351 特別編・美咲① 突然の悲劇
三百五十一話 特別編・美咲① 突然の悲劇
その日も優香の件については何も進展なく終了。
オレがギャルJK星とともに家へと帰っていると、ふと気になったことがあったのでギャルJK星に尋ねることにする。
「ねぇ星さん」
「なにさねダイキ」
「星さんさ、オレと一緒にいてくれるのは嬉しいんだけど……星さん家の方は大丈夫なの?」
「え? なんで?」
「だって星さんのお母さんとか心配してないのかなーって」
流石に親友の弟の面倒を見るからと言って「それなら長期外泊OK!」という親がいるだろうか。
もしこれが原因でギャルJK星とその家族の仲が悪くなった日にゃあ……
オレは少し寂しい気持ちになりながらもギャルJK星をゆっくりと見上げた。
ーー……のだが。
「なーに、一丁前の男を気取ってんのかな、このエロガキくんはー!!!」
ギャルJK星がオレの目線の高さまで腰を落としてオレの両頬をグイグイとこねくり回す。
「うぇあああ……!? 星さん!?」
「そんなのOKしてくれてるに決まってんべ? なんてったってゆーちゃんの一大事なんだから」
「そ、そうなの!?」
「おうよ! うちの親もゆーちゃんには感謝してんのよ? ゆーちゃんと出会ってなかったらアタシ、堕ちるとこまで堕ちてるはずなんだから」
ギャルJK星が「だから大丈夫だ」と眩しく笑う。
そういえば優香とギャルJK星の出会いってどんなだったんだろう。
気にはなるものの今は外……ゆっくり話をできる環境ではない。
オレはそのことが気になりながらもこの時は我慢……家に帰ってから改めて聞くことにしたのだった。
◆◇◆◇
「えええ!? ダイキ、そんなこと気になってたの!?」
家に着き入浴後、リビングのソファーでくつろいでいるギャルJK星にその件を尋ねるとギャルJK星は少し焦った様子でオレを見上げる。
「うん。 結構気になる」
「なんで!?」
「だって不思議じゃない? お姉ちゃんも前は荒れてたってことは知ってるけどさ、星さんとは性格が真逆……お姉ちゃんは静かで暗い感じだけど星さんはめちゃめちゃ明るいじゃん。 なんでそんな2人が仲良くなったの?」
「んー、あーそれはー……」
オレの再度の問いかけにギャルJK星は珍しくアタフタ。
しかし実の姉・優香が家にいないことで少しでもオレの心を満足してあげようと思ったのだろう……「これ、絶対に誰にも言わないって約束できるべ?」と目を細めながらオレに尋ねてくる。
「うん、言わない」
「ゆーちゃんにもアタシが教えたって言わない?」
「言わない」
「それを言ったとして、ゆーちゃんやアタシのこと幻滅とかしない?」
「しない。 2人ともオレの大事なお姉ちゃんだから」
その言葉を聞いたギャルJK星は安心したのか表情に柔らかさが復活。
そして「わかった。 じゃあ昔話みたいになるけど教えてあげるよ」と言いながら3年前……2人が中学1年生の頃の出来事を話し出したのだった。
「あれはいつだったっけかなー。 中1の1学期の途中くらいだったかな」
〜特別編・美咲① 突然の悲劇〜
「ちょっと美咲!! あんたそんな点数とって恥ずかしくないの!? 勉強しなさい勉強!!!」
美咲が家に帰るやいなや目の前には隠していた期末テストの用紙を持った母親の姿。
点数欄に『5点』と書かれた回答用紙を目の前に突きつけられる。
「は? なんでそれ持ってんの?」
「なんでって……あんたがテストの結果教えないから探したんでしょうよ!」
「ちょっとなんでアタシの部屋勝手に入ってんのさ! 最悪! きっしょ!!!」
「こら美咲!! なんなのその言葉遣いは!!!」
「あーもう家に帰ってくるなりうるさいなぁ!! もうほっといてよ!!!」
当時の美咲の家には母親が1人。
父親は単身赴任で県外へと出ていたため家にはおらず、別に怒鳴られてもなにも響いていなかった美咲はいつものように説教中の母親の言葉を途中からスルー。 イライラを募らせながら自室へと入ると、少しでもそのイライラを解消するべく入学してすぐ仲良くなった同級生の子たちとグループ内メールでの愚痴大会を開始した。
「お、紗江っちたちもうインしてんじゃん」
−みさきがインしました−
【SAE】あ、ミサ来たー。 待ってたぞー!!
