を向けたのだが……
「ん? どうした神様。 ボーッとこっち眺めてないで早く術使ってくれよ」
『いや……そのことなんじゃけどな。 どうやらワシが術を使わなくても、どうしてもお主を現世に戻したい者がおるようで……』
「え? だれ?」
『お主……足下に違和感なかったかの?』
ーー……足下?
神様がゆっくりと視線をオレの足元へと下ろしていったのでオレも頭上にはてなマークを浮かばせながらその先を追っていった。
「ーー……え」
地面から手が突き出ていてオレの足首をがっしりと掴んでいる。
「も、もしかしてこれって……」
オレが声を震わせながら神様に尋ねると、神様は『うむ』と頷く。
『安心するのじゃ。 別に悪しき存在ではないぞ』
「何を根拠に!!」
オレが全力でツッコミを入れていると勢いよく足が雲の下へと引きづられ、下から『クヒ……』とあの声が聞こえてくる。
「ちょ、神様!! 助けてくれって!!!」
『じゃから悪しき者じゃないと言うとるじゃろ。 おそらく今の霊体のお主ならそやつの……お主に伝えたかったビジョンも見えるじゃろうて。 現世の身体に入るまでの間に見せてもらうがよい』
「な……何を言ってるのか分からんぞおおおおおおお!!!!!!」
こうしてオレはあの謎オバケによって天界から引き下ろされて一気に現世へ。
オレはこのクヒヒ野郎のビジョンを脳内で感じながら現世ダイキへの身体へと飛び込んだのだった。
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