335 エマの秘策!!
三百三十五話 エマの秘策!!
エマから聞いた……先日、小山楓時代の事務所マネージャーが訪ねてきたって話。
やっとそのことについて聞くことができるぜ。
「ダイキはめちゃめちゃ漫画やアニメみたいな展開を望んでると思うんだけど、全然そんなのじゃないわ。 ただユリ……ユウリのことでお礼を言いにきてくれただけなの」
エルシィちゃんが部屋着に着替えに行っている少しの間にエマはその時のことをオレに教える。
「ーー……え、それだけ?」
「そうよ。 『エマさんと出会ってなければ、ユウリはアイドルにまだ復帰してなかったと思う』って言ってたわ」
「まぁそうだろうな。 お前と会って色々吹っ切れたような感じあったし」
「そうね。 でも本当それだけ。 それ以上は時間も遅かったこともあるし、何も話さなかったしすぐに帰っていったわ」
オレが「なーんだ、じゃあエマがそのマネージャーと一緒に芸能に復帰する……とかそんなんじゃないのか」と感想を漏らすと、エマは「当たり前でしょ正体はバレてないんだから。 それに今朝も言ったでしょ、別に後悔はしてないって」と小さくため息をつく。
なるほどな。
まぁおかげでオレも事の真相を聞けてスッキリしたわけだし、もうここにいる必要もない。
「じゃあ帰るわ、話してくれてサンキュ」
オレが立ち上がりながらエマにそう声をかけると、エマが「あ、ちょっと待ってダイキ」と小さく手招き。
「ん、なんだ?」
「あのね、明日の放課後、公園で簡単な振り付け練習をしようって話になったんだけど、ダイキも来る?」
「え!! いいのか!?!?」
「当たり前でしょう、アンタはオーディションに参加はしないとしても、それを支えるメンバーの1人なんだから」
「おお……おおおおおおお!!!!!」
その後軽く話を聞いたところ、オレは一連の練習を見て思ったことを最後に伝える役目とのこと。
しかしあれだな、エマが指揮を執るってことは経験者の指導が入るのと同じこと……どんな練習になるのか楽しみで仕方ないぜ!!!!
「でもエマ、エルシィちゃんはどうするんだ? その時間ずっとお留守番か?」
「そんなわけないでしょ。 エルシィは桜子にお願いしたから問題ないわ」
こうして翌日から始まる簡単な練習……オレは心の底からワクワクが止まらなかったのだがーー……
◆◇◆◇
翌日の放課後。
エマが前に立ち小畑と三好にステップの指導をしていると、「はいストップ!」といきなり練習を止める。
「え、何エマ」
「私、ステップ間違えてた?」
エマの言葉に驚いた小畑と三好が同時にエマに視線を向ける。
「んー、そういうわけじゃないんだけど、2人とも顔が固いのよ」
エマは小畑に「特にミナミ!」と、ビシッと指を差す。
「わ、私!?」
「そう。 ミナミはなんていうか……ちょっと躓きそうになった時にイラって表情してるのよね」
「そ、それは仕方ないじゃん。 失敗した自分にムカつくんだし」
「それがダメなの。 アイドルだって人間よ? 失敗だってもちろんする。 必要なのは失敗してもそれを帳消しにできるほどのエネルギーがあるかどうかなのよ」
そんなエマの言葉に小畑は「え、エネルギー?」と首をかしげる。
「そう。 例えばずっと笑顔……とか、少しフリを間違えたとしたらアドリブでそれっぽく堂々と見せる……とかね」
「えええ、それは流石に難しいんじゃ……」
「でもニューシーの手毬くんは出来てるわよね」
「う、うん。 それは当たり前だよ、スーパーポジティブアイドルだし……」
「おかしいわね、ミナミもそうなるんでしょ? だったら少しくらいは意識してもいいはずよね」
「ぐぬぬ……」
おおお……流石はJK脳を持つエマだ。
あのドSの女王・小畑を言葉で黙らせてしまうなんて。
オレが静かにその様子を見つめていると、それに気づいた小畑がこっちをキッと睨みつけてくる。
なんか嫌な予感しかしないのだが……
「福田!」
「あ、はい」
「なんかいい方法ないの!?」
なんだ急に。
「えっと……なんの?」
「失敗しても嫌な顔しないような方法!」
「ええええ……そんな無茶なぁ」
やっぱり来たよこの唐突の女王様の無茶振りパターン。
てかなんでエマっていうプロがいるのにわざわざオレに聞いてくるんだ?
もはや当たれる相手がオレしかいないから攻撃してきてるようにしか感じないんだが。
まぁ……女王様のご命令だ。
とりあえず考えてみるか。
オレが「えー……ちょっと待ってね。 考えるから」と何かいい方法がないか目を瞑り考えだすと、エマが「ダイキ、考えなくて大丈夫よ」と声をかけてくる。
「え?」
目を開けエマに視線を向けると、エマは自信たっぷりの表情で小畑を見据えた。
「ミナミ。 少しのことでイラッとしないとっておきの方法、エマ知ってるわ」
「そうなの!?」
小畑が一気にエマの言葉に食いつく。
「えぇ。 おそらくはこれが一番いい方法だと思う」
やはり芸能経験者は違うな。
エマのその堂々とした発言に完全に信頼してしまっているのだろう……小畑だけでなく三好までもがエマの声に集中し耳を傾けている。
「あら、カナも興味あるの?」
「うん。 ラブカツオーディションの時もそうだったんだけど……私、よく途中で振りを間違えそうになったりするからさ。 そこでめっちゃ動揺しちゃうんだよね」
三好の悩みにエマは「あー、なるほどね。 まぁ分からなくもないわ」と優しく頷いて同意。
その後「今から言うエマの秘策は、そういうことにも強くなる最強の方法よ!」とあまりない胸を堂々と張った。
「えー! そうなの!? だったら私も早く聞きたい!」
「ちょっと待って佳奈、私が先に聞くんだから!」
完全にエマの虜だな。
そんな2人の様子を見たエマは満足そうに微笑みながら「まぁ落ち着きなさいよ」と声をかける。
「教えてあげてもいいけど、これは実行しないと意味がないわ。 聞いただけでやらないって言うのが一番ダメなの。 だからエマが今から何を言ったとしても、その方法を実行するって約束できる?」
一体どんな秘策なんだ?
あれだけのことを言うってことは、かなり辛い方法……地獄の特訓みたいなものなのだろうか。
オレならちょっと考えるなと思っていると、そこは流石の上昇志向の2人……あまり考える様子もなく同時に「うん!!」と答えた。
「わかったわ。 2人とも本気ってことね」
エマはウンウンと頷いて小さく息を吐くと、改めて2人をゆっくりと交互に見る。
「いい? 絶対にものにして頂戴」
「「うん」」
「それじゃあ言うわね、些細なことには目もくれなくなる……そんなメンタルを持つ方法、それはーー……」
ゴクリ。
小畑と三好は真剣な表情でエマに集中。
オレも自分がやるわけではないのにその言葉に耳を傾ける。
そしてエマは口角を上げてニヤリと笑うと、ゆっくり口を開いてその秘策を口にしたのだった。
「パンツを履かないで生活することよ!!!!」
「「「ええええええええええええええ!?!?!?!?」」」
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