352 特別編・美咲② 犯人探し
三百五十二話 特別編・美咲② 犯人探し
『美咲……先生にチクった?』
友達の麻帆からのこの言葉が美咲の脳内で強く響き渡る。
冗談で言っているのだろうと麻帆の顔を改めて確認してみるも、その表情は真顔……完全に自分を敵視しているようだ。
なんでそうなってるのかは分からないけど、これは何としても誤解を解かなくてはーー……
小学生の頃みたいな状況には戻りたくない……美咲はどうにか自分がやっていないことを信じてもらうため、麻帆に必死に語りかける。
「えっと……待ってよ麻帆、アタシじゃない。 だって考えても見てよ、アタシ昨日体調不良で休んでたでしょ? なのにどうやって先生にチクるのさ」
「知らないよそんなの。 直美や紗江っちがそう言ってたんだしそれが真実でしょ」
「アタシはやってないって言ってるじゃない!」
「え、何ムキになってんの? 逆に怪しいんだけど」
「ムキにだってなるよ! だってアタシやってないのに……!」
そう弁解していると職員室に呼ばれていた紗江が教室へと戻ってくる。
「あ、紗江っち……!」
紗江にも自分の無実を訴えよう……そう思って紗江に視線を向けたのだが、紗江は美咲と目が合うなり「チッ」と舌打ち。
美咲のことは完全に無視しながら今目の前で話している麻帆に「最悪だったわー」と近づいてきて、その際に美咲の隣を通り過ぎ、紗江の肩が美咲の肩に軽くぶつかる。
「ーー……さ、紗江っち」
「あー、なんか当たったわ。 あとで消毒しとかないと」
「!!!!」
小学生時代のトラウマが……そしてあの頃激しく燃えていた怒りの炎が美咲の心の中で再び着火する。
これがまだ入学したてであまり仲良くなってない状態だったのなら逆に肩をぶつけ返して「さっきの言葉どういう意味?」と詰め寄っているところなのだがーー……
だめ、今キレたら終わる。
美咲は臨戦態勢の自身の心を必死に抑圧。
もう入学して少し経ち、クラス内での空気も出来上がりつつある……こんなところでブチ切れたとなったら女子たちからは確実に陰口の話題に、男子たちからも距離をあけられ一気に自分は問題児扱いだ。
それだけはどうにか阻止しなければ。
美咲はとりあえずこの場は大人しく退散。
席に着くと、どうして自分が犯人になっているのか……それを探るために昨日退学になったらしい直美にメールを送ることにした。
【送信・直美】麻帆ちんから聞いたんだけど、アタシが先生にチクったみたいになってるんだよね? なんで? アタシ何もしてないのに。
まぁ送ってはみたものの、どうせ返事は返ってこないだろう。
そう予想していた美咲だったのだがそれは1時間目の授業中。 スカートのポケットに入れていたスマートフォンが振動し、確認してみると直美からのメール受信通知ではないか。
「!!」
来ないと思っていたのにどうして……
そんな複雑な感情に飲み込まれながらも美咲は内容を確認することにした。
【受信・直美】いや良くそんなこと言えるね。 先生からも聞いたんだけど。
ーー……は? 先生から?
【送信・直美】なんて?
【受信・直美】とぼけないで大丈夫だから。 学校にメールしたんでしょ? 『今日の放課後1年の福田さんがイジメられるらしいので助けてあげてください』って。
え、何それ。
昨日はただただ熱でうなされてただけなのに……一体誰がそんなことを?
【送信・直美】待って、そんな連絡アタシしてないよ? 何なら送信履歴見てくれてもいいけど。
【受信・直美】もういい退学にさせられたんだし。 それに嘘バレバレだから。
【送信・直美】嘘? なにが?
【受信・直美】元々私らを裏切る気でいたんでしょ? だから一昨日私らが福田の話してる時に美咲、会話に入って来なかったんでしょ?
【送信・直美】え、いや! そんなんじゃないから!
【受信・直美】もういい。 てか受信通知の名前見るだけでイラつくからこれ以上送ってこないで。
ーー……なんてこと。 最悪だ。
やりとりを終えた美咲はその場でガクリと項垂れる。
まさか誰かが自分のフリをして学校にそんなメールを送ってる奴がいたなんて。
てことはそのメールを送った人物はおそらくこの教室内の誰か。
昨日の休み時間とかにでも3人の会話が聞こえてきて先生か誰かに知らせようと思ったのだろう。
それでそれを知らせたのが自分だということにすれば、仲良しグループの1人だし……ということであまり大ごとにはならないとでも思ったのか?
余計な真似を。
そんなに守りたかったのなら自分で直接言えばよかったのに。
美咲は瞳をギロリと光らせて周囲を観察。
もし自分を犯人に仕立て上げた奴がいるのならさっきの麻帆や紗江とのやりとりを見ているはず。 絶対に自分のことが少しは気になっているはずだ。
僅かな変化も見逃すまい……美咲は一人一人の表情やこちらに向けられている視線がないかをその授業中、じっくりと見ていったのだった。
絶対に見つけ出して皆の前で懺悔させてやる。
その一心で美咲は全員を疑って調べていると、それはちょうど福田優香に視線が行った時だった。
一体どうしたというのだろうか。 この時まだ誰とも視線が合ってなかったというに偶然なのか……被害者である福田優香と目が合う。
何か視線を感じ取っちゃったのかな……美咲はそんな風に考え視線を外そうとしたのだが……
「ーー……は?」
目を離そうとしたその僅かな時間。 優香のした表情に美咲の背筋に悪寒が走る。
それもそうだ、優香は美咲と目があったことを確信するなり頬に手をつき……ニヤリと口角をあげたのだから。
犯人って……もしかしてこいつ?
今更ではあるがこの優香、昨日イジメられたというのに全く怯えてる様子など全くない。
寧ろ清々してるといった方が正しいような……
これは直接確かめるより他にない。
美咲は昼休みに優香の机の上にこっそりと置き手紙。
放課後、近くの公園で話を聞こうとしたのだが……
◆◇◆◇
「ったく……、なんで来ないんだよーーーーーー!!!!!」
その日ギリギリまで粘ったのだが優香は現れず。
美咲はイライラMAXの状態で家へと帰ったのだった。
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この2人の過去を知った上で2人の会話を見たときに……尊さが増えることを願って!!!
ずっと早く書きたいなぁ、いつ書けるかなぁと思っていたのでこの美咲編までたどり着けて作者、嬉しいです!!
 




