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350 温かい!!


 三百五十話  温かい!!



 昨日の優香の一件から翌日。

 あと数日で春休みということもあり、オレは心を惑わせながらも学校へと登校。

 その際、優香のことを知っているエマや高槻さんには内緒にしておいてもらうことにしたのだった。



「あれれー? エマおねーたん、ユッキーちゃんは、きょうは、いないー?」



 登校中、エルシィちゃんが不思議そうに首を傾げながらエマに尋ねる。



「え、あぁ……そうね。 お腹が痛くてお休みするんだって」


「そーかぁー」



 結城は入院している実の母親のところにいるからな。

 優香の事故を目の前で見てしまったんだ……心のショックは計り知れないだろう。 

 まぁオレのショックもかなり莫大なのだがーー……



 エルシィちゃんが「おなか、いたいの、ちゅらいねー」と言っている最中、エマがオレの腕を軽く突く。



「?」


「ダイキ、あんた大丈夫なの?」


「あー。 まぁ」


「優香さんのとこ行かなくて平気?」


「うん、星さんが学校休んで行ってくれるらしいからそこは安心かな。 何かあったら連絡くれるっぽいし。 だからオレは学校終わり次第おいでって」


「そうなのね……」



 エマが何か言いたげな表情をしながらオレをジッと見つめてくる。



「なんだ?」


「その……エマに出来ることがあれば遠慮なく言いなさいよ? ユリもそうだったらしいけど……溜め込むのが一番体に毒なんだから」


「あぁそうだな、ありがとう」



 オレはエマに僅かに微笑みながら「その時はよろしく頼むよ」と頷く。



「うん、別に夜遅くでも気にしなくていいからね」



 エマが軽く拳を握ってオレの胸元にコツンと当てる。

 その拳を伝たって優しさがオレの体全体に染み渡っていくのが分かる。



 ーー……温かい。



「ただな、エマ」


「なに?」


「その……別にそこに対して怒ってはないんだけどさ、ユウリの場合は楓もう亡くなってんだろ? お姉ちゃんはそうなってねーからな」



 このオレの言葉にエマは一瞬沈黙。

 そしてその意味をようやく理解したようで……



「え、あわわわ!! ごめんなさい! そういうつもりで言ったんじゃなくて、エマはただダイキに1人で考え込むなってことを言いたくてその……!!」


「だから怒ってねーって。 ちゃんと伝わってる。 学校でも今までのノリで頼むわ」


「う、うん」



 ◆◇◆◇



 教室前、オレがエマと歩いているとそれに気づいた小畑が勢いよく教室から飛び出してくる。



「エマ!! 待ってたよ!!」


「えええ、どうしたのミナミ!!!」


「フッフッフ……まずはこれを見よ!!!」



 そう言うなり小畑はオレとエマの前で華麗なステップを披露。

 メイプルドリーマーの曲で練習していたのだろう……『私の恋はEMMA−ジェンシー』のサビ部分を口ずさみながら少しも詰まるところなく踊りだす。



「おぉ……」

「あら」



「どう!? エマ!!」



 やりきった感100パーセントの小畑が軽く息を荒げながらエマを見上げる。



「え……えぇ、完璧だわ、ミナミ」


「ほんと!? 嘘じゃない!?」


「えぇ本当よ。 タイミングもそうだけど、マネージャーが言ってた体の向きや視線もバッチリ……それに前みたいに息もそこまで切らしてないみたいだし、全体的に柔らかい印象だったわ」


「よっしゃあああーーーー!!!!」



 小畑は歓喜の雄叫びを上げながら大きく両手でガッツポーズ。

「福田も今の見たでしょ!? どうだった!?」と目をキラキラ輝かせながらオレに視線を移してくる。



「ん、あぁ……うん、凄かったよ」


「でしょ!? 昨日の夜に家で練習してたらさ、なーんかコツみたいなもの掴んだ気がして! それで繰り返してたらスムーズに出来るようになってたの!!」



 あぁ……小畑、輝いてるな。

 

 

 オレがそんな今を楽しんでいる小畑を羨むような目で見ているとそれに気づいたエマが「ちょ、ちょっとミナミ」と言いながらオレと小畑の間に割って入る。



「ん、なにどうしたのエマ」


「あー、なんて言うか、ダイキ今日はちょっと調子悪そうだからさ、だからその……」



 エマが気まずそうな視線をオレに向けてくる。



「えええ、そうなの福田! だったら保健室行く!? あん時のお返し……じゃないけど私運んで行ったげるよ?」



 ーー……!!!!



「え、あ、ううん大丈夫ありがとう」



 オレは僅かに声を震わせながらもその好意をお断り。

 目に涙が溜まっていくのを感じたオレは「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる」と言い残してこの場を離れたのであった。



 ーー……さっきのエマもそうだったけど、いつもの何気ないやり取りがこんなにも光に溢れていて温かかったなんて。



 オレは幸せ者なんだな。



 それからは何事もなくその日の学校生活は終了。

 オレはホームルームが終わると同時に優香のもとへと向かうべく急いで席を立ち教室を出る。



「あ、待って福田」


「ん?」



 振り返るとそこには三好の姿。

 三好が「あの……えーと」とブツブツ言いながらオレをチラチラ見てくる。



「なんだ?」


「その……大丈夫なの?」


「何が?」


「美波から聞いた。 風邪っぽいんでしょ?」



 あー、そういやエマがそんなこと朝に小畑に吹き込んでたな。


 オレは女子の噂は広まりやすいなと実感しながらも頷くと、三好が「それでさ……」とオレのもとへと歩み寄ってくる。



「何?」


「1人で帰れそう? あれだったら私……今日の練習休んで福田、家まで送ってくけど」


  

 うわああああああああ!!!! 温かいよおおおおおおおお!!!!

