341 勝負服!!
三百四十一話 勝負服!!
ドSの女王・小畑がエマの前世・小山楓をスマートフォンの壁紙にしている件。
これをエマに尋ねてみたのだが、エマは「いい? ぜっったいにエマの前世ってことは言わないでよ!?」とだけ。
どうやら話の流れで見つかってしまっただけとのことで、これ以上そのことについては触れないで頂戴ということだった。
まぁ話す気なんて最初からなかったんだけどな。
そしてそれはそれとして気づけば金曜日の夜。
オレがベッドの上でボーッとスマートフォンを眺めていると西園寺からメールが届く。
【受信・西園寺】遊園地、明後日だね。 楽しみにしてるね。
オレはそのメールに『晴れたらいいな』と返信。
その後しばらくそのメールを見つめ、こう呟いたのだった。
「ーー……あ、着ていく服どうしよ」
◆◇◆◇
「ダイキー、お風呂空いたよー」
オレが洋服棚の中を漁っているとお風呂上がりの優香が扉から顔を覗かせる。
「あ、うんわかった」
「ダイキ、なにやってるの? そんな泥棒が入ったみたいにお洋服散らかして」
「えっと……これはーー」
これはあれだな、こういう系はオレのセンスじゃなく優香に手伝ってもらった方が無難だろう。
そう考えたオレは明後日の日曜日、西園寺と遊園地に行くことを優香に伝える。
「えええええ!?!? 希ちゃんと!?」
「うん」
「なんで!?」
「あーっと、まぁ誘われてたから?」
「それもうデートじゃん!」
「デーt……え、エエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?」
オレは優香の言葉に大反応。
確かに言われてみればそうだ、皆が楽しむところに男女で2人……これは誰の目から見てもデートに見えるに違いない!!
でもそんなこと言われたら……ヤベェ、めっちゃ緊張してきたんですけどおおおおおおお!!!!!!!
デートかもと意識した途端にオレのチェリー精神が作動。
正常な判断が出来なくなり、どの服を着ても全てがハズレなのではないかという不安に襲われてくる。
「ど、どどどどうしようお姉ちゃん!!!!」
「どうしようって……ダイキ、それはちゃんと選ばないとダメだよ!」
「で、でもでもでもオレそんな服のセンスなんてないよ!?」
オレはどうにか当日着ていく服のチョイスを手伝ってくれないかと優香に懇願。
これでなんとかなる……そう思っていたのだが、返ってきたのはこんな言葉だった。
「うん、それはいいけど希ちゃんって普段どんな服きてる子なの?」
「ーー……え?」
なんでそんなこと聞いてくるのだろうと疑問に思ったオレはいつもより瞬きの回数を増やしながら優香を見上げる。
「えっと……お姉ちゃん? なんで?」
「いや、まぁ無難な服装で行けばいいとは思うんだけど、女の子のテーマに合わせた服をチョイスした方がお互いに楽しくない?」
「ーー……そういうものなの?」
や、やべぇ、そこらへんの恋愛に関しての履修はまったくしてないから理解ができない。
オレの頭上には大量のはてなマーク。
そして優香はそれを察し、落ち着いた口調でオレにこう問いかけてきた。
「じゃあさ、ダイキから見て、希ちゃんってどんなイメージ?」
「西園寺のイメージ……」
オレは脳内で西園寺の姿を思い浮かばせる。
「元女子グループのドn……ゲフンゲフン」
「?」
オレが慌てて咳き込んでいると優香が不思議そうにオレを見つめてくる。
「元女子グループのド……なに?」
「いや、なんでもない。 えっとそうだなぁ、西園寺のイメージはーー……」
オレは脳内にいたドン・西園寺にお帰りいただき、「次の西園寺どうぞー」と手招きをして呼びかける。
そしてそこに呼ばれてやってきたのは顔を真っ赤にさせてスカートを自ら捲りあげた……
「どうしようもないドM……ゲフンゲフンフン!!!!」
