337 まさかの効果!!
三百三十七話 まさかの効果!!
エマの秘策・ノーパン生活。
それはエマの前世・小山楓が無駄なことを考えないようにする時に使っていた偶然生まれた産物で、これを今三好と小畑が実践しているのだが……その効果は目で見ても分かるほどに効果を発揮していた。
それは授業と授業の合間の休み時間。
次の授業は音楽で、音楽室へと移動していると鬼ごっこに熱中していた他クラスの男子が小畑の肩に接触。 小畑が「うわわっ」と声を上げながら少しよろける。
「いった!!」
「あーごめんごめん!!!」
他クラスの男子は手を小さくあげて軽めに謝罪。
いつもならここからドSの女王の降臨イベントが始まるわけなのだがーー……
「ーー……ったく、気をつけてよもう」
小畑は若干顔を赤らめながらスカートの上を控えめに押さえる。
ーー……マジか。
これには近くにいた三好と多田も驚きを隠せない様子で口をパクパクさせながら小畑を凝視。
「今の見た? 麻由香」 「見た見た。 ウチ、夢でも見てるのかな」と小声で話し始めた。
「ん? どうしたの佳奈、麻由香」
「え、いやー、あはははは。 美波が珍しくキレないなーって」
「ウチ、美波はすぐに男子追いかけてやり返すって思ってたもん」
そんな2人の言葉を聞いた小畑は控えめに視線を外す。
「だって仕方ないじゃん。 そんなことしてもし捲れたりしたら……」
「え?」
「なんて美波」
「んーーー!! なんでもない!!!」
ーー……あ、やべ。
また隙間から強化状態寸前の何かが出てきそうだったぜ。
早めに妄想妄想、オバケオバケっと……。
その後も小畑は少し気の触ることがあってもノーパンのためなのかスルー。
比較的穏やかな時間が流れていたのだった。
『ーー……クヒヒ』
ん? 気のせい……か。
◆◇◆◇
そんなこんなで放課後。
エマは小畑と三好……そして今日は塾のない多田の3人を引き連れて昨日の公園へ。
オレは今日は来ないで大丈夫とのことだったので1人寂しく教室を出て階段を降りていると、後ろから「あーもう、ウザいよ綾小路!!」という声が聞こえてくる。
振り返ってみると……まぁこんな会話をするのは限られてるから皆も分かるよな、西園寺だ。
西園寺は後ろから抱きついてきている綾小路を剥がすのに必死のようで目の前にいるオレにまったく気づいていない。
「いーじゃん西園寺ー!! これ受け取ってよーー!!」
「いらないって言ってるでしょ」
あー、そういや最近ホワイトデーだったんだよな。
まぁオレは先に早めのお返しをしてたから何もせずに済んでいるのだが……
「なんで!? これバレンタインのお返しだよ!? アタシ手作りのクッキーだよ!? なんで受け取ってくれないのー!?」
「それが怖いって言ってるの」
「なんでなんで!?」
「だって何が入ってるか分からないもん」
「ええーー!! 西園寺ひどーーい!! 普通にクッキーに決まってるじゃんーー!!」
綾小路が手作りクッキーの入っているらしきラッピングされた箱を西園寺の頬にグイグイと押し付けている。
「ちょっともう……本当にウザいよ?」
「そんなわけないじゃんー! アタシのこと好きだからバレンタインにチョコくれたんでしょ!? だからこれは、愛のお返し……きゃああああああ!!!!」
自分で言ってみて相当恥ずかしかったのだろう。
綾小路は西園寺から言われたわけでもないのにセルフで照れてセルフで顔を赤く染めている。
西園寺も大変だな。
西園寺は「はぁ……」と深いため息をつくと、綾小路の押しに負けたのか「分かった、受け取ってあげるからさっさと離れてよ暑苦しい」と綾小路の腕からやっとのことですり抜ける。
「やったあああああ!! 西園寺が受け取ってくれた……てことはもうこれはカップル成立!? きゃああああああああっ!!!」
後ろで盛り上がっている綾小路を西園寺は無視。
受け取った箱をランドセルに入れながら視線を階段の下へと向けたところでちょうどオレと目があった。
「ーー……あ、福田くん!」
「お、おう西園寺」
西園寺が軽快なリズムで階段を降りてオレの目の前でピタッと止まる。
「福田くん、今から帰るの?」
「うん、まぁな」
「よかったら途中まで一緒に帰らない?」
「いいけど途中って校門までだろ。 オレは左で西園寺右だろ」
「いいの。 今日は遠回りして帰りたい気分だったから」
こうしてオレは途中まで西園寺と下校することに。
下校途中、西園寺はどこまで回り道する予定なのだろうかと考えていると、フと西園寺の視線がオレの下半身辺りに向けられていることに気づく。
「ん、どうした西園寺」
「あ、ううん、なんでもないの。 気のせいかもしれないんだけど……さっきから福田くんのそこ、歩くたびにプルプル揺れてるように見えたから。 なんだろうなって」
ギクゥ!!!
「い、いや、偶然そう見えただけなんじゃないか?」
「そうかな」
「うん。 疲れてんだよ西園寺」
「そうなのかな、でも確かにちょっと疲れてるかも」
西園寺は「んんーーーっ!」と声を出しながら胸を張って深呼吸。
その後「はぁ……そう言われてみれば身体がちょっと重いかも」と力なく笑った。
「あれか? さっきも綾小路に言い寄られてたけど……あれも原因の1つなのか?」
「そうだね。 なんかバレンタインでチョコ渡してからよりスキンシップが激しくなってきたって言うか、心の距離を一気に縮めてこられたって言うか……」
西園寺は再び大きくため息。
「メールだってほぼ毎日定期的に送られてくるんだよ、ほら」と、内容こそ見せてはくれなかったものの受信通知欄を表示させた画面をオレに向けてくる。
「うわ……ほぼほぼ【受信・綾小路】じゃん」
「そうなの。 たまに夜中とかに送られてくるから流石にちょっと迷惑でさ。 それで最近ちょっと寝不足なんだよね」
小五にしてもうそんな悩みを抱えているなんて。
西園寺の眠たそうな顔を見たオレの心に母性が宿る。
「んー。 じゃあ西園寺、もうちょっと行った先に公園あるから、そこでちょっと休憩するか」
「え、いいの!?」
「いいぞー。 それかもうちょい歩いたらオレの家だし、家でゆっくりするのもありだけど」
そう提案するやいなや西園寺が目を光らせながらオレに顔を近づけてくる。
「うわわ、どうしたいきなり」
「福田くんの家がいい!!」
「そ、そうか。 じゃあそうするか。 だいぶ暖かくなってきたけどまだやっぱりちょっと寒いしな」
「うん!! やった、ありがとう!!!」
こうして西園寺はオレの提案ではあるが、急遽ウチに来ることに。
オレは優香に西園寺が遊びに来ることになったことをメールで伝え、西園寺とともに家に帰ったのだった。
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