370 VS見回りの神!【挿絵有】
三百七十話 VS見回りの神!
どこからともなく現れた見回りの神。
オレは聞く限りだとお爺さんやお婆さんのような見た目……もしくはゴツい体の持ち主かと思っていたのだが、そこに現れたのは肌がやや褐色の異国風の衣装を纏ったピンク髪の少女。
頭の上には天使の輪。 後方には天使の羽のようなものが宙に浮いており、その衣装はよく見ると鬼の腰巻の模様のようにも見える。
見た目的に【見回りの神】……とよりは【少女神】といった方がしっくりくるな。
別に性格もあまりキツそうではないし……
少女神は何もない空間から突然現れるや否や、周囲を見渡しながら大きめの声で話し出した。
『ここの神ー、ワッチが来たのやーー。 死者の案内は順調かやぁーー?』
天使のような鬼のようなの姿のくせしてワッチって……。
ていうか確かにこの会話的にこいつ……この少女神が見回り役っぽい。
見た目は幼くも妖艶さもあるが神なんだ。 変に油断したら神様と優香のことを悟られかねない。
オレはこの少女神にどんな無礼を働いて消されようとも2人のことを気づかれないよう、大声を上げながら少女神に駆け寄った。
「あああああ!!! あなたはここの神様ですかああああああ!?!?!?」
『ふぇええああああ!?!?』
少女神は勢いよく迫り来るオレに気づくなり手を前にかざして謎の衝撃波を発生。
オレの体が大きく後方へと吹き飛ばされる。
「うぉお!?!?」
しかし流石は天界。
周囲に背の高い壁のようなものはあらず、オレはクッションのような雲の上に打ち付けられた。
「お……おおお、痛くねぇ」
『ちょ、ちょっと大丈夫かやぁ!?』
「さ……流石は神。 子供の見た目でも容赦ねぇな」
オレは小さく呟きながら立ち上がる。
しかしあの慌てっぷりからして中身は子供そのままみたいだな。 オレは気を取り直して少女神を見据えると、今度は落ち着いた様子で迷子の女の子に話しかけるような雰囲気を漂わせて歩み寄ることにした。
「あー、すみませんびっくりさせちゃって。 オレさっきここに来たんですけど、ここって天国なんですよね」
オレは少女神の目の前にまで辿り着くと、少女神の身体を神様と優香のいる方向とは逆へ向けるよう、反対側へと回り込む。
『な、なんなのかやオニュシ。 確かにここは天界なのじゃが、ワッチはここの担当ではないのやぁ』
「えええ、そうなんですか?」
『そうなのや』
少女神はコクリと頷くと鼻をフンと鳴らしながらドヤ顔を決めてオレに自己紹介を始めた。
『ワッチは天国と地獄……そしてその周辺を取り締まる見回り役。 天使と鬼のハーフ……上位神なのや!』
天使と鬼のハーフ!!! まんまやないですかーーー!!!
オレは心の中でツッコミを入れながらも会話を続けることに。
「な、なるほどですね。 お名前とかないんですか?」
『ないのや! 名があるのは現世に体現して何かしらの益をもたらしている神々だけなのや!』
なるほどなー。
オレがあまり日常では使えない豆知識に感心していると少女神がオレの服の袖をクイッと引っ張ってきた。
「ん、なんですか?」
『それよりもオニュシ、ここの神がどこにいるか知らんのかやぁ?』
ーー……ふむ、流石は見回り役の上位神。 話を戻してきやがる抜かりねぇな。
「そうなんです知らないんです。 なのでオレはあなたがここの神様なのかなって」
『んー、ここの神は隠し事が上手いかやなぁ……他の神々や鬼の不正はすぐに見破れるのに姑息な奴かや』
え、そうなの?
「ここの神様ってそんなに隠し事が上手いんですか?」
『そうやぁ。 昔っからそうかや。 ちょーっとワッチが目を離すと役目をサボって現世に降りて人間たちと交流してたり……まぁその甲斐あってか現世では結構名の知れた神になっておるのや』
「なるほど」
『ーー……ということはもしかしてまた現世に遊びに行ってるのかや?』
少女神が口元に手を当てながら『むむむ』と唸る。
「え」
少女神の後方にいた神様に視線を移すと神様の姿は見当たらない。
どうやらどこかに上手く隠れられているようだ。
ーー……となればこれはチャンスじゃね?
この少女神がここから離れれば後は監視役の神だけとなる。
敵は少ない方がやりやすいから願ったり叶ったりだぜ!
オレはどうやってこの少女神を現世へと向かわせようかと考えていたのだがーー……
『むーん。 でも探しに行くのは面倒なのや。 ここで監視を任せている神々、出てくるかやー』
「!!!!」
突然少女神が再び周囲を見渡しながら発言すると、地面から光の塊が2つポッと浮かび上がってくる。
あれが監視役……なのか?
『オニュシら、ここの神がどこにいるか知らないかや?』
『アッチです』
『上位神様の後方に隠れてます』
見られてたああああああああ!!!!!
もしかしてこれ……詰んだ?
オレがヒヤヒヤしながらその様子を見つめていると、少女神は監視役の神々が指した方向に視線を向け……ドスの効いた声で神様の隠れているであろう方に向かって話しかけた。
『ワッチを騙そうとしても無駄だったかやー。 さぁ出てくるかやー!!!!』
そう少女神が口にした次の瞬間。
雲の地面の盛り上がっている箇所がパンと弾け飛び、そこに身を潜め隠れていた神様と優香が少女神の瞳に映る。
『見つけたなのやー』
『監視役に聞くとは……卑怯なのじゃああああああああ!!!!!』
『卑怯なのはどっちなのやぁ? とりあえずその娘を早く輪廻転生への道へと連れて行くのや。 さもないと……』
少女神はぎらりと瞳を光らせながら神様を見据えると、神様は顔を真っ青にしながら身体をガタガタと震わせる。
『ちょ、ちょっと待つのじゃ見回り役殿!! わしはちょっとこの子とお話ししてただけなのじゃ!』
『問答無用なのや。 監視役たちよ、あの神の動きを拘束し、あの娘を道へと誘導するのや』
『はい』
『分かりました』
それからはまさに強者の時間。
神様は監視役の1人に術をかけられたのか身体の自由を奪われると、もう1人の監視役によって優香は道の方へと進まされ……そのまま姿を消してしまったのだった。
お読みいただきましてありがとうございます!
見回りの神は今回限りの登場……今後の展開にはまったく登場しません 笑
下の方に☆マークがあるので評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!
感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!
そう……これでも余裕でハッピーエンドへと向かいます!!
当てられちゃったら作者震えちゃう!!笑