「え、ごめんダイキ。 『どうしようもない……』までしか聞き取れなかった。 で、なに?」
「えええああああいや、なんでもない!! あれれおかしいな、どんなイメージだったかな」
オレは意識を再び脳へと移動。
ドM西園寺は脳の片隅で放置して置くことにして、次の西園寺を呼んだ。
『次の西園寺、どうぞー』
『お、お邪魔します』
そこに現れたのは顔は先ほどのドMと同様に赤く染め上げた西園寺。
しかし息は乱しておらず、低姿勢でオレをチラチラと見ながらオレの目の前へと移動してくる。
『じゃあ今オレの前にいる西園寺、君は何西園寺なのかな?』
そこで西園寺が答えた言葉をそのままオレが自分の口で代弁して優香に伝えることに。
「えっと……普通の面倒見の良い女の子?」
「そうなの?」
「う、うん。 だってほら……わざわざ学校を休んでお弁当を買ってきてくれたり、家事手伝ってくれたり、勉強も教えてくれたりしたから」
オレがそう答えると優香は何やら小声でブツブツ。
「それってただ単にダイキのことが……」なんやらかんやらと言いながら「そっか、普通に面倒見の良い女の子なんだ」とオレに微笑んだ。
「うん」
「じゃあ大丈夫だ、よかったねダイキ」
「え?」
優香がオレの背中をポンポン叩く。
一体どういった意味の『大丈夫』なのか分からなかったオレはそのことを優香に聞くことにした。
「あの、お姉ちゃん? 大丈夫って一体何が……」
「うん。 えっとね、ダイキが何着て行っても、希ちゃん喜ぶんじゃないかな」
「エエエエエエエ!?!?!?!?」
その後オレが何を言っても「お姉ちゃんは手伝いませーん」とニコニコしながらオレの手伝いを拒否。
オレは絶望からその場で崩れ落ちる。
「ほらダイキ、そんな落ち込んでないで希ちゃんとのデート服選ばないと」
「もう……ダメだ」
「なんで?」
「お姉ちゃんが……手伝ってくれないなんて……」
「そりゃそうだよ。 お姉ちゃんが選んじゃったら希ちゃんに失礼だもん」
オレはそんな優香の言葉に、心の中で『いやいや小学生の服装を選ぶくらいで失礼とかないだろ』などとツッコミを入れていたのだが、ここでオレの容量の少ない恋愛脳が回転。
その脳の言葉がオレの体全体に響き渡ってきた。
『気にするな自分……ダイキよ。 優香はただ拗ねているだけなのだ』
ーー……!!!
そ、そうなのか!?
『あぁ。 ちなみに服装はいつも着ているもので問題ない』
マジか!!
『だって考えてもみろ。 お前が自分で買った服がこの中にあるのか?』
ーー……ハッ!!!
確かにそうだ!!!
オレは改めて目の前に広がる自分の服を見渡していく。
そうだよな、このオレがダイキの身体に転生して以降、自分で服を買った記憶なんか一回もない!!
てことはこれら全てがおそらくは優香チョイス!!
センスの塊ばかりってことじゃねえかああああああ!!!!
素晴らしいことに気づかせてくれた恋愛脳にオレは心から感謝。
その後視線を優香へと戻す。
「ーー……ダイキ?」
「お姉ちゃんありがとう!!!」
「え?」
「オレ、良い感じの選べそうな気がしてきた!!」
オレが満面の笑みを向けると優香もどこか安心したように「そ、そう? それならよかった」とほほ笑み返してくる。
「それじゃあオレ、お風呂入ってくるよ」
「あ、うん。 行ってらっしゃい」
いやー心がスッキリした時には鮮度の良いパンツが一番だよね。
脱衣所に入ったオレは優香のパンツから優香の癒しの香りを鼻から摂取。 次に湯船に浸かって溶け込んだ優香成分を存分に摂取し、視界が良好になった状態で優香がチョイスして買ってくれたのであろうこの素晴らしき洋服たちの中から目に入ったものを選んでいったのだった。
これで本番……勝てる!!!
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