 お前本当に約1年前、オレをトイレに連れ出して蹴りまくっていたあのメスガキJSなのかぁーー!?!?!?

 


 とはいえ家まで送ってもらうとしても、オレが行きたい場所は優香の入院している病院。

 なので「それ大丈夫サンキュー」と手を振って別れ、全速力で病院へと向かったのだった。


 てかあれだな、ギャルJK星に言われて仕方なく学校には行ったけど……行って正解だったぜ。

 冷え切っていた心がかなり温かくなったんだからな。



 ◆◇◆◇

 


 病院。

 優香の集中治療が行われている部屋の扉を開けると、そこはまさに圧巻だった。

 インテリオーラを纏わせた人がざっと10人はいるだろうか……皆が似たような紙の資料を真剣に見つめながらガチトーンで話し合いをしている。



「な、なんだこれは……」



 思わず声を上げるとそれに気づいたギャルJK星がオレのもとへと駆け寄ってくる。



「お、ダイキちゃんと学校行ってきたんだな。 おかえり」


「ただいま星さん。 ていうかこの状況……なに?」



 オレはかなり動揺しながら部屋の中の人々を指差す。

 するとギャルJK星が「あー、まぁそうなるよね」と言いながら簡単に説明をしてくれたのだった。



「まぁ一括りでまとめると、医療の各分野ごとのスペシャリストらしいよ」



 ギャルJK星もあまり詳しくは理解していないらしいのだが……病院の院長さん曰くそこにいる人たちは皆、その分野ごとにおいて有名な脳外科やら何やらの様々な知識を持った第一人者たちとのこと。

 この人たちを差し置いて右に出るような者はいないと言われているほどの知識や技術の持ち主たちらしい。

 


「そ、そうなんだ」


「まぁそんな反応になるわな。 アタシだって最初聞いた時は開いた口が塞がらなかったし。 改めてゆーちゃんの偉大さが分かるよね」


「う、うん」



 その後ギャルJK星が「とりあえず今この日本でゆーちゃんを救える可能性の一番高い人たちだって考えればいいと思うべ?」と付け加える。



「それで星さん、何かお姉ちゃんのことで進展とかあったの?」



 そう尋ねてみたのだが、何故だろう……ギャルJK星のこの少し気まずそうな顔は。



 ーー……何かあったのか?



「星さん?」


「ダイキ、落ち着いて聞いてくれ」



 そう言ったギャルJK星が急に真剣な表情をしてオレを見据えてくる。


 もしかして深刻系……あまり聞きたくはないのだが、これは聞かなければならないことなのだろう。

 オレは緊張から生唾をごくりと飲み込みコクリと頷いた。


 

 オレが頷くとそれを確認したギャルJK星がゆっくりと口を開き、そしてーー……



「アタシにもサッパリ分からん」



 ーー……。



「ハ?」



 思ってもみなかったギャルJK星の言葉にオレは思わず声を漏らす。



「ほ、星さん? それはどう言うーー……」


「だってあんま聞いたことないジャンルの第一人者たちなんだべ!? アタシが理解出来るわけねーべ!!」



 た、確かにそうだあああああ!!!!



 とりあえず今分かっていることは、まだ優香は目覚めてはいないということ。

 何か分かり次第ギャルJK星経由ではあるがすぐに教えてくれるということで、オレたちはプロ集団の邪魔にならないよう……部屋の外で雑談をすることにしたのだった。


 その途中、ギャルJK星のスマートフォンにたまに届くプロたちからのメールを横から覗き込ませてもらっていたのだが……



【受信・プロ①】姫は脳以外の深刻なダメージはないようですので報告致します。


【送信・プロ①】ありがとうございます! 深刻ってどのレベルですか?


【受信・プロ①】多少の怪我はありますが、針で縫う段階までは達していません。


【送信・プロ①】なるほどですありがとうございます! てことは脳だけが問題ってことですよね?


【受信・プロ①】そういうことになります。 返信早いですね。


【送信・プロ①】JKですから! それではゆーちゃんのこと、よろしくお願いします!



 うわあああああ……。



「ほ、星さん」


「なに?」


「メール、元気だね」


「そう? 照れるじゃんかぁー」



 ーー……褒めてねーよ。



 オレが心の中で突っ込んでいると、ギャルJK星が「だってみんな暗いんだよ? アタシだけでも光っててあげないとダメっしょ」と微笑みながらオレの頭を撫でる。



「ーー……え、それであえて明るくしてたの?」


「当たり前だろ。 流石に美咲ちゃんも普通の会話くらい出来るわ」



 美咲ねーさんマジ太陽ーーーー!!!!!

 温かいを通り越して熱いぜええええええええ!!!!!



お読みいただきましてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も濃厚な内容!! ダイキのことを案じてくれる子がたくさん……。 うう……みんな成長しましたなぁ!! 小畑ちゃんのダンスのおかげで、シリアスな路線ながらどこかほっこりします!! プロ…
[一言] 周りが喧しくて優香の姉さん、ゆっくりやすめねぇだろうがい!
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