367 いやいやそう言われても
三百六十七話 いやいやそう言われても
夜。 ギャルJK星のスマートフォンに着信があり、優香が危険な状態になったという話を聞いたオレとギャルJK星は家を飛び出しすぐさま病院へと向かった。
◆◇◆◇
病院へと到着し病室へと入ると、そこにはすでに各ジャンルのスペシャリストたちの姿。
色々な方法を施しているのだろう……見たこともない機械や俗にいう電気ショック的なものも周囲に配置されていた。
「す、すみません!! ゆーちゃんは……ゆーちゃんは……!」
ギャルJK星が声を震わせながら尋ねると、スペシャリストの中の1人がオレたちの方を振り返る。
「あ、美咲さんに弟のダイキくん。 ちょっとあちらで話しますね」
そうして連れて行かれた場所はその階にある小さな会議室。
そこでスペシャリストはオレたちにも分かるような言葉遣いで今の優香の状況を教えてくれたのだった。
「まず先に伝えておくと、とりあえず一番の山……危険地帯は乗り越えました」
その言葉にオレとギャルJK星はホッと胸を撫で下ろし微笑み合う。
「そ、そうですか……よかったなダイキ」
「うん」
「しかしまだ予断を許さない状況です」
「「!!」」
そこから伝えられたのは今後の優香の状態について。
確かに優香は脳以外のダメージは各スペシャリストの力によって完璧な状態に。 しかし結局はそこを動かすにはすべては脳……優香次第なのだ。
未だ脳については未知の部分があるらしく、ダメージを受けている優香の脳はいつ変なバグみたいなものを起こしてもおかしくないとのこと。 突然動きを止めればすべてが終わるし、逆に心臓を動かす信号が急激に弱まることもあるのだという。
そして今回は奇跡的にも電気ショックが功を奏して心臓の動きが復活したということだった。
「もし次同じことが起きたとしても、今回と同じように回復するとは限りません」
スペシャリストはオレたちにそう言い放つと、「では今後も姫の変化に目を光らせておく必要がありますので」と席を立ち足早に会議室を去っていく。
ーー……まじか。
オレが絶望感に埋もれていると、ギャルJK星がそっとオレの背中に手を添えてきた。
「ん? 星さん?」
「とりあえずあれだ、今日はアタシらもゆーちゃんの部屋にいさせてもらおう。 邪魔にならないように隅っこでだけど」
「うん」
その後オレとギャルJK星は優香の入院室へ。
ギャルJK星が「ちょっと外の空気吸ってくるわ」と席を立ったので、オレもこのままじっとしていても不安が押し寄せてくるだけ……気分を少しでも変えるため、院内を歩き回ることにした。
◆◇◆◇
「優香……大丈夫だよな」
そう呟きながら適当に歩いていると、先には曲がり角。
そこを曲がると月明かりに照らされた長い廊下が続いていた。
まるであの時の……美香の体に転生した茜と再会した時のようだぜ。
出来ればそんな再会でも最悪ありがたいんだけどなと思ってはみるものの、そこに人の姿はおらず。
ただ夜の病院という静けさだけが存在していただけだった。
「まぁそうだよな。 美香……神様ももういないんだしそんな奇跡もう無いよな。 てかもう神様じゃなくていいから……天使でも悪魔でも幽霊でも大歓迎だからよ、なんとかしてくれよー」
軽く愚痴りながら窓の外の景色を眺めているとポケットに入れていたスマートフォンが振動していることに気づく。
確認してみるとギャルJK星からのメールだ。
【受信・ギャルJK星】アイス買ってきたから一緒に食べよ。 頭冷やして落ち着かせよーぜ。
「あぁ……確かにそうだな」
アイスを食べてる間だけは冷たさと甘さで少しはこの気分を落ち着かせられるかもしれない。
オレは「うっし……戻るか」と小さく呟くと、下の階にある優香の部屋へと続く階段のある方へ体の向きを変えて歩き出した。
ーー……のだが。
階段をいざ降りようとしたその時、どこからともなく声のようなものが聞こえてくる。
「ーー……ん、なんだ今の声」
