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328 拒否権なし!!


 三百二十八話  拒否権なし!!




 あれからメイプルドリーマーの妹ユニットオーディションの詳細を調べていたわけなんだが……

 簡単に挙げてみると次の通りだ。



・参加人数は1人からでの応募も可能だが、第一次審査のみ3名までのチーム出場も可。(ただしチームで良い印象を残したとしても最終的に全員が合格するわけではない)


・オーディションの流れ

 ① ステージ審査(歌やダンス披露) 

 ② ステージ審査合格者のみ、後日某所にて自己PR

 ③ 自己PR通過者のみ事務所サイドが用意した歌・ダンス審査

 ④ 最終審査(メイプルドリーマーとの合同合宿)

 ⑤ メンバー入り内定


・合格者予定人数 若干名




 ーー……なるほどな。


 確かに小畑が言ってた通り、最初のみだがラブカツオーディションの時とよく似ている。

 でもどうして小畑はわざわざライバルを増やすようなことをするのだろうか……そう思ったオレはつい心の声が口から漏れる。

 


「チームは第一次審査までって書いてるけど……大丈夫なのか? もしかしたら三好か多田が通過して小畑が落ちる可能性もあるかもしれないのに」



 ていうかそもそも三好や多田が手伝ってくれる確証でもあるのだろうか。

 しかしそんなことを考えたのもその一瞬のみ。 

 ギャルJK星がいることもあってなのか時間は早く過ぎていき、気づけば月曜の朝になっていたのだった。

 

 

