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347 ドキドキの遊園地!③


 三百四十七話  ドキドキの遊園地!③



 楽しい時間はあっという間に過ぎるって本当なんだな。

 気づけばもう夕方。 オレと西園寺はあれからいろんなアトラクションを体験したり美味しいものを食べたりと、本当に充実した時間を過ごし、結構クタクタになりながらベンチに座っていた。



「福田くん、次何にしよっか」



 隣に座った西園寺が身を寄せながら簡易マップが記されたパンフレットをオレに見せてくる。



「んーそうだな、時間的にも次が最後だしなー」


「え、そうなの!?」


「あのなぁもう夕方4時だぞ? 流石に遅く帰ったらパパママが心配するだろ」



 オレはスマートフォンの時間を確認しながら「うん、次が最後だな」と大きく頷く。



「え、でも私……別にいいよ遅くなっても。 お母さんにはメールで連絡すれば大丈夫だし」


「西園寺。 そういうのはせめて高校生になってから言え」


「だってもう帰る時間だなんて寂しいんだもん……」



 西園寺が寂しそうに視線を落としながら小さく項垂れる。

 まぁそう言って貰えてるってことは今日一日オレが西園寺を退屈させなかったということで、それは誇りに思うし嬉しいのだが、やはりなんだかんだで西園寺もまだ小学5年生……流石に親御さんのことや西園寺の今後のことを考えると無茶はできないよな。


 

「そんな悲しそうな顔してもダメだ。 次がラストな」



 ここでオレが折れるわけにはいかない……そう心に決めて西園寺に伝えると、西園寺がゆっくりとこちらに視線を向けてきて上目遣いで見つめてくる。



「ーー……どうしても?」



 う、うわああ……目がウルウルしてて口元ちょっと尖らせて……可愛いなぁおいいいい!!!

 ずっと見てられるぜえええ。


 オレがそんな西園寺に見惚れていると、西園寺が「ねぇ、どうしても?」と再度尋ねてくる。



「ど、どどどどうしてもだ!」


「ぜったい?」


「絶対!!」


「こんなにお願いしてもダメ?」


「そんなにお願いしてもダメ! てかその顔でお願いすんのやめろ!!! 可愛すぎてつい『仕方ねえな』って言っちまいそうになるだろうが!!!」



 オレはこのまま西園寺を見ていると本当に「仕方ない」と言ってしまいそうだったので急いで西園寺から目を逸らす。



「ねぇ福田くん」


「ダメ!」


「福田くんー」


「ダーメったらダメ!! このやり取りこれ以上続けるならもう帰るぞ! 今のでもう5分くらい経ってんだろ!」



 オレが確固たる意志でそれを伝えると西園寺にもようやく伝わった模様。

「ぷー。 いけると思ったのになー」と頬を膨らませながら再び簡易マップに視線を移した。



「よし決めた!」


「ほう」



 十中八九、王道の観覧車だろうなと予測しながらもとりあえず西園寺の声から聞くことにする。



「で、どこだ?」


「ここがいいな!」



 オレは西園寺の指差した施設名を読み上げることに。

 えーと、なになに?



「メリー……え、メリーゴーランド!?」



 ◆◇◆◇



 やはり女の子の考えってよく分からないな。

 オレも優香や結城と関わったり、あとギャルJK星から借りた恋愛漫画を読んで少しは女の子の思考が分かってきていたと思っていたのだが、それもまだまだレベル1くらいらしい。

 

 普通男女での遊園地のラストって観覧車じゃないのか?


