334 純粋無垢の強さ!!【挿絵有】
三百三十四話 純粋無垢の強さ!!
オレはエマ家の玄関前で腕を組んで「ウムム」と唸る。
ーー……エマから届いたメールに目を通しながら。
【受信・エマ】ちょっと帰るの遅れるわ。 家に上がってくれてていいから、エルシィの遊び相手にでもなってあげてて頂戴。
今朝エマから聞いた……少し前にエマの前世・小山楓が所属していた事務所のマネージャーがエマ家に訪ねてきたという話。
放課後教えてくれるということだったのに何故話し手のエマが遅れているのだろうか。
そういやホームルームが終わってすぐにドSの女王・小畑とどこかへ行ってたけど、三好や多田を呼んでなかったことからおそらくオーディションの話ではないだろう。
他の理由……もっと別のーー……
「ーー……ダメだ、まったく見当がつかん」
考えても答えが見つからないと悟ったオレは脳の回転を停止。
エマからのメールに書いてある通り、先に家に上がらせてもらうことにした。
ピンポーン
インターホンを鳴らすと「あーーい」と中からエルシィちゃんの元気な声。
パタパタと可愛い足音を奏でながら鍵を解錠……扉の隙間からヒョコッと顔を覗かせ見上げてきた。
「あ、だいき!! どしたぁー!?」
「お……オゥフ」
相変わらずの可愛さ。
その純粋無垢な瞳を見ただけで思わずオタクな声が口から漏れる。
「んー? だいき、『おふぅー』って、なんなー?」
「え、ああああ! なんでもない、なんでもないよ!」
「そーなー?」
「うん! それよりオレ、エマおねーたんとお話があるんだけど、エマおねーたんが帰ってくるまで家で待っててって言われたからお邪魔していいかな?」
オレはエマからのメールを見せながらエルシィちゃんに尋ねる。
「あー! しゅまほー!! いーなぁー! エッチーも、ほしいなぁー」
「うんそうだね。 それよりエマからのメールを……」
「だいき、じゃあエマおねーたんくるまで、エッチーと、あしょぼー!!」
エルシィちゃんが元気に飛び跳ねながらオレの手を引っ張り家の中へ。
オレは「ありがと、じゃあおじゃましまーす」と普通のトーンで答えながらエルシィちゃんの後ろをついて行ったのだった。
ぎゃあああああああああ!!!!
バチ可愛すぎるよ!! 天使のラブアローどんだけ撃ってくるんだよエルシィちゃんーーーーー!!!!
そしてこの時のオレはまだ知らない……この約30分後に今以上のラブアローを受けることになるなんて。
◆◇◆◇
それはエマ宅におじゃましてエルシィちゃんと録画していたアニメ【じゃんじゃかハムロック】を見ていた時のことだった。
『ロックちゃーーん!!! 我ハムロック、時代は和風ロックってことに気づいたんじゃああああ!! だから巫女服を調達して欲しいんじゃああーーーー!!!!』
謎のセリフで絶叫しているハムロックのシーンを見たエルシィちゃんが「ねぇ、だいきー?」と隣に座っていたオレの服の袖を引っ張る。
「ん、どうしたの?」
「あのね、みこふくって、なんなー?」
エルシィちゃんの頭上には大きなはてなマーク。
そうか……海外の女の子にはあんまり馴染みないのか。
オレは一瞬どう説明しようか迷ったのだがすぐに名案が思い浮かぶ。
「あーほら、あれだよ。 エルシィちゃん、前にハロウィンパーティーしたの覚えてる?」
「んー! ちたー! パーチー、たのしかったねぇー!」
あぁその笑顔……世界遺産にしたい。
「だね。 それでさ、エルシィちゃんはその時にエマおねーたんが着てた服覚えてる?」
「うんっ! んとね、アカと、シロ!」
「そうそうそれそれ! それが巫女服って言うんだよ」
オレが「よく覚えてたね」と褒めるとエルシィちゃんは満面の笑みで頭をこちらに向けてくる。
相変わらず可愛いすぎるぜと要望通り頭を撫でていると、突然エルシィちゃんが「そだぁー!!」と言いながら立ち上がった。
「な、なにエルシィちゃん」
「エッチー、あれきるー!!」
「ええええ、急だねエルシィちゃん。 でもあの服エマおねーたんのだし……どこ置いてるか知ってるの?」
