326 お誘い!
三百二十六話 お誘い!
結城はちょうどお風呂に入っていたらしく、ギャルJK星から受け取ったコンビニスイーツを高槻さんに渡したオレはホッと胸を撫で下ろしながら階段を上っていたのだが……
「うわっと……!」
「きゃっ!」
ちょうど上の階から降りてきていた黒のパンツスーツの女性とぶつかりそうになる。
「あ、すみませんボーッとしてました」
「こっちこそごめんなさいね。 私も考え事をしてて周りが見えてなかったわ」
顔をはっきりとは見てはいなかったのが有能な女性社員といった印象。
女性はオレに一礼すると、「それにしても私、疲れてるのかしら。 姿形や話し方が違うにしても似すぎてる……」と何やら意味深な言葉をブツブツと呟きながら下りていったのだった。
一体どうしたのだろう。
まったく知らない人だからあまり気に掛けることもないのだが、オレもそうだったなぁ……仕事で極端に疲れると脳がバグって意味のわからないこと呟いたりしちゃうんだよなぁ。
誰かは存じ上げないけど、上の階の住人で急な仕事が入ったのだろうか。
さっきの女性社員さん……頑張ってくれ。
◆◇◆◇
家に戻るとちょうど優香とギャルJK星がテレビを見ていて、特にやることもなかったオレはテレビの音声などまったく耳に入れずに椅子に座って西園寺にメールを送りながら冷たいお茶を飲んでいたのだが……
【送信・西園寺】てか遊園地いつ行く?
よし、送信っと……。
いやー、女の子にメールを送りながら飲むお茶は格段と美味ーー……
「ねぇゆーちゃん、アイドルやらね?」
「ぶふーーーーーーーー!!!!!!」
ギャルJK星の突拍子のない衝撃発言にオレは口内に含んでいた水分を勢いよく噴き出す。
「うわっ、ダイキ!?」
「おーおー、盛大に噴いたねー。 どしたどした」
「ちょ、ちょっと星さん! どしたどした……って、こっちのセリフだよ!」
オレが咳き込みながら尋ねると、ギャルJK星が「なにが?」と頭上にはてなマークを浮かび上がらせる。
「いやいやいや!! さっき星さん言ったじゃん! アイドルやらないかって!!」
「あーね。 あはははは、冗談じゃん冗談」
ギャルJK星が手を軽く叩きながら笑い出す。
「じょ、冗談!?」
オレが盛大に混乱していると見兼ねた優香が「ほらダイキ、テレビ観て」と若干笑いながら流れているテレビ画面を指差した。
えーと、どれどれ……
画面に視線を向けるとバラエティ番組の終盤らへんなのだろうか。
アイドルグループらしき女の子たちが何やら告知のようなものをしている。
ていうかあの子たちって……
『……と言うことで、大事なことなのでもう一度! 私たちメイプルドリーマーはこの度、姉妹グループを作ることとなりました! それに伴いまして全国5箇所の会場で大掛かりなオーディションを開催します!! 私たちと一緒に切磋琢磨して良きライバル関係を築きませんか!? 詳細は事務所ホームページをご覧ください!』
おおお、メイプルドリーマーってあれだ。
エマの前世・小山楓が所属してた事務所のアイドルグループじゃねえか。
そして先ほどの告知をしていた女の子こそ、メイプルドリーマーのリーダーであり小山楓の親友……『松井ゆり』こと『ユウリ』ちゃんだ!
画面上では彼女たちメイプルドリーマーの新曲かつエマへのラブレターソング『運命はEMMAージェンシー』が流れている。
「あー、これ観て星さん言ったんだね」
「そうそう。 応募可能年齢が20歳までだったからさ、アタシら行けんじゃんって思って」
ギャルJK星は画面に視線を戻しながら「でもさ、ぶっちゃけ楽しそうじゃね?」と優香に尋ねる。
「そう? 私は別に……」
「だってアイドルになれたらめっちゃ良い化粧水とか買えるじゃん」
「でもそれだけ大変だと思うよー。 歌覚えたりとかダンス覚えたりとか。 あとあれじゃない? 恋愛とかご法度なんでしょアイドルって」
「あー、恋愛ダメはキツいなー。 やっぱやめっか」
「それが良いよ。 私たちはそんな器じゃないって」
「だべ」
うおおおい、一瞬で消え去ったな芸能界への野望。
オレが内心ツッコミを入れているとスマートフォンが震えだす。
この振動の長さ的にメールではなく電話のようだ。
西園寺からだろうと予想しながら確認すると、そこにはドSの女王・小畑からの着信通知。
あーー……多分、てかほぼほぼアレじゃん。
大体の予想は出来るものの電話に出なかった場合は後が怖い。
オレは小さくため息をつきながらリビングを後に。 自室に戻り扉を閉めてやっと通話ボタンをタップしたのだった。
『もしもし福田!? 今やってるテレビ観た!? メイプルドリーマーの!!』
はい、予想的中。
「あ、うん。 そこだけしか観てないけど……どうしたの?」
『私、あのオーディション受けることにした!』
「な、なるほど」
『それでさ、ホームページ確認したら、オーディション形式が前のラブカツの時にほとんど似てたんだよね! だからまたほら、あのお兄さん呼んで手伝ってよ!』
「え、それって工藤……」
『んじゃ佳奈や麻由香にも連絡しなきゃだからよろしく! また連絡するわ!』
ッツー、ツー……
またオレの意見聞かずに切りやがったぁああああああ!!!!
その後来たメールは小畑や三好たちからではなく先ほど送信していた西園寺から。
ちなみに返事がこうだったんだけど……
【受信・西園寺】誘ってくれたのは嬉しいし私も早く行きたいけど、もうちょっとでテストだよ? 点数勝負も忘れないでね。
ーー……そうだった。
今度のテスト。 負けたら遊園地に行った際、勝者のいうことを聞かなければならない勝負をしてたんだった。
待てよ?
てことはオレは小畑たちの手伝いをしつつテスト勉強もしなければならないということなのだろうか。
ハ……ハードすぎん?
あとアレだ。
小畑よ、今三好はスマートフォン水没してて使えないから連絡しても繋がらないぞ?
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