358 今行くぜ希望!!【挿絵有】
三百五十八話 今行くぜ希望!!
優香とギャルJK星の出会いを聞いてほっこりした翌日。
その日も真面目に登校したオレは早く優香に会いに行きたい衝動に駆られながらも時間経過が長く感じる苦手な理科の授業を受けていたのだが……
ーー……ん、なんだ?
まだ授業中だというのにポケットに入れてあるスマートフォンが振動している。
振動の長さ的にこれはメールだろう。 この時間に送ってくるということは今日も病院に足を運んでくれているギャルJK星……もしかして優香が目を覚ましたのか?
これは授業を聞いてるどころじゃねえぜ!!
オレはいてもたってもいられずに教師の目を盗みながら内容を確認。 するとそこに表示されていたのは確かにメールの受信通知だったのだが……西園寺から?
【受信・西園寺】ごめんね授業中に。 桜子、今日朝から様子がおかしいんだけど何か知ってる?
結城の様子が朝からおかしい?
ていうか結城学校きてたのかよ。 今朝もエマとエルシィちゃんの3人で登校してたから結城は今日も本来のママのところにいるのかと思ってたぜ。
ーー……しかし心配だな。
【送信・西園寺】どんなふうにおかしいの?
【受信・西園寺】返してくれてありがと。 なんか前の桜子に戻ったって言うのかな……ずっと俯いてて薄っすら目に涙溜めて。 私や他の友達が事情聞いても答えてくれないの。
なるほどな。
おそらくはそうなった理由はあれだ、優香の一件。
結城は目の前で優香が飛ばされたところ見たんだもんな……そりゃあ簡単に人には言えないか。
◆◇◆◇
ということで昼休み。
早速結城の様子を見に西園寺や結城のいる4組を覗いてみたのだが結城の姿は確認できず。
西園寺も「昼休みになるなりどこか行っちゃって……お手洗いだと思ってたんだけど……」とのこと。
「なるほど」
「うん、保健室はさっき見に行ったんだけどいなくてさ。 だから今はメールで場所聞いて返信くるのを待ってるところなの」
「おーけ、分かったありがとう」
どうせオレは昼休みにやることなどない。
なんかこの状況、少し前の小畑を探してる時みたいだな……そう感じながらオレは4組を後にして結城がいそうな場所をあたってみることにした。
ーー……といっても何となく場所は分かってるんだけどな。
◆◇◆◇
「ーー……ほらいた」
図書室。 前も小畑を探してる時に1人で本を読んでたからな。
トイレに引きこもりそうな性格でもないし、いるならここだろうと思ってたけどやはり正解だったようだ。
静かな図書室の奥……誰も寄り付かなさそうな本が並べられた棚のところで小さく泣きじゃくっている結城の姿を見つける。
「結城さん」
「ーー……福田……くん?」
周りの迷惑にならないよう静かに近寄り声をかけると結城が涙を指で拭いながらこちらを振り向く。
確かにこの感じ……西園寺がメールで言ってた通りだ。 今オレの目の前にいる結城は完全に少し前までの明るさは消えており、それ以前の心を閉ざしたバージョンになっている。
「福田くん……どうしたの?」
「あーいや、西園寺たちが心配してたからさ。 結城さんがいるのってここかなってなって」
「そう……なんだ」
「うん。 えっとその……オレが言えたことじゃないんだけど、大丈夫?」
そう尋ねると結城の目からは再び涙の洪水。
声を必死に抑えるように口を自身で塞ぎながらオレに背を向けるようにしてしゃがみ込んだ。
「ゆ、結城さん?」
「ごめん……なさい。 ごめんなさい……」
結城が肩を細かく震わせながら謝罪の言葉を連呼する。
「い、いや……別にこれは結城さんが悪いわけじゃないし……」
「私……あの時車の先にいた子たちには悪いけど、お姉ちゃんに助けに行ってほしくなくて手を引っ張ろうとしたのに間に合わなくて……もっと早く動けていればこんなことには……」
ーー……結城。
結城は優しい子だからな。
これはあの有名なトロッコ問題の応用編といったところだろうか。
トロッコ問題……あれだ。
二手に分かれるレールの前にトロッコが迫って来ている。 でも分かれた先には左右どちらにも人がいて、君はトロッコの行き先をどちらかに変更させられる場所にいる。 君ならどっちにトロッコを向かわせてどっちを助けるか……的なやつだ。
