359 思わぬ敵!!
三百五十九話 思わぬ敵!!
学校を早退し結城とともに優香が少しでも早く目を覚ますよう、お守りを渡しに行ったのだがーー……
「あれ、なんだなんだ?」
結城を引き連れて優香の病室へと向かっていると、優香の部屋入り口前に警察官らしき姿を数名確認。
その後ろには知らない女性と2人の子供。 一体なんだろうと思いながら歩いていると、結城が「あ、お姉ちゃんが助けた子たちだ……」と小さく指をさした。
「え、そうなの?」
「うん」
「じゃああれかな、お礼を言いにでもきたのかな」
「かなぁ」
とりあえずそのままでは入れないからそこを退いてくれよと思いながらも近づいていくと何やら緊迫した雰囲気。
扉の奥にはギャルJK星が腕を組みながら立っていてギロリとその女性を静かに睨みつけていた。
あれ、なんでギャルJK星、あんなに怖い顔をしてるんだ……?
ダァン!!!!
ギャルJK星が床を勢いよく蹴りつける。
「あ? もういっぺん言ってみろよババァ」
ビクゥ!!!
な、なんだなんだあああーーー!?
なんでまたいきなりバーニング美咲が……?
結城とともに物陰に隠れながら様子を見てみることにすると……言い合いでもしているだろうか。
相手の女性は警察の後ろに隠れるようにしながらギャルJK星に「何度でも言ってやるわよ!!」と鬼のような形相で反論している。
「向こうで寝てる女に突き飛ばされたせいでウチの子たちが怪我したんだから!! 責任は取ってもらうわよ!!!」
ーー……は?
オレはあの女性……いや、ババァの発言を聞いて自分の耳を疑う。
今あいつなんて言った? 優香に子供が突き飛ばされて怪我したから責任取ってもらう? バカじゃないのか?
結城に視線を向けてみると、結城もまさかのあのババァの発言が信じられなかったようで口をパクパクとさせながらその様子をじっと見つめている。
「よく物事を考えて発言しろよババァ。 誰のおかげでそいつら助かったと思ってんだ」
「考えてるわよ!! 擦りむいて帰ってきて……血だって出てたんだから!!!」
ババァが「一言文句を言ってやる」と強引に病室に入っていこうとするも、ギャルJK星がそれを許さず。
「一歩でも入ったら一生外を歩けなくすんぞ?」とババァに顔を近づけ囁きながら殺意に満ちた目を向けていた。
「や、やれるもんならやってみなさいよ!」
「じゃあ覚悟あんだな」
「あるに決まってるじゃない! だからそこを退きなさい!!!」
「無理だね」
「な……っ! なんですって!?」
「どうしてもっつーんならアタシを退かしてけ。 あー、先に言っとくとアタシに触れることイコール暴行を受けたってことにするからな」
ギャルJK星は「な、いけるよな?」とババァの後ろに控えていた警察官たちに尋ねる。
「ま、まぁそうですね」
「だってよババァどうする? 警察たちがいる今、中に入れば暴行罪で……いないときに入ればアタシにボコボコ。 好きな方を選べよ」
ギャルJK星の言葉にババァが言葉を詰まらせ唸る。
「あ? どうしたババァ。 なんか言えよおい」
「ーー……」
「さっきの威勢はどうしたー? 自分の不利がわかった途端にこれとか……」
ギャルJK星は「はぁ……」とまるでダーク優香のようなため息をつきながら視線をガキどもに向ける。
「お前ら良かったなー、アタシと同級生じゃなくて。 アタシお前らみたいな性格の奴大嫌いだからさ。 確実にぶっ飛ばしてたわ」
その言葉にガキどもの体がビクリと反応。
2人ともこんなはずじゃなかったのだろう、「ママ早く文句言ってよ!」とババァの背中に隠れながらバンバンと叩き出した。
「う、うるさいわね! そこまで言うならあんた行きなさいよ! あんたなら子供だしあのヤンキー女も手が出せないでしょう!!」
「分かった!」
なんという卑怯戦法……まさか自身の子供を特攻させる親がいるなんて。
これにはギャルJK星も驚きを隠しきれないのか何度も瞬きをしながらガキを見つめる。
「お、お前……本当にアタシにかかってくんのか」
「当たり前でしょ! 急に押されて痛かったんだから!」
「でもそれしてくれなかったら君ら死んでたんだぞ?」
「そんなのいらないし! 避けれたし!」
親がバカなら子もバカとはこのことだな。
オレがこいつマジかと呆れ返っているとギャルJK星が「ハハ……マジか」と鼻で笑う。
「な、なんだよヤンキー!」
「こーんなクソガキのためにゆーちゃんは……。 命は平等って言うけど実はそんなことないって考えさせられるよな」
ギャルJK星は拳を強く握りしめながらガキを睨みつけ、独り言のように呟く。
「ゆーちゃん。 こいつら……アタシが代わりにしょけーするわ」
これにはババァもガキも動揺。
しかし何故かババァたちが警官たちに視線を向けると、警官たちはすっと目をそらす。
「ほら聞いたわよね今の!! 今の言葉はダメなんじゃないの!?」
「いえー、独り言のようでしたのでー」
「なんでよ!! でも聞いてたでしょう!?」
「いやー何も」
「自分も何も聞いてないですねー」
「な……何なのよそれ!!!」
ババァは標的を警官たちへと変更。
しかしその間に1人の女性警官がギャルJK星に「あの……すみません」と声をかけ出していた。
「なに? アタシ変なこと言った? 独り言だから気にしないでほしいんですけど」
「いえいえ! そんなことではなくて……もしかして今の『しょけー』って姫の言葉ですよね」
「ん? あ、はい……そうですけど」
「てことはあなたは美咲さんですか!?」
女性警官が満面の笑みでギャルJK星にまた一歩歩み寄る。
「……なんで?」
「数年前に姫と一緒に……たまにですけどゲスト参加で相談に乗ってくださってたではないですかー! 私、当時相談して解決してもらった者なんですー!」
おおおおお!?!? あれか、あの女性警官も優香国の民……どこにでもいるなぁおい!!!
