34 五感☆覚醒!!
三十四話 五感☆覚醒!!
それはある日の夕方。
いつものように皆のいる教室で三好たち3人に罵しらせ、かつ最近気になりだした結城の姿を見れたこともあって気分爽快な状態で家に帰宅していた……そんな時だった。
自宅であるマンションに入ったところでやたらうるさい声が聞こえてくる。
「なんだこの声……借金取りか? よく分からんけど物騒だな」
オレは心の中で舌打ちをしながら自宅へと向かった。
◆◇◆◇
「ーー……は?」
え、まさかのあの声、ウチからだったの?
オレは自宅玄関前で姉の優香が大人2人と言い争っている現場を発見……と言ってもうるさいのは大人たちの方なのだが。 「ちょっと近所に迷惑なので静かにしてください」と優香の焦ったような声が通路に響き渡る。
ていうか優香に詰め寄ってる大人の男女……あいつら誰だ?
見た感じからして夫婦なのだろうが。
「いいじゃない! それはあなたが『はい』と言えば済む話なの!」
「そうだ。 君は私たち言った通りに答えて、あとは大人に任せれば良いんだ」
それにしてもあいつら、よくドラマとかに出てきそうな典型的な頭の悪い大人って感じだな。
声を荒げたり高圧的にいけばなんでも自分たちの思い通りに進むと思っている勘違いクズ……親が育て方を間違った良い例だよな。
とりあえずどんなアホ面してるのか見てみることにしよう……そう思いながらクズたちに近づいていくオレだったのだが……
あれ、こいつらどこかで見たことあるような……。
「あ」
近づいてみてようやく分かる。 こいつらあれだ、杉浦の親じゃないか。
それにしてもなんでここに……ウチには来るなって釘刺しておいたのにノコノコ来やがって……!!!
オレは一気に不機嫌になりながら3人のもとへと歩み寄る。
すると真っ先にオレに気づいた優香がすぐにオレの腕を掴み、「ちょっとお家の中入ってて」と震える手で扉の中へと引き入れた。
「おい、帰ってきちゃったぞ。 どうするんだ」
オレの視線に気づいたのか杉浦夫が杉浦妻に話しかける。
「もうこうするしかないの! どうせ約束したって言ったって相手は子供よ! ここで押し通すしかもう手がないの!」
杉浦妻はそう発狂しながら夫を睨みつけると、今度はオレたちへとその狂った視線を向けてきた。
「ちょっと君!!!」
あー、ウゼー。
もちろんオレはババァなんぞ怖くはないのでババァのことは一旦無視。
ババァに背を向け優香の腕を引っ張ると、どうしてこいつらがここにいるのかを尋ねることにした。
「えっと……お姉ちゃんもよく分からないんだけどね。 この杉浦さん宅の息子さんがダイキと喧嘩して、一方的に悪者にされて出席停止中だから、ウチからその処分を取り消すように掛け合って欲しいって」
「へぇーーー」
なるほどね、それでそんな適当な話をでっち上げて優香を半分脅しに来た……と。
許せねぇな。
「お姉ちゃん。 あんな人たちの話、信じるだけ無駄だよー。 早く中入ろうよー」
オレは全く怯える仕草も見せず、まるでそこにババァたちがいないものとして優香に話しかける。
「え……でも」
「いいからさ、ほら」
オレは先に優香を家の奥へ。 その後振り返りざまに杉浦夫妻を睨みつける。
「な、なによ! アンタが許さないからこういうことになったんでしょうが!!!」
ババァ……杉浦妻が半端ない怒声をオレに浴びせてくる。
ほんと知性のない奴らはすぐに叫んで……ああ面倒くせえ。 ここは動物園か?
オレは「はぁ……」とあきらかにダルそうなため息をつくと手をポケットの中へ。
そこからスマートフォンを取り出してヒラヒラを見せつけながらこう言ってやることにした。
「はい、その声頂きましたー」
「「ーー……!!!」」
家に突撃してくるなと念を押した結果がこれなんだ。
このバカどもも今のオレの言葉が何を意味しているのかは大方察しがついたのだろう。 さっきの威勢は何処へやら……いきなり無口になったためオレは「そういうことなんで」と一言添えて玄関を閉めた。
「ーー……ダイキ、大丈夫?」
優香が不安そうにオレの頭を優しく撫でてくる。
「大丈夫だよー。 今度は扉の向こうで2人で言い争ってるみたい」
「ええ」
「いいじゃん好きにやらせとけば。 そのうち誰かが通報かなんかすると思うし。 それよりお腹空いたぁー」
オレはお腹を抱えながらリビングへと向かった。
◆◇◆◇
「そういやお姉ちゃんあの時びっくりしたよ。 ダイキ、2人の音声録音してたの?」
夕食時。 優香が感心した様子でオレに話を振ってくる。
「え、なにが?」
「ほら、その声頂きましたーって言ってたじゃん。 ダイキ、よくそんな機転が利く行動できたよね」
「あー、あれウソだよ」
「え、ウソ?」
「うん」
オレは保存データがないことを「ほら」と優香に見せながら答える。
「え、ほんとだ。 じゃああれほんとにハッタリだったんだ」
「そうだよ。 大人ってそういう系に弱いでしょ? ドラマとかでやってるの見たことあるから真似してみただけだよ」
「え、なにダイキいつの間にそんな頼もしくなったの? お姉ちゃんびっくりだよ」
ーー……!!!