 そんな疑問を抱きながらも気づけば目的のメリーゴーランド前。

 そこまで人気のアトラクションでもなしく、並ばずにスムーズに中に入ることが出来た。



「メリーゴーランドなんて久しぶりだな」



 オレが小さく呟きながら目の前の馬に跨ろうとすると、西園寺がいきなり「ちょっと待って!」とオレの腕を引っ張る。



「な、なんだ?」


「その……こっちがいい」


「え?」


「こっちの白馬。 一緒に乗りたいな」



 西園寺が指差したのは隣にある銀色に光る白馬。

 ま、まぁ白馬に憧れるのはオレも分かるぞ? でもそれより驚いてるのはやっぱり……



「い、一緒に乗るの?」



 オレの問いに西園寺が顔を赤らめながら「うん」と頷く。



「えっと……どっちが前?」


「私が前で、福田くんが後ろ」


「で、でもよ、西園寺……お前序盤からやらかして今パンツ履いてないんじゃ……」


「うん。 いい。 当たってもいいから、一緒に乗りたいな」


「な、なるほど」



 そろそろ開始しますのアナウンスも流れているのでオレに考える時間はない。

 オレは「分かった、じゃあ先に乗れ」と西園寺を前に跨らせた後にオレもその後ろに乗り込んだ。



「だ、大丈夫か狭くないか?」


「うん、大丈夫。 へへ……ありがと」



 目の前には西園寺のふわふわの髪。

 綺麗だなーと眺めているとアトラクションが動き出し、オレは捕まるものがなかったので咄嗟に西園寺のお腹に手を回して後ろから抱きしめるような体勢でバランスをとった。



「ひゃ、ひゃあ」


「うわああああすまん西園寺! 落ちそうだったからつい!!!」


「う、ううん! 大丈夫だよ! もっとくっついてくれても平気」


「そ、そうか。 じゃあ遠慮なく」



 あれ、これって普通は立場逆じゃね? とは思いつつもオレは西園寺を後ろから抱きしめる。

 うわああ、やっぱり西園寺も女の子なんだなぁ……腕から伝わるこの女の子特有のふわふわプニプニ感……最高だぁ。

 それにくっついてるから西園寺の髪の香りもモロに鼻から入ってくるわけで……



 もう心底堪らん!!!!



 オレは序盤のお化け屋敷で再会しかけたクヒヒ野郎のことなど完全に忘れて西園寺の香りと体温を感じることに全集中。

 そんな感じでアトラクションよりも西園寺に神経を注いでいると、突然西園寺が「福田くん、あのさ……」と後ろを振り向かずに小さく話しかけてきた。



「なんだ?」


「その……私って怖い?」



 ーー……ん?