 あ、優香はおかげさまで元気に回復したぞ。

 今朝も早くから起きて自分用とギャルJK星用のお弁当をせっせとこしらえていたぜ。



 ◆◇◆◇



 朝・教室内。



「えーー!! やんないのーー!?!?」



 多田と三好……2人の前で目を丸くしながら小畑が驚きの声をあげる。

 あっさりとフラれたようだな。



「なんで!?」



「いや、ウチは無理」

「やんないよもう」



 多田と三好がお互いに目を合わせながら「だよね」と頷きあう。



「えええええ!? ラブカツオーディションとかやったじゃん!」



「うん。 あの時はウチのワガママに付き合ってくれて嬉しかったけど、ウチ……今はあの時よりも塾で忙しいんだよね」



 多田が「今日も終わったら塾だもん……」と深くため息をつく。



「な、なるほどね。 じゃあ麻由香は百歩譲って仕方ないよ! で、なんで佳奈まで!?」



 小畑が三好に詰め寄る。



「いや、もういいかなって」



 小畑は三好の言葉に若干引きながら「ちょっと待って嘘でしょ」と絶望した顔で2人を交互に見比べた。



「うん……ごめんね美波。 ウチも一緒にやりたいんだけど、流石に塾サボったらママがうるさいからさ。 でも応援はするよ?」


「ほら、麻由香は応援してくれるって言ってるじゃん! ね、佳奈、考え直さない!?」



 小畑は三好の隣に回り込むと激しく肩を揺らす。



「勘弁してよ美波ぃー」


「なーんーでー!?」


「だってラブカツの時も結構練習とか大変だったじゃん。 映画にも出れたんだし……もういい思い出とか、美波にとってもオーディションの時に話せるネタ作れたでしょ」



 三好の言葉に多田も「確かに」と小さく頷く。



「それにさ、美波の話を聞く限り年上の人たちも出るんだよね? 今回はガチ中のガチじゃん。 恥かくだけだって」


「分かんないよー? だって私らラブカツオーディションに合格したエリートじゃん!」



 小畑も必死に食らいついてはいるが……



「あと、そもそも時間そんなない」



「ガーーン!!!」



 あーあ、結局上手くいかなかったか。

 どんまい小畑。


 これ以上ドSの女王の必死な姿を見てられなかったオレはあえて視線を反対側の窓の外の景色へと移動。

 頼むからオレに振らないでくれよと願っていたのだがーー……



 ◆◇◆◇



 昼休みの男子トイレ内。

 用を足そうと便器の前に立ったところで後ろから誰かに腕を掴まれる。



「うぉ!?」



 振り向いて確認するとそこにはなんと女王様……小畑美波の姿。

 なんか表情が怖いんですけど……



「あ、あの……小畑さん」


「なに?」


「ここ、男子トイレ」


「知らない。 とりあえずこっち」


「えええええ……」



 オレはそのまま腕を引っ張られながら後方の個室へと連行。

 小畑はガチャリと鍵を閉めてオレの背中をその扉の裏に這わせるように立たせると、退路を断つためなのだろう……ドンッ!と顔の左側に手を当てて股の間には膝を潜り込ませて完全に身動きを取れないようにさせていく。



「お、小畑……さん? あの当たって……」



「協力して」



 小畑が小さく囁きながら顔をズイっと近づけてくる。



「え?」


「協力して欲しいの」


 

 こんなに小畑が真っ向からお願いしてくるのって珍しいな。

 オレはそんな小畑の行動に少々驚きながらもその詳細を聞くことに。



「えっと……何を協力しろと?」


「どうにかして佳奈と麻由香……まぁ麻由香は塾だから仕方ないとして、佳奈だけでも仲間に引き入れたいの」



 おお……声色がガチだ。



「あのさ、その前にちょっと聞いていいかな」


「なに?」


「なんで3人にこだわるわけ? オレもあれからオーディションの詳細見たけどさ、3人で受けたらそれだけライバルが増えるってことでしょ? それって小畑さんにとって不利じゃないの?」



 そう尋ねると小畑は「はぁ?」と目を丸くさせながらオレを見る。



「え、オレおかしいこと言ったかな」


「あのね、確かに1人の方がライバルは少ないかもしれないけど、でも1人よりも3人の方が目立つしインパクトもあるじゃん? 第一次審査はかなりの応募が集まるんだから、1人2人増えたところで何も変わんないの」


「そ、そうなの?」


「そう。 先ずはいかに印象を与えて第二次審査に進める可能性を高めるか……なんだから」



 あー、なるほど。

 それは確かに一理あるかもしれないな。

 じゃあ小畑の考えを理解した上でオレに出来ることといえば……



「じゃあさ、小畑さん」


「ん?」


「とりあえず三好さんは後にして、多田さんの代わりを先に探した方がいいんじゃないかな」


「麻由香の?」



 小畑が「なんで?」と首を傾げる。



「だって小畑さん3人で出場したいんでしょ? だったら三好さんがもし仮に入ってくれたとしても1人足りないじゃん」


「まぁ確かにね」


「例えば水島さんとかどうかな。 水島さんなら学年のマドンナって言われてるし、今はいい意味でアイドルっぽいキャラになってるし向いてるんじゃない?」


「なるほどねー。 まぁ佳奈はほぼ確定で参加させることは出来るから、先にそっち動いた方が良さそうだね」



 小畑が口元に手を当てながらウンウンと頷く。

 ……ていうかちょっと待て、あまりにも自然な流れだったから聞き流しそうになってたけど、小畑今なんて言った?

 


「え、三好さん確定で参加させられるの?」



 オレの少し混乱しながらの質問に小畑は「うん。 そうだよ」と普通に頷く。



「だから福田に協力してって言ったんじゃん」


「え、そうなの? でもオレに出来ることなんて……」


「そこは私に考えがあるからさ。 それ通りにしてくれればいいから」


「小畑さんの?」


「うん。 まずね、私がこう言うから、その後福田がコショコショコショ……」



 小畑は個室で誰もいないと言うのにオレの耳元で作戦を小声で伝えていく。

 それ自体は成功するかは謎の戦法だったのだが……



 分かった!! 分かったからもう離れてくれええええええ!!!!

 トイレする気満々だったから……準備だけはもう出来てるんだよおおおおお!!!


