345 ドキドキの遊園地!①【挿絵有】
三百四十五話 ドキドキの遊園地!①
オレと西園寺が土曜日の夕方ギリギリにまで連絡しあって選んだ遊園地……といっても3箇所の候補から選んだだけだったのだがその場所はーー……
「まさか、去年に優香たちと行った遊園地になるとはな」
オレは独り言を呟きながら西園寺との待ち合わせ場所である最寄駅へ。
前回は西園寺が先に着いてて待っててくれてたのだが、今回はオレの方が早かったようで西園寺の姿が見当たらない。
まぁそれも当然か……前回も別にオレが遅刻したわけじゃないのに待っててくれてたんだ、今回こそは待たせてなるものかと心に決めてたんだからな。
とは言ってもまだ待ち合わせ時間45分前……流石に本気出しすぎたか?
オレがもう少し来るの遅くても良かったかなと考えていると少し遠くから西園寺の声。
「福田くーーん!!」
視線を向けると西園寺が息を切らしながらこちらに向かって駆け寄ってきていた。
「ちょ、えええ!? 西園寺、早くね!?!?」
「ううん、それよりもごめんね待たせちゃって! 私まだ福田くん来てないと思ってたのに」
「そこは気にするな。 オレも今回は西園寺を待たせたくなかったからな」
「そ、そうなんだ。 えっと……ありがとう」
西園寺が何やら嬉しそうに手をお腹の前辺りで組みながらモジモジ身体を揺らし始める。
「ん、なんでオレ感謝されてんだ? てか待ち合わせ時間までまだ30分以上もあるんだ、別にオレに謝る必要ないだろう」
こうして早速オレは西園寺に「じゃあ行こうぜ」と提案。
西園寺は遊園地を楽しみにしてたんだな。 元気に「うん!」と微笑みながら答えると、オレの後ろにピタリと着いて切符売り場へと向かったのだった。
「えーと……遊園地のある駅が確か……」
オレは切符販売機上部に展示されている簡易路線図を見上げながら目的地の駅名・切符の料金を探し始める。
「あ、福田くん、510円だよ」
「そうなのか? てか見つけるの早いな西園寺」
「うん、私調べてきたから」
「お、おうありがとう」
く、くそう。 オレだって調べようと思ってたんだけど優香が今回のこれをデートとか言うから妙に緊張して忘れてただけだし!
でもまぁ恥ずかしいミスはこれが最初で最後だ。 次からは全てスマートな立ち振る舞いをーー……
「あ、福田くん!」
「え、なに?」
「遊園地行きのホームそっちじゃないよ。 右じゃなくて左」
「あれ、そうだったっけ」
「うん。 右は前に行った映画館の方面だね」
ーー……。
「あ、あーーー! そうだそうだった!! イヤー西園寺見てると映画楽しかったなーって思い出して足が自然にそっち行きに向いちゃってたゼーー」
「そ、そうなの!?」
「ソウソウー! また機会あったら行こうナー西園寺ー」
「うん! うんうん!!!」
ぐわああああああああ!!! 開幕早々2連ミスかよおおおおお!!!!!
気を引き締めろオレえええええええええええええ!!!!!!!
◆◇◆◇
あれからは無事に何事もなく物事が進み、なんとか目的地の遊園地へと到着。
ようやく安心したオレは入場チケット購入のため、西園寺とともに専用の列に並んでいたのだがーー……
「ーー……ん?」
「え、どうしたの福田くん」
オレの小さな声に反応した西園寺が首を傾げて尋ねてくる。
「え、あーいや、なんでもない。 すまんな」
「そうなの?」
実は改めて西園寺を見たときに気づいたことがあったのだが、それについて話しかけるのも周囲の目があり少し恥ずかしかったので、オレは入場ゲートに入った後であまり周囲に人がいないのを確認してから西園寺にその話題を切り出すことにした。
「なぁ西園寺、ちょっといいか?」
「なに福田くん」
先頭で無料配布の園内簡易マップを眺めながら歩いていた西園寺がクルリとオレの方へと振り返る。
「あのさ、これもし違ってたらゴメンなんだけど……」
「うん?」
「今日の西園寺の服装ってさ、いつもと感じ違うくない?」
そう尋ねると西園寺は目を少し大きく開かせながら「えっ?」と口から声を漏らす。
「福田くん……分かった?」
お、西園寺のこの反応的に当たってる……のか?