「え、どうした急に」



 尋ねてみると、どうやら西園寺には最近オレに相談したかった出来事があったようで「こんなタイミングで言うのもあれなんだけどさ……」と申し訳なさそうな声を出す。



「いいって。 とりあえず言ってみろ」


「いいの?」


「構わん」


「ちょっと暗くなるかもよ?」


「でもオレに相談したかったんだろ? 構わん言ってスッキリしろ」



 そう答えると西園寺は「うん、ありがと」と小さく頷き、少しの沈黙を挟んだ後にゆっくりと話し出した。



「ちょっと前のことなんだけど、トイレに入ってたら外から他のクラスの子……なのかな。 数人で話し出してさ」


「うん」


「私……最近はおとなしくなったけどやっぱり怖いよねって言ってたんだよね」


「え」


「やっぱり福田くんも……そう思う?」



 そんなこと言われてたなんて全く知らなかったのだが、西園寺のやつ……相当気にしてたんだろうな。

 オレの回している手を上からギュッと握りしめてきている。



「いや、別にオレはそうは思わないけど……」


「他の子たちもそんなこと言ってない?」


「あぁ言ってないぞ。 結城も三好も多田も小畑もエマも。 あ、水島はお前のことライバル視してるけどな。 なんたって西園寺は学年のマドンナ候補なんだから」



 そう答えると西園寺は「ふふっ」と笑ってオレの方に振り返る。



「ありがと、福田くん。 それ聞けてスッキリしたよ」


「お? おお。 でもなんかあったらすぐに教えろよ?」


「うん、でも大丈夫。 結局は自分がしてきたことだしね」


「そ、そうか」


「うん。 それでね、もし私がこれから頑張ってみんなからの印象が良くなって、誰も私のことを怖がらなくなった時には福田くん、私とーー……」



 西園寺は何を言おうとしたのだろう。

 途中で言葉を詰まらせると静かに顔の向きを前へと戻す。



「ん、おいどうした西園寺」


「ううん、なんでもない」


「なんだよ最後まで言えって」


「言わない」


「もしかしてあれか? その続きって『私と付き合って……』とかか?」


「ぶっぶー」


「違うのかよ!!!!」



 流石に手を離してのツッコミは危険だったため、オレは額を西園寺の背中に軽く当てながらツッコミを入れる。



「はぁ……告白かと思ってドキドキしたのによー。 オレのときめき返せよもう」


「ふふ、ごめんね」


「なんだよ、オレ告白してないのにフラれたみたいじゃねーか!」


「そうだね」


「そうだねじゃねーよ!!!」


「ふふ、ははは。 もう、そんなに顔擦り付けないでよー。 落ちちゃうよ福田くんー」


「落ちても構わん! おい西園寺、あの言葉の続きを言え!」


「言わなーい」


「言え!」


「言わなーい」



 こうして「言え」「言わない」の押し問答をしている間にアトラクションが終了。

 オレは西園寺に「なぁ教えてくれよ気になるだろー?」と言いながら専用出口を出た。



「ねぇ福田くん」


「お、なんだ? 教えてくれる気になったのか?」


「ううん、私……頑張るね」



 西園寺がオレに振り返りながら優しく微笑む。



「頑張るねって……それ前にも似たようなこと言ってなかったか?」


「覚えてくれててありがと。 うん、でもそれと今のは別だよ」


「そ、そうなのか」


「うん。 とりあえず福田くん、今日はありがと」



 西園寺は優しくオレの手を握りながら微笑むと「それじゃあ帰ろっか」と潔く遊園地の出口を指差す。



「お、おう。 案外素直だな西園寺。 もうちょっと粘ってくるかと思ったぞ」


「うん。 やっぱりこういうのは身近な人から変えてくのが大事かなって思って」


「何を?」


「ないしょー」


「ぐおおおおお!!! テメェ西園寺!! 急にオレをイジんじゃねーぞ!!!」



 こうして最初はデートだと思いドキドキしていたオレだったのだが帰りは一変。

 今までのワチャワチャしたノリ……緊張など全くない状態で駅へと着いたのだった。



「あ、じゃあ私こっちだからまた明日ね」



 西園寺がオレとは反対方向に体を向けながら手を振ってくる。



「いや、あれだったら近くまで送るぞ?」


「大丈夫。 まだそんなに暗くないし1人で帰れるよ」


「そう……なのか?」


「うん。 それに福田くん、あれだけお化け屋敷で騒いでたんだから疲れてるでしょ? 早く家に帰って休んで」


「う、うるせーな! そこまで騒いでねーよ!!」



 結果本当にオレは送らなくて大丈夫とのことだったのでオレが1人で帰っていると、途中で西園寺からメールが届く。



【受信・西園寺】今日はありがと。 楽しくて幸せだった。


【送信・西園寺】オレも楽しかったぞー。 気をつけて帰れよー。


【受信・西園寺】うん。 そういや今度映画行こうって誘ってくれたよね! 何観る!?


【送信・西園寺】おいおい唐突だな。 オレあまり詳しくないからまた学校やメールで教えてくれ。


【受信・西園寺】うん分かった! 楽しみにしてるね!



 しかしあのメリーゴーランド上での西園寺は何を言おうとしてたんだ?

 そんなことをオレは脳内でグルグルと考えていたのだが、やはり西園寺の言っていた通りお化け屋敷で叫びすぎたせいもあるのだろう……帰ってベッドの上で横になったオレは物の数秒で夢の世界へと旅立っていったのだった。



 そしてこの数日後オレは知ることとなる。

 前に神様……美香がオレに教えてくれた言葉の意味を。



 ーー……あ、ちなみにちゃんと遊園地のお土産コーナーで西園寺にプレゼントは買ってやったぞ?

 なにを買ったかはまぁ……その時のお楽しみだな。




お読みいただきましてありがとうございます!

下の方に星マークがありますので評価していってもらえると励みになります嬉しいです!

感想やブクマ・レビュー等、お待ちしております!!


さぁ、次回から一気に加速します!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] メリーゴーランド!! はいてない……!ゴクリ! 今回はいつにもまして真面目なデート回でした! でもちょっと不穏……( ;∀;)
[良い点] いやぁ、デートとしては、最高だったな! 最後の言葉は、あれでしょ?プロポーズするってことでしょ! もう!うらやまけしからん!けども、西園寺に並ぶためにも、勉学と何かを極めないとなぁ?ダ…
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