まぁちなみにオレだったら確実に人が多い方を助ける……とかではなくて、知ってるやつがいる方を助けるよな。
んで両方に知ってるやつがいる場合は申し訳ないが線路上に何か物を置いてトロッコ自体を脱線させるだろう。
だけど結城はオレと違って純粋な心の持ち主だ。
優香に危険な場所に行ってほしくないって気持ちと、車が突っ込む先にいた子供にどうにかして助かってほしいって気持ち……2つの優しさがぶつかり合ってどちらが僅かに上……とか判断が出来なかったんだな。
それにしてもあの結城が結果的にはその子達よりも優香の命の安全を優先してくれていたなんて。
ちょっとあれだ……その子たちには悪いけど嬉しいじゃねえか。
オレが結城のそこまで優香を想ってくれたという気持ちに感動していると、結城が「本当に……ごめんなさい」と目を真っ赤にさせながら振り返りオレを見上げてくる。
「いや、いいよ。 さっきも言ったけど結城さんは悪くないし」
オレが結城に涙を拭くようにハンカチを差し出すと、結城は首を左右に振りながら「大丈夫……ありがとう」とそれを拒否。 「そんなことよりも、これ……」と言いながら自身のポケットに手を入れた。
そしてそこから出てきたものにオレは驚く。
「ーー……これって」
「うん、お守り」
そう、結城の手には約10個ほどのいろんな色をしたお守り。
それを結城はオレに「はい……」と差し出してきたのだ。
「えっと……どうしたのこんなに」
「お姉ちゃんに早く良くなって欲しくて……昨日学校休んでいろんな神社やお寺に買いに行ってたの」
「わざわざ徒歩で!?」
「うん。 ママは学校行かなきゃだし、本当のママは入院してて外行けないから」
ジイイイイイイン!!!!
昨日結城はそんな努力をしていてくれていたなんて!!!
今度はオレの目に大涙警報が発令。 一気に決壊寸前にまで涙が瞳に蓄積されていく。
「だからこれ……お姉ちゃんに届けてあげて」
「結城さんは? あれならオレと放課後一緒に……」
「ううん、まだ私、お姉ちゃん見ちゃったら泣いちゃうかもしれないし。 だから……」
そう言うと結城は無理やりそのお守りをオレの手の上に。
そしてそれらがオレの手に触れたその瞬間だった。
突然あの時の光景がオレの脳内で蘇り再生されていく。
みんな、覚えてるよな。
そう……神様、美香がオレにお守り……身代わりお守りを渡してくれた時のあの会話だよ。
オレが頭上にはてなマークを浮かばせながら尋ねると、美香は……確かこう言ってたんだ。
『不動明王の力が込められている。 これは美香のイチオシ』
そして流石は美香のイチオシなだけあって現に入院していた陽奈の容態も良くなってたし、愛莉もあのお守りのおかげで陽奈が助かったと言っていた。
てことは要するに、そう言うこと……なんだよな?
おおお……おおおおおおおおおおおお!!!!!!
いきなり見えた眩いほどの希望の光にオレは興奮が抑えきれずに両手がガタガタと震えだす。
「ふ、福田……くん?」
「ありがとう結城さん!! オレちょっと……いや、かなりいい事思いついたかもしれない!!!」
「い……いい事?」
この希望の感情を結城にも共有してほしい。
そう決めたオレは結城にとある提案をすることにする。
「ねぇ結城さん」
「な、なに?」
「オレ体調不良ってことで昼休み終わったら早退することに今決めたんだけどさ、結城さんも一緒にどう?」
「ーー……え?」
結城が瞼をパチパチと動かしながらオレを見つめる。
「結城さんにもオレのこの気持ちを分かって欲しくてさ」
「福田……くんの、気持ち?」
「うん!」
こうしてオレと結城は別々に……体調不良を理由に昼休みが終わる前に学校を早退。
オレが結城の手を引っ張りながら歩いていると、困惑した様子の結城が「ね、ねぇ福田……くん?」と話しかけてきた。
「ん、なに?」
「これからどこ……行くの?」
「お姉ちゃんとこだよ」
「えぇ!?」
「あ、でも結城さんから貰ったお守り届けるだけだから。 オレの思いついたいい事はその後!」
「うん……なんかよく分からないけど、分かった」
さぁ!! 今行くぜ優香!!!!! その後行くぜ不動明王様ーーー!!!!
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