【ナオミ】おつー
【みさき】ごめん、親がまたうるさかったから遅れた。
【☆MAHO☆】あーミサママうるさいんだっけ? 大変だねー
チャット形式の文ではあるが、いつものメンバー……紗江・直美・麻帆との会話で美咲の荒れていた感情が少し治る。
それからは中学生の女子特有……軽度な下ネタや色恋関係の話で盛り上がっていたのだが、それは突然だった。
【ナオミ】てかさ、福田いるじゃんウチらのクラスに。
急に先の内容とは関係のない話を直美が入れ込んでくる。
ーー……福田ってあの?
美咲は先ほど話に上がった福田という女の子……福田優香の姿を脳内で浮かび上がらせる。
と言っても一度も話したことのない子だったのでどうという印象もない。
強いて言うならば……髪は茶髪で前髪ちょい長め、暗い性格っぽいということのみ。
【みさき】うん。 優香さんだよね。
【SAE】いるね、話したことないけど。
【☆MAHO☆】うん。 ワタシも話したことない。
どうやら皆自分と同じようだ。
自分だけ会話に置いて行かれないことに内心ホッとしていると、直美からの最新チャットが画面上に表示される。
【ナオミ】今日教室で偶然目が合ったんだけどさ、ふつーに目を逸らされたんだよね。 ムカつく。
「えええ、そんなことで?」
あまりの直美の怒りの沸点の低さに心の声が漏れる。
自分だって担任に注意されてる時普通に視線逸らしてるじゃんと心の中で突っ込んでいると、残りのメンバーからの同情の声が続々と更新されていく。
【SAE】それヒドくない?
【ナオミ】でしょ?
【☆MAHO☆】ナオミを傷つけるなんてあり得ない。
【ナオミ】ありがとマホちん。
美咲がどう打とうか迷っている間にも直美を擁護する声。
「え、ちょっと……ちょっと待ってって! アタシまだ会話に入れてないって!!」
いつの間にか美咲抜きの空気が完成。
美咲がどこで会話に入るかタイミングを見計らっていると、そうこうしている間に3人の間で結論が出てしまう。
そしてその内容を見た美咲は目を大きく見開いて驚いたのだった。
【ナオミ】でさ、結構私傷ついたから明日やり返そうって思ってるんだけど。
【☆MAHO☆】いいね、味方する!
【SAE】サエも!
こ……これは大変なことになったぞ。
美咲は頭を抱えながらメッセージを遡って確認していく。
バカなアタシでも分かる。
これはイジメの空気……自分が一番嫌いな行為の1つなのだ。
実際美咲は小学校高学年の時に軽度ではあるがイジメられた経験があり、それを思い出すだけでも当時の怒りが湧き出してくる。
あの頃はその影響で同級生皆を敵のように感じていたし、それが原因でこれ以上舐められないように見た目もハデにしていったのだから。
いじめられる側の痛みを知っているからこそいじめる側の人間にはなりたくない……そう決めていた美咲だったのだが、この時の美咲は思春期ならではの感情が心の中でグルグルと渦巻いていたのだった。
自分だけ輪に入らなかったら仲間を外されるかもしれない。
またあの辛い日々を味わうことになるのかもしれない。
美咲はそのことについて夜遅くまで悩んでいたのだが、それが災いしてなのか普段使っていない頭をフルに活用してしまい脳がオーバーヒート。 知恵熱を出してしまい翌日になっても引かなかったため、その日は学校を休むことになってしまったのだった。
そしてその翌日、美咲は驚愕することとなる。
脳が復活した美咲が教室に入ると、すでに登校していた麻帆と目が合う。
「あ、マホちん、おはよー」
いつも通り話しかけるも麻帆の反応がかなり薄い。
一体どうしたんだろうと思いながらも「あれ、紗枝っちと直美は?」と話しかけると、信じられないような言葉が返ってきたのだった。
「紗枝っちは今職員室に呼び出されてる。 直美は……昨日退学させられたんだって」
「ええ!?」
突然の展開。
驚きを隠せなかった美咲の口から思わず声が漏れる。
「そ、そうなの!?」
「うん。 紗江っちが福田を昨日呼び出して直美と一緒に追求したのは知ってんだけどさ、それが校長たちにバレたんだって」
「なんで!?」
「そんなのワタシにも分かんないよ。 でも直美が昨日メールで言ってたことがあって、それに似たようなことを紗枝っちも教えてくれたんだけどさ……」
麻帆が静かに美咲を見据える。
「うん、何?」
「美咲……先生にチクった?」
「ーー……え」
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ギャルJK星と優香……尊い。