女性警官は目をキラキラと輝かせながらギャルJK星を羨望の眼差しで見つめている。
「え……えええ、そうなの!?」
「はい! あの、覚えてませんか!? イジメられすぎて辛くてもう命絶ちたいって相談したんですけど……」
「あー、そんな悩み結構あったからなー」
「それで相談通話中に親が入ってきて喧嘩になったんですけど……」
「あああああ!! ママ乱入の!! 思い出した!! SNSの名前って確か……もしかして【インキャメガネガール】!?」
「そうですそうです!! お陰様でアドバイス通り、そういった人種に強く出れる警察官に無事なることが出来ました!」
な、なんだってエーーーーー!?!?!? そういうアドバイスなのーーーー!?!?!?
女性警官が「毎日がやり返しで気持ちがいいですありがとうございました!!!」とギャルJK星に何度も頭を下げる。
それに気づいたババァが「何してるのよ」と説教口調で詰め寄るもそれを無視。 「ずっと姫と美咲さんにはお礼を言いたかったんです!!」とギャルJK星と奥で眠っている優香を交互に見ながら涙ながらに改めて頭を下げた。
そしてここから優香国の民の恐ろしさを知ることになる。
「ちょっと聞いてるのアナタ!!!」
無視されたことに腹を立てたババァが女性警官の腕を掴む。
すると女性警官はこれをチャンスと見たのか仲間の警官にアイコンタクト。 お互いに頷きあったのち、女性にこう言い放ったのだった。
「はい、公務執行妨害ですねー。 お母さん逮捕です」
「ーー……ハ?」
女性警官の声とともにババァが逃げ出さないようにするためだろう……残りの警官たちがババァの左右に立ち逃走経路を遮断。 うち1人が手錠を取り出しガチャリとババァの両腕にはめる。
「あ、アンタたち何やって……」
「だから公務執行妨害ですって。 どんなにイラついたとしても、我々警察官に暴行を加えるのは良くないですねー」
女性警官がニコリと微笑みながらババァに答える。
「べ、別に私は暴行なんか!!」
「痛かったですよー。 お母さんに掴まれた腕」
「そんな……! 私はアンタが話を聞かないからだから……!」
「はーい、言い訳は署でじっくりと聞きますからねー。 とりあえずお母さんが今から行くべき場所はこの部屋ではなくてパトカーですねー」
こうしてババァとそのガキどもは警察の方々によって警察署まで連行。
ギャルJK星は「あっぶねー。 ダイキが来る前に終わって助かったぁ……」と安堵のため息をつきながらクルリと体の向きを反転し、部屋の中へと戻っていったのだった。
「あ、危なかったね結城さん」
平和な空気が戻ってきたことに安心したオレは僅かに震える結城の手を握りながら明るめに話しかける。
「ねぇ福田……くん。 あの人たち、どのくらい逮捕されるのかな」
結城が連行されていくババァの後ろ姿を見つめながら小さく呟く。
「え? それは分からないけど……そんな重い罰はないんじゃない?」
「そっか……死刑になればいいのに」
「ーー……ンン?」
「え、あ。 なんでもない。 ほら、じゃあお守り渡しに行こうよ」
「あ、うん。 そうだね」
こうしてオレと結城は少しだけ時間を空けて優香の病室へ。
ギャルJK星にお守りを託し、オレは結城に希望の光を見せるために結城とともに自宅へと向かったのだった。
ーー……ていうかちょっと前の結城の独り言って気のせいですよね、聞き間違いですよね、そうですよね。
よね?
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