一瞬のことで上手く聞き取れなかったオレはその場で立ち止まり耳をすませてみることに。
ーー……。
「気の……せいか?」
『ク』
「ん?」
『ヒ……ヒヒ……』
「ーー……後ろか?」
背後から声が聞こえたので振り返るとそこには白い服を着た長い黒髪の女。
「うぉお」
こいつは……あれだ、お化け屋敷でオレと目が合ったトラウマゴーストじゃねーか。
オレがゴクリと生唾を飲み込んでいると女の霊が『クヒヒ』と笑いながらゆっくりとオレに近づいてくる。
「お、おいなんでお前がここにいんだよ。 ここはリアル病院で……お化け屋敷じゃねーぞ?」
『クヒヒヒ』
背筋がゾッとする感覚に襲われるも、今オレが一番恐れているのは優香が助からないかもしれないということだ。
なのでオレは焦らずに深呼吸をしながら霊を見据える。
『クヒヒヒ』
「あーすまんなオバケ。 オレは今オバケにビビってるような心の余裕はねーんだよ。 すまんが出直してくれ」
『クヒヒヒヒ』
「うん、今日は逃げないぞ疲れてんだ」
『クヒヒヒヒ……クヒヒヒヒ』
「だから消えてくれ。 お前、霊らしいけどこれ以上しつこかったら流石にキレるぞ」
そう冷たくあしらうと女の霊の首が45度真横に傾く。
『クヒ……?』
「あーそうだ。 流石に今の首ゴッキンはビックリしたしちょっとチビったけど、お前には構ってられん。 どうしてもって言うんなら他の奴のところ行け」
これ以上話すのも時間の無駄なのでオレは女の霊を無視して階段を一段降りる。 するとすかさずオレの後ろ足を女の霊が掴んできた。
「おい」
『クヒヒ』
こいつ……オレが話しかけたら返してたし、言葉は通じてるんだよな?
「あのな、さっきも言ったろ。 お前の相手はしてられん。 離せ」
『ーー……』
お、幽霊が一丁前に無視してくんのか?
「離せ」
『ーー……』
この無駄な時間の経過にオレのイライラが一気に爆発。
あああああ!!! もう埒が明かねえええええええ!!!!!
どうしても優香の部屋に戻りたいオレは最終手段を使用することに。
これが幽霊に通用するのかは分からないが……
「あー、分かった。 分かったからその手を離せ。 無視しないから」
オレは両手をあげ無抵抗の意思を示しながら女の霊を見つめる。
『クヒ……』
「あぁそうだ。 ほら、ちゃんとこうして諦めて会話してんだろ? だから足放してくれよ、痛いんだよ」
『クヒ』
オレの言葉を信じたのだろう、女の霊のオレの足を掴む力が一瞬緩んで……
「っしゃああああ騙されたなオバケぇーー!!! 嘘に決まってんだろコンニャローーい!!!!」
『クヒイイイイイイイ!!!!!!!』
オレは一瞬の隙をついて女の霊からの束縛を逃れると、地面を強く蹴り上げて霊とは反対側へと跳躍。
これで後は一気に逃げ切ればこいつとはお別れ……そう確信したその時だった。
「ーー……お?」
あれれ? おかしいな、一向に地面につかないぞ?
そう思ったオレは疑問に思いながらもゆっくりと視線を下へと向けた。
そこでオレは思い出す。
「あああああ忘れてたああああ!!! ここ階段だったんだあああああああああ!!!!!!」
高く跳躍したオレはその分勢いよく下へと転落。
オレは背負っていたリュックをクッション代わりにしようとギリギリまでタイミングを見計らっていたのだが……
◆◇◆◇
目覚めたオレの視界に広がっていたのはどこか見覚えのあるまるで雲の上のような一面の白世界。
どこだったかなーと首を傾げながら思い出していると、後ろからこれまた聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。
『ーー……なんでそうなるんじゃ』
え?
お読みいただきましてありがとうございます!!
下の方に☆マークがありますので、評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!
感想やブクマ・レビュー等お待ちしておりますー!!!
そしてもう一度宣言しておきましょう!笑
バッドエンドにはなりません!