「うん! エッチー、エマおねーたん、どこなおしてるか、しってるのよー?」
そう言うとエルシィちゃんはニコニコしながら「まってて」とオレに伝えてエマの部屋へ。
しばらく経っても戻ってこないので心配になり見に行こうかと思ったタイミングでエマからのメールが届いた。
【受信・エマ】もうすぐ着くわ。 ついでにお菓子買って帰ってるから一緒に食べましょ。
なるほど、じゃあここはオレはジッとしてる方が安全だよな。
変にエルシィちゃんの様子を見に行って誤解されても困ったものだし。
オレはこの場を動かないことを決意。
早くエマが帰ってこないかなーとスマートフォンの画面をジッと眺めだした……その時だった。
「んー? だいき、エッチー、みこふく、おきがえむじゅかしー」
ちょうどいいタイミングで戻って来たと思いながらエルシィちゃんの方に視線を移したオレ。
しかしその瞳に映る光景にオレは声を詰まらせる。
「え……エルシィ……ちゃん」
なんと言うことだろうか。
そこには巫女服を着た……いや、着ようとして意味が分からなかったのであろうエルシィちゃんの姿。
なんかもう色々とブカブカだし、はだけたりしていたりで目のやり場が追いつかない。
「だいき、これ、どーしたら、きれるー?」
無防備状態のエルシィちゃんが純粋無垢な瞳をオレに向けながら近づいてくる。
「ま、待ってエルシィちゃん!!!」
「んー?」
「もうすぐエマが帰ってくるから!! その格好だとオレ……ボコボコにされちまうよ!!!」
「ボコー? なんー?」
流石は心の真っ白な小学1年生。
オレの焦りなど一切理解していないエルシィちゃんはオレの目の前にまで到着すると、上着の襟元部分を両手でパタパタと仰ぎながら「ボタン、ないのよー」と唇を尖らせる。
「あー、そうだね。 巫女服はボタンないんだよ」
「そーなー? じゃあ、どうやって、とめりゅー?」
「んーーー!! それは……それはね……」
「エッチー、わかんなー。 だから、だいきに、やって、もらうのよー?」
エルシィちゃんはオレの手首を握るとゆっくりと上着の襟元へと誘導。
そしてオレの手が上着に触れたとほぼ同時……ガチャリとリビングの扉が開かれたのだった。
はい、オワターー。
「ーー……え、なにやってんのよダイキ」
買い物袋を落としたエマが冷たい視線をオレに向けながら尋ねてくる。
「うん、まぁそうなるよな。 でもちょっと待ってくれ、これはオレは悪くない。 エルシィちゃんが巫女服を着たいって言って……だから!!!」
オレが必死に言い訳を口にするも、それよりも早くエマが床を強く蹴り上げオレのもとへと超ダッシュ。
エルシィちゃんをオレから離れさせた後に強烈な蹴りを股間部分に炸裂させてきたのだった。
疲れているのだろうか……詳しい理由は分からないが、オレの脳内でサクランボが全力で蹴り上げられている映像が浮かび上がる。
「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」
オレは両手で蹴られた箇所を押さえながら悶絶。
しかしその後エルシィちゃんの証言により、なんとかオレの無実は証明されたのであった。
「ったく、紛らわしいのよアンタは!!」
「オレ何もしてないのに!! 巫女服着て欲しいとも言ってないのに!!」
「でも蹴った時固いの当たってたわよ!! なんでよ!!」
「それは仕方ねーだろ人間だもの!!!」
オレが半泣きで訴えていると未だブカブカ状態のエルシィちゃんがエマの手を引っ張る。
「ん? どうしたのエルシィ」
「エマおねーたん、だいき、かたかったんー? どこー?」
「!!!!!」
純粋無垢……おそるべし!!!!
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今回の挿絵、神の力が働いていない高画質VERはご所望の方は、作者Twitter( @mikosisaimaria )にて声をかけてもらえれば 笑
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