「ま、まぁな。 前の映画の時の服装やウチに来てくれた時の服装とちょっと雰囲気が違うかなーって思ったからさ」
「ちなみに福田くん、どう違うかわかる?」
「えええ、そこ詳しく聞いてくんのかよ」
「だって気になるんだもん」
「マ、マジか」
オレは西園寺の質問に答える前に今一度西園寺の服に視線を向ける。
そう、今の西園寺の服装は……春先ということもあるのだろうが、単調だけど可愛い柄のついた黄色のワンピースの上の薄いピンク色のカーディガンを羽織っている。
前回や前々回はいかにも小学生高学年や中学生の女の子が好んで着てそうな感じだったのだが、今の西園寺の服装は圧倒的清楚! まるで優香を意識したかのような小学生らしからぬ落ち着いた感じになっていたのだ。
「なんというか……お姉ちゃんが着てる服みたいな感じだよね」
「正解!!」
西園寺が満面の笑みでオレに顔を近づけ手を握ってくる。
「お、おお! 正解か!」
「うん! 良かった、気づいてくれたんだ」
西園寺はどこかホッとした表情で小さく息を吐く。
「まぁそのなんだ、やっぱりお姉ちゃんの私服は一番見てるからな。 でもどうして西園寺はわざわざそんなお姉ちゃんみたいな格好を?」
「え、似合ってない……かな」
「いやいや充分すぎるくらいに似合ってるぞ?」
「そっか、ありがと」
西園寺は自身の服に視線を落としながら少し恥ずかしそうにその理由を話し出した。
「最近桜子、スマホ持つようになったでしょ?」
「結城さん? うん」
「それで前に、優香さんと写真を撮ったって見せてくれたことがあったの」
西園寺の話ではこうだ。
学校の休み時間に結城と何気ない会話をしている時に優香の話になり、そこで結城が最近買い物帰りに優香と一緒に撮ったというツーショット写真を見せてくれた……とのことだった。
そしてそのときに写っていた優香が西園寺からみてかなり大人で落ち着いた雰囲気が漂っていたらしい。
「えーと……それでなんでお姉ちゃんの服装を?」
「だからね、福田くんっていつもそんな綺麗な優香さんの服装を見慣れてるわけじゃない?」
「うん」
「だったら私たち小学生の服装なんて所詮は子供……福田くんからしたらなんとも思わないのかなーって考えたから、少しでも印象に残してもらえるように優香さんの服装を参考にさせてもらったの」
「な、なるほど」
「でも良かった、優香さん意識して正解だったよ。 ちゃんと福田くん、私の服装にも興味を持ってもらえた」
西園寺が胸の高さ辺りで手を組みながら嬉しそうに微笑む。
これも服装の醸し出す雰囲気の影響もあるのだろうか……いつもより大人びた印象でドキドキするぞ!!
服装でこんなにも印象が変わるなんてな。
これが女子の固有スキル【オーラチェンジ】かと感心していると、西園寺が「ねぇ福田くん?」と顔を覗き込んでくる。
「え、あ、すまん、なんだ?」
「せっかく遊園地に来たんだよ? ここでジッとしてても勿体無いし、早くどこかアトラクション行こうよ」
そう言った西園寺がオレの手首を掴むと、同時に少し強めの風が吹き、西園寺の髪がいい感じになびき微かにオレの鼻に当たる。
うおおおおおおおおお!!!! シャンプーかなリンスかな!?
なんかこの女の子の髪から香るフローラルな感じ……久々なんじゃああああああああ!!!!
オレの中での西園寺の女の子度が一気に上昇!
今日はなんていい日なんだと天候の神様に最大限の感謝を伝える。
「それで福田くん、最初どこ行こっか」
「んーそうだな、西園寺の行きたいところでいいぞ」
「そうなの?」
「あぁ。 なんたってオレはレディファーストだからな」
そう言われた西園寺は「じゃあどうしよっかなー」と再びパンフレットに視線を移し考え始める。
「ここからだとジェットコースターはちょっと遠そうだね。 観覧車はまだ早い気もするし……」
西園寺も小学生なんだ。
どうせ言ってくるのはジェットコースターとかそこらへんの乗り物系だろう。
そんなことを考えていたオレだったのだが、次の西園寺の言葉に衝撃を受けることとなる。
「うん、決めたよ!」
「お、どこだ?」
西園寺がパンフレットの簡易マップをオレに見せてきて行きたい場所を指差している。
オレはその先に書いてある施設の名前に目を通していったのだが……
「えーと、なになに?」
恐怖……ゴースト病院へようこ……そ……?
「ーー……え、お化け屋敷?」
「うんっ!」
「初っ端から?」
「うんっ!」
「なんで!?」
「だって……盛り上がるかもって思ったから。 もしかして福田くん、怖いの苦手?」
西園寺が純粋な瞳をオレに向けてくる。
おいおいそんな目で見られて断った日にゃあ今日1日の全てが悪くなっちまうじゃねえかあああああ!!!
「え、あ、いや! そんなことはないぞ!?」
「よかった。 じゃあ早速行こうよ。 ここから結構近いよ!」
「あ、ハイ」
こうしてオレは西園寺に引っ張られながらあの忌まわしき思い出のあるお化け屋敷へ。
生唾をごくりと飲み込みながら施設の中へ足を踏み入れたのだった。
ーー……大丈夫、あの隙間さえ覗かなければ視えない怖くない。
絶対出てくんじゃねえぞフラグじゃねえからな!!!!
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