 てか、さっきから何がとは言わないけど先端が女王様の太ももに当たってたのに今はもう押し込まれちゃってて……こんなこと……こんなことされたらあぁあああああ!!!!



 オレはこの日の感触を当分の間は忘れないんだろうな。

 すべすべの太もも……そりゃあテンションやらいろんなものが上へと上がりましたわ。



 ◆◇◆◇



 放課後。 皆が帰り始めたタイミングで小畑が三好の手を引っ張ってオレの席にやってくる。




「ねぇ福田ー。 私のオーディション出場、応援してくれるって言ってたよねー」



 ーー……キタぞ。


 オレは小畑に言われた言葉を思い出していく。

 確か全部「うん」とか「はい」、「いいよ」で答えろ……だったよな。 

 本当にこれで上手くいくんだろうか。



「だよねー、福田ー」


「う、うん」



 オレの返答に小畑が三好に見えない角度でニヤリと微笑む。

 よ、よし。 これでいいんだな?



「それでさ、それに関しての相談とか買わないとダメなものとかあるからさ、今度2人で行こうよ」


「いいよ」



「は、はぁ!?」



 オレの返答になぜか三好が反応。

 ポニーテールを激しく揺らしながら小畑に「ちょっとどう言うこと?」と尋ね始める。



「どう言うことってそう言うことだよー? だよねー福田ぁー。 私に合う服とか小物とか選んでねー」



 この言葉にも答えといた方がいいんだよな。

 オレは一瞬詰まりながらも「うん」と言いかけた……その時だった。



「ーー……行く」



 三好が俯き気味に小さく呟く。



「え、なに佳奈」


「私も一緒についてく」


「えーどうしてー? 佳奈、オーディションも出ないのにー? そんな時間ないって佳奈言ってたし悪いよー」



 おいおいこれは喧嘩になるんじゃないのか?

 そう考えたオレだったのだが、そこにはまさかの結末が待っていたのだった。



「そ、そうカナー? 私そんなこと言ったっけー」



 一体どうしたのだろう。

 記憶でも飛んでしまったのか三好が「そんなの言った記憶ないけどなー」と笑いながらとぼけ始める。



 ーー……え?



 オレがそんな三好を見ながら固まっていると、小畑が先ほどよりも嬉しそうにニヤリと笑った。



「あれー、そうだったっけ佳奈ー。 私の聞き間違いかなー」


「そ、そうダヨ美波ー。 私が断るわけないじゃないー」


「だよねー。 じゃあ佳奈も参加ってことでいいよねー?」


「も、もちろんじゃん!! だからその時は私も……」


「当たり前でしょー。 じゃあ今度一緒に行こうねー」


「う、うん!」


「佳奈ちょろ〜」


「ん? 美波、今なんか言った?」


「ううん別に! じゃあオーディション頑張ろー!!」


「お、おーー!!」



 こうして小畑は「んじゃあ今度買い物付き合いよろしくー」とオレに声をかけると三好を引っ張りながら帰宅。

 その後しばらくして小畑からメールが来たのだが……



【受信・小畑さん】佳奈はゲットしたからあと1人ね! そこは福田、ちゃんと見つけといてよ言い出しっぺなんだから!



 ーー……は?



【送信・小畑さん】え、オレが探すの?


【受信・小畑さん】 『はい』しか言うなって言ったでしょ。




 ゾクゾクゾクゾクゥーーーーー!!!!!!

 この感覚……久しぶりだぜええエエエエエエエ!!!!



 もちろんオレはこう返したさ。




【送信・小畑さん】はい。




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[良い点] ダイキが押し込められる姿を想像すると……むふふですなw 小畑ちゃん……これは、強引な手を! 三好ちゃんの弱いところを! ダイキ、上手いこと利用されるw
[良い点] 三好さん、チョロ可愛(笑) 小畑の最後の一言、脳内変換でドスが効いてきた気がした。
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