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362 復活の転生娘!【挿絵有】


 三百六十二話  復活の転生娘!



 オレがとある人物に電話をかけたその約30分後、とある乗用車がオレの前に停車。

 運転席側の窓が開き、幸せいっぱいの表情をした男性がオレに向かって手を振ってきた。



「ダイキくん! 久しぶり!」


「あ、お久しぶりです!」


「ささ、乗って。 茜もダイキくんと会えるのを心待ちにしてるよ」


「ありがとうございます。 じゃあ失礼します」



 もうこの会話で分かったよな。

 そう、オレが連絡をしていた相手は美香の身体で新しい人生を謳歌している茜の父親だったんだ。

 本来の予定なら福田祖母の家に着いて少しゆっくりする時間を作っていたのだが、まさかの陽奈の登場でギリギリになってしまったぜ。


 

 オレは車の後部座席へと乗ると茜の父親運転のもと以前行ったことのある茜の家……堀江家へ。

 家に着くと車の止まった音が聞こえたのだろう……完全なる美香の姿をした茜がまるで本当の小学生のようなテンションで玄関から飛び出し、オレの前に駆け寄ってくる。



「だ、ダイきちくん! その……ちょっとぶり」



 茜が頬を赤らめながら笑顔でオレに小さく手を振ってくる。

 ていうか茜のやつ、髪解いたのか。

 そしてその顔での笑顔……今まで無表情ってイメージが強かったというのもあるかもなのだが、かなり可愛いじゃないか!!!



挿絵(By みてみん)



「あ、うん。 ちょっとぶり。 茜、元気そうだね」


「うん。 もう前までの苦しさや身体の重さ・ダルさが嘘のように消えてね、 食欲だって復活して昨日の夜なんかご飯を2回もお代わりしたの」



 茜は少し恥ずかしそうにしながら「女の子がこんな食べるアピール変だよね」と言いながら微笑むと、オレの手を引っ張り玄関前へと案内。 中に入る前に茜が父親に「それじゃあちょっとの間、私の部屋に入ってこないでね」と振り返り声をかけた。



「あぁ。 それは分かってる。 集中するんだろ?」


「うん。 終わったらまた呼びに行くから」


「でもなんかあれだな、茜のその『部屋に入ってこないでね』って言葉、パパまだ聞きたくなかったな。 まぁ意味は違うって知ってるけど」



 ということでオレは少し悲しそうな目で見てくる茜の父親に小さく頭を下げ、家に入ってすぐ目の前にあった階段を上り茜の部屋にお邪魔したのであった。

 ていうか家の中に入ってすぐに気づいたんだけど、前に来た時よりもかなり空気が澄んでた気がするぜ。



 ◆◇◆◇




 茜の部屋に入ると、そこはなんとも可愛らしくもあり大人っぽくもある雰囲気。

 今の茜の見た目はもちろん小学生なのだが、やはり中身は中学生……おしゃれな鏡や雑貨などが壁に綺麗にかけられている。

 そして一番オレの目を引いたのが……



「え、あれニューシーじゃん」



 ベッドの隣に貼られているポスター。 それこそエマやドSの女王・小畑やメイプルドリーマーのユウリたちが推している男性アイドルグループ・ニューシーだったのだ。

 オレが『茜、お前もか』的な視線を向けていると、茜はオレが知っていたことが嬉しかったのだろう……「ダイきちくんも知ってるんだ」と嬉しそうに微笑みながら話しかけてくる。



「まぁな。 ちなみに茜は誰が好きなの?」


「私はみんな好きだけど、その中で行ったら加藤くんかな」


「あー、加藤シゲミツくん? 確かアイドル活動しながら漫画家もしてるんだっけ」


「そうそう! よく知ってるね」


「オレの知り合いにもニューシー好きな人……いや、ニューシー担がたくさんいるからな」


「いいなぁ。 私ももう少ししたら転校して今年の四月から小学4年生として学校行き始めるんだけどさ、そういう話とか早くしたいなー」



 茜のやつ、本当に小学生から再スタートするんだな。

 勉強机に視線を移すと改めて買い揃えたのだろう……ピカピカの赤いランドセルやら筆記用具系などが存在感バリバリの状態で置かれている。



 ーー……ん? でもあれ?

 引っ越すにしても新学期まであまり時間なくね?