た、頼もしい……だと!?
そんなプラスな言葉、ゲーム以外のリアル人生で初めて言われた気がするぞ!!
生まれて初めての褒め言葉……しかもそれをJKに言われたもんだからオレの感情は大爆発。
目には自然と涙が溢れ、オレの頬を静かに伝い落ちる。
「え、あれ、どうしたのダイキ。 泣いてるの?」
「あ、えっと、これは……!」
いやいや、褒められたのが嬉しすぎて泣けてきたなんて恥ずかしすぎて口が裂けても言えねえよ。
ここは何とかうまくごまかさないと……
そう考えながら軽く俯きかけたその時。 優香が突然立ち上がるとオレの後ろに回り、静かに抱きしめてきた。
「ーー……!!?? お、お姉ちゃん!!??」
オレはあまりにも突然のことに動揺。
しかしそれとは裏腹にオレの触覚と嗅覚が優香の感触と香りを存分に楽しみだす。
あぁ柔らかい、いい匂い、好き。 JK好き。
「ごめんね、怖いこと思い出させちゃったね。 もうこの話は終わりにするね」
あーなるほどな。
優香はオレがあのババァどもとのやりとりを思い出して泣きだしたと思ってるのか。
なんて優しい女の子……優香が耳元で「ごめんね」と囁きながら謝ってくる。
ピャアアアアアアアーー!!!!
これには触覚・嗅覚に続き、聴覚が覚醒。
すると『うるぁああああ!! オレなんかそんな素敵女子の手作りご飯味わってるもんねーー!!!!』と味覚が登場。 自分が優香を一番感じてやるんだと言わんばかりにオレの味覚がグンと覚醒をする。
あぁ……お米を口にするだけでもかなり極上の味だぜ。
優香の柔らかさ・香り・囁きがトッピングになっているのだろうな。 本来お米はデンプンの効果で甘く感じるというが、今のオレはJK優香の効果でめちゃくちゃ甘いぜ。
『おいおいおい!! ちょっと待て、オレはどうなる!』
ーー……ん、この声は誰だ?
『オレは視覚だ!!!』
おお、視覚。 いつもお世話になってるぞ。
五感の残り……視覚が『オレを忘れるな!!』と満を辞して降臨。
しかしいつも優香のパンツやら何やらを見ているからなのだろうか。 他の感覚たちからの反応はイマイチな様子。
『いいだろお前はいつも見てんだから』
『『『同意』』』
『そ、そんなぁ……!!』
おいおい同じオレの体の感覚の一部なんだから喧嘩はしないでくれよ?
オレは心の中で落ち込みふてくされ始めた視覚をフォロー。 『良いじゃないか。 優香のいろんな姿を映してくれるお前のおかげで皆優香を感じれてるんだから』と声を掛けてみたのだが……
「ーー……ん??」
どうしてだろう、視界が揺らぐ。
「どうしたのダイキ」
「いや、なんかクラってきただけ。 大丈夫だよ」
「心配だなぁ。 今日はお姉ちゃんと一緒にお風呂入って早く寝よっか」
「ーー……え?」
『え!!??』
オレと視覚が同時に声を漏らす。
ーー……っていうか視覚。 元気になるの早すぎだろ。
『いいじゃねーか!! 裸見れるぜ裸!!』
そ、それはそうだけど。
『『『『いいなああああああああ!!!!!』』』』
さっきまでいじけていた視覚も元気が出てきたのだろうな……いつもよりクリアに見えてきたぜ。
こうして迎えたJKとのお風呂タイム。 視覚までもが覚醒したことにより、五感全てが研ぎ澄まされたオレは優香との入浴時間を存分に味わったのだった。
視覚『眼福でした』
嗅覚『いい香りでした』
触覚『同じ水を触れていたのだと思うと興奮しました』
聴覚『JKの入浴音……幸せはここにありました』
味覚『JK成分を含んだお湯、美味しかったです』
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