329 スカウトォオオオ!!!
三百二十九話 スカウトォオオオ!!!!
さぁ女王様の命令だ。
これは何としてでも遂行しなければならない。
オレは小畑の出場するメイプルドリーマーの妹グループオーディションに向けて、多田に変わる3人目のチームメイトを探す旅に出かけたのだった。
とりあえずまずは……こいつだろ。
◆◇◆◇
「ご主……福田くーん♪ なんか久しぶりに呼んでくれた気がするねー♪」
水島家近くの公園。
まだ私服に着替えていなかったのか、制服姿のマドンナ水島がロングツインテールをふわふわとなびかせながら手を振って駆け寄ってくる。
はぁ……。 まだ夕方前だから遊んでる子供や保護者も多いんだ。
頼むから変な発言をして焦らせないでくれ。
「おい水島、ちょっとは控えめに話せ。 声がデカいんだよ」
「そぉー? 花ちゃん的にはこれが普通だと思うんだけどなー。 それにしても何の用事?」
水島がキョトンと首を傾げながらオレを見つめる。
「単刀直入に言うとだな、水島……お前、アイドルになりたいと思わないか?」
「ううん、全然」
「だろ? だから出来れば今度開催されるメイプルドリーマーの事務所主催のオーディションに……って、え? 思わないの?」
オレはパチパチと瞬きをしながら水島に尋ねる。
「うん。 まったく」
あれ……あれれ、これは想定外だな。
「あのさ水島、お前チヤホヤされるの好きなんだろ? アイドルになって有名になったら……チヤホヤされ放題なんだぞ?」
確か水島は以前そんなことを言ってたような気がする。(あれはいつだったかな……第175話『完成!!!』辺りだったかな?)
なのに何故……
そんな疑問を水島にぶつけてみたオレだったのだが、返ってきたのは水島らしい……納得せざるを得ない答え。
「だって花ちゃん努力するの嫌いだもーん。 そりゃあアイドルになったらチヤホヤされて気持ちいいと思うよ? でもさ、毎日ダンスやお歌のレッスンするんでしょ? 花ちゃんムリー」
ガーーーーーーン!!!!
そうだったああああ!!!!
こいつ……楽してチヤホヤされたい&あわよくば学年のマドンナの地位を阻止できたらいいなって考えでキャラ変したんだったあああああ!!!
オレは早々に水島との話を終わらせ次の候補者に連絡をしたのだった。
◆◇◆◇
その日の夜。
送っておいたメールに返信が届く。
オレが次に目をつけた相手。 それはもちろん……
【受信・西園寺希】ごめんね遅くなって。 今日は柔道の習い事の日だったから遅くなっちゃった。
そう、西園寺だ。
西園寺なら容姿端麗・頭脳明晰! そして理由はなんであれ柔道をするくらいに充分な体力もある!
過去にドンをやってただけあって肝もすわってるし、少し前まで自分のギリギリの自撮りをネットに公開していたんだ……承認欲求もまぁまぁに高いと言っても差し支えない。
ふわふわ系アイドルの水島がムリなら王道クールな西園寺しかないよな!!
オレはすぐに西園寺にオーディションの件を伝えることにした。
【送信・西園寺希】お疲れ様。 なぁ西園寺、オレのクラスの小畑が今度開催されるアイドルオーディションに一緒に出場するメンバーを探してるんだけど、西園寺ってアイドルとか興味ない?
おそらくは帰ってきてからご飯かお風呂に入ってたんだろうな。
それから30分ほどしてようやく返事が返ってくる。
【受信・西園寺希】うーーん、興味ないかって言われたら興味はあるけど……
よしキタっ!!
【送信・西園寺希】マジ!? だったら西園寺、出てみないか?
【受信・西園寺希】ただ……もし選ばれちゃったとしてね、それでお仕事の都合で転校したり、学校行ける日が少なくなったら嫌だなって。
【送信・西園寺希】えええ、有名になれるんだぞ?
【受信・西園寺希】うん。 前までの私だったら乗り気だったかもね。 でも今の私は別にみんなに見て欲しいってわけじゃないから。
【送信・西園寺希】ンンン? そうなのか??
これも年頃の女の子によく見られる……あまり人にジロジロと見られたくないと言った現象なのだろうか。
オレがそんな理解に苦しんでいると、西園寺からの返信が届く。
【受信・西園寺希】逆に福田くんは、私……アイドルに向いてると思う?