 オレはゆっくりと茜の部屋の中をグルリと見渡す。



「どうしたのダイきちくん」


「いやさ、もうすぐ引っ越すって割りには部屋の荷物整理出来てなくね?」



 なんというか……何一つダンボール等に詰められていないのですが。

 そう尋ねると茜は「うん。 早くしようとは思ってるんだけど毎日が楽しくてつい時間がなくなっちゃうんだ」とまったく焦る様子もなく微笑む。


 聞くところによると茜は退院して以降、外に出て母親と共にショッピングを楽しんだり、家族総出で小旅行に行ったりとそれはそれは楽しい毎日を満喫しているようだ。

 なので茜の家……堀江家ではまだ誰1人として荷造りをしている者はいないという。



「ええええ、それ大丈夫なのか!?」


「うん。 それも含めてみんなで『このままじゃ前日大変だね』って笑ってるの」


「あー、まぁそれも大変そうだけど幸せなんだな」


「そうだよ。 私、今すっごい幸せ」



 オレがそんな茜の幸せに満ちた表情を見て癒されていると、茜が「あ、そうだ、あれ先にやろっか」と思い出したように手をパンと鳴らしてオレを見る。



「あー、そうだったな」


「ダイきちくん、どれくらい持ってきてるの?」


「とりあえず3つ買ってきたんだけど……これ。 どうだ?」



 オレはリュックから少し前に買った不動明王のお守りを取り出すと1つ1つを茜の向きに合わせて机の上に並べていく。

 そう、これこそがオレが茜を訪ねた理由。

 茜の父親曰く、茜の以前持っていた霊感は少し薄れてしまったものの未だ健在……なのでオレが購入したお守りの中でどれが一番効力がありそうなのかを調べてもらいに来たのだ。


 そして茜はオレが並べたお守りを1つずつゆっくりと見ながら調べていく。



「んー、どれも不動明王様……かは分からないけど凄そうな力は感じるよ」


「そうか」


「うん。 でもその中でも一番感じるのは……これかな」



 茜は真ん中に置いたお守りを持ち上げてオレに渡す。



「これ?」


「うん。 どちらかというと、これが一番守ろうってするオーラが一際目立ってるかな」


「そうか、助かったよありがとう」


「どういたしまして」



 それからはまだ時間もあったのでオレは茜の退院してからの楽しんだ思い出を聞いていき、気づけばもう帰る時間。

「それじゃあ今日はありがとう」と声をかけると、茜が「あ、ちょっと待って」と声をかけ、オレをリビングへと連れ出した。



 ◆◇◆◇



「出来たらさ、こっちの私にもお別れ行って欲しいな」



 オレが連れてこられたのは祭壇の前。

 その中心には以前の色白クールビューティの茜の少し微笑んでいる写真が飾られてある。



「え、これって……」


「うん。 前の私。 まだ火葬されてから四十九日が過ぎてないから骨もあるんだ」



 茜が懐かしむような表情を向けながらオレに説明する。



「そう……なのか」


「うん。 なんだかんだで私……魂は引き継いで生き続けてるけど、前の私の肉体は死んじゃったじゃない? だからその時の私にも声をかけて行って欲しくて」



 茜が「ワガママ言ってごめん」と小さく頭を下げる。



「いやいやそんな! オレも前の茜に会えて嬉しいよ」



 オレは以前の茜の祭壇前に座り込み写真を見つめると、当時のことを思い出していく。

 そうすると不思議なのだが……勝手に言葉が出てきたんだ。



「まったく、その写真の茜と最後に会ったのもこのお家だったな。 今度は笑ってる茜を見れて嬉しいよ。 今まで茜と一緒に戦ってくれてお疲れ様。 これからは今の茜を見守ってあげててくれな」



 こんな言葉、陽奈の姉・愛莉と出会ってなければ出てこなかったんだろうな。

 そんなことを思いながらゆっくりと立ち上がり後ろを振り返ると、そこでは茜の父親と祖父が滝のような涙を流しながら「ありがとうダイキくーーん!!!!」と感動していたのであった。

 


「じゃあ茜さんのお父さん、時間なのでそろそろ送っていただいていいですか?」


「ちょっと待って……くれ。 涙が邪魔でこのままでは運転出来ない……から、もうちょっと茜と一緒にいてくれないか」


「あー、はい。 じゃあそうしときます」


「でもあれだぞダイキくん、茜に変なことをするのはくれぐれも……」



「もう、お父さん!!!」



 その父親の言葉に茜は顔を真っ赤にさせながらその場で説教。

 茜の父親は次は別の意味での涙を流し出したのであった。



 その数分後。



「あのー、そろそろ家に……」


「す、すまんダイキくん。 今は運転できるようなメンタルじゃ……。 もう少し待っててくれないか」


「あ、オッケです」

 

 

 いつ帰れるんだよ。



お読みいただきましてありがとうございます!!

下の方に☆マークがありますので、評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!

感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!


今回の挿絵で書き直し前のイラストも含めたら95枚目です 笑

これからも皆さん同じイメージでお楽しみいただけるよう描いていきますので、そちらの方もよろしくお願いします!!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 茜ちゃんだったか! 久々だぁ!! お父さんめっちゃ泣いてるw まだ前のお骨もあるとは……。 しばらく帰れそうにないですなw
[一言] そのまま、結婚のご挨拶でもしとけば?(やけくそ)
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