「なるほど、そう来たか」
オレはポツリと呟く。
これは自分に自信がなくなってるのかもしれないな。
だったらその自信……オレが本音をぶつけて教えてやろう!!!
オレは熱量を伝えるためにメールを中断して西園寺に通話。
するとものの数秒でスピーカーから西園寺の『もしもし?』が聞こえてきた。
「すまんな西園寺、いきなり電話に切り替えちゃって」
『ううん、大丈夫だよ。 むしろ私的にも嬉しいかな』
あー、そうか。
やっぱり西園寺も女の子とはいえメールをいちいち打つのは面倒だもんな。
これは電話に切り替えて正解だったぜ。
「あのな、さっき西園寺、自分がアイドルに向いてると思うか聞いてきただろ?」
『うん』
「だからそれに答えるためにこうして電話したってわけだ」
『えええ、そうなの!?』
西園寺の驚きに満ちた声が聞こえてくる。
しかし西園寺、驚くのはまだ早いぞ。
今からオレが褒めに褒めまくってやるんだからな!!
オレは「じゃあ言うぞ」と宣言し、西園寺の『う、うん……』を合図にどれだけ西園寺がアイドルに向いているのかを話すことにした。
「とりあえず第一前提として、西園寺は美人と可愛いを兼ね揃えてるんだ」
『ひゃ、ひゃわああああ!! ……いきなりだね』
「あぁ。 それでいて前にも言ったけど目元のホクロがエロいから、それだけで美人・可愛い・エロいを制したことになる」
オレの言葉に西園寺は無言。
引いているのか感動してるのかは分からないが、このまま行くぜ!!!
「でだ、西園寺って中規模ではあったけど女子グループのリーダーをしてただろ? だからグループの統率も上手そうだし度胸もある。 なのにたまに見せる女の子モードに入った時のギャップも堪らん」
『ギャ……ギャップ?』
「あぁ、大事だぞギャップ。 男はみんな……もちろんオレも例外なしにギャップは大好きだ。 それでアイドルといえばバラエティに富んだ個性を持ってないとやっていけないと思うんだけど、西園寺……お前はドMでもある。 もうこれは最強の個性だ」
オレが一通り駆け足で説明し終わると、西園寺が一瞬の沈黙の後にポツリと呟く。
『福田くん……それ、お世辞とかじゃ……ない?』
「は? 当たり前だろ。 オレは『可愛い』や『綺麗』とか、そう言うものに関してはお世辞は言わないって決めてんだよ。 じゃないとその言葉を聞いた第三者にオレの『可愛い』と思うレベルがその程度だって思われるだろ?」
『そっか……。 その、なんて言うか……ありがとう』
フっ……、西園寺のやつ、声が震えてやがるぜ。
これはオレの心からの言葉に感動……やる気が出たとみて間違いないだろう。
なのでオレは西園寺のメンバー入りを確信した上で次の話に進めようとしたのだが……
『ーー……ぐすん』
「ぐすん!?」
突如聞こえてくる西園寺の鼻をすする音。
なんで……なんで泣いちゃってるんだあぁあああああ!?!?!?!?
「お、おい西園寺、大丈夫か!?」
『う、うん。 ごめんね福田くん。 私、嬉しくて』
「そ、そうか嬉しかったのか。 それは良かった。 でだな、オーディションなんだけど、とりあえず一次審査が……」
『うん。 私、出ない』
「ウンウンそうだよな。 そりゃあそうなるのも当然……って、え?」
水島の時と同様、オレは意味がわからず言葉を詰まらせる。
「えっと……西園寺、オレの聞き間違いかな? 今、出ないって言った?」
『うん。 ごめんね。 私、今のままで十分幸せだから……この幸せを手放したくないな』
その後西園寺は『ごめんね、今からお風呂の時間だから切るね』と通話を終了。
オレは「何故だ……」と脳を停止させながら、ただ呆然とベッドの上で瞬きをしていたのだった。
するとそんな中スマートフォンが振動。
どうやらメールの受信通知のようだが……
【受信・小畑さん】見つかった?
ーー……ヤベェ。
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このアイドルオーディション……色んな熱さ・変態さが渦巻く予感がしますねェ!!笑




