323 あの現象!【挿絵有】
三百二十三話 あの現象!!
結構な長期の休み明け。
「それじゃあねダイキ。 久々の学校だからって居眠りするんじゃないわよ?」
エマがオレの肩をペシンと叩いて1組の教室へと走り去っていく。
おいおい……どんだけオレやる気のないキャラとして見られてんだよ。
少しショックを覚えながらもオレは視線をエマから自分のクラス……2組の教室へと向ける。
いつもなら後ろの扉から入っていたのだが、今日はエマと少し多く話して通り過ぎてしまったからな。 オレは珍しく前方の扉を開けて中へと入った。
◆◇◆◇
オレが教室に入ってすぐに視界に入ったのはそこから一番席の近かった三好の姿。
三好もちょうど扉の開いた音に反応して視線を向けていたようで自然と目が逢う。
お、ていうか三好のやつ、ポニーテールじゃないか。
「久しぶりだな三好」
「えっ」
ーー……ん? なんだその反応は。
三好は大きく目を見開くと、反射的なのかその場でガタリと音を立てて立ち上がる。
「どうした三好」
「え、いや……なんでいるの?」
「は?」
失礼なやつだなこいつ。
「おいおいなんだ? ちゃんとメール送っただろ」
「そうなの!?」
「え!? オレ送り間違えてないよな!?」
オレは若干の焦りを覚えながらスマートフォンを取り出して送信メールの内容・宛先を確認する。
【送信・三好】今新幹線で帰ってるから明後日から復帰するぜ。
ーー……うん、ちゃんと送信済みになってるぞ。 宛先も間違えてはいない。
オレは「ほら、これ見てみろよ」と言いながら送信メールを三好に見せつける。
「あ、ほんとだ……」
「ほんとだ……じゃねーよ。 え、メール見てないのか!?」
「実はさ、ちょうど一昨日トイレにスマホ落として水没しちゃってさ。 今修理中でないんだよね」
三好が「はぁ……」とため息をつく。
「ええええ、そうなのか!? てかトイレに落ちるもんなのな!」
「うん、まぁこれは女子限定あるあるだと思うけど」
三好は「だから水没してからの連絡は一切見れてないの」と小さく項垂れた。
「そうか、だから返信なかったんだな。 なら仕方ない」
「んーー。 ごめん」
「謝んなって。 まぁでもあれだな、てことは今日は三好はオレが来ること知らなかったわけじゃん?」
「うん」
「なのにちゃんとそのヘアゴムでポニーテールにしてきてくれている……素晴らしいな」
「なっ!!」
やはり三好も女の子だな。
オレが髪型を指摘するやいなや、三好は顔を真っ赤にして両手でポニーテール部分をオレから見えないように隠し始める。
「おいおいもう遅いぞ。 バッチリ見させてもらったぜ」
「は、はぁ!? 別に福田のためじゃないし!」
「そうかそうか。 でもとりあえずこれだけは言っておくぞ」
「ーー……なにを?」
三好がキョトンと首を傾げてオレを見つめる。
うん、やっぱりこれだよな。
「三好はポニーが似合うな」
「!!!!!!!!」
本当ならもっと褒めてやりたいところだったのだが後ろからドSの女王・小畑と多田が仲良く登校してきてオレの名前を呼んでくる。
「あ、福田じゃん。 帰ってきたんだー」
「うん、小畑さんおはよう」
「んー? んでどうした佳奈ー。 机の上で突っぷすなんて佳奈らしくもない。 風邪ー?」
小畑は多田とともに三好の席へ。
「どーしたの佳奈ー。 おーきーてー」と身体を揺らし始める。
「お、起きてる! 起きてるから!」
「えー、じゃあ顔あげてよー」
「い、今は無理!!!」
「なんでー?」
「無理なものは無理だから!!」
そんな三好の言葉を受けた小畑と多田は互いに顔を見合わせ頷く。
「麻由香、やっちゃう?」
「もちろんだよ美波」
本当にこの3人は仲がいいんだな。
三好が「今は無理」と言ってるにも関わらず2人はニヤリと笑い三好の左右に分かれると、「せーの」の合図で一斉にくすぐり始める。
「ぷふ……あはははは!! ちょ、ちょっと麻由香、美波、やめてって!! あははははは!!!」
「やめませーーん! 佳奈が起きるまでやめませーーん。 ねぇ麻由香」
「うん! ウチも佳奈が観念するまでやめませーん!」
こうして2人の勢いに押された三好は渋々顔を上げる。
「ええええ!? 佳奈どうしたの! 顔まっかっかじゃん!!」
「だ、だから言ったじゃん!」
「佳奈、本当に風邪じゃないの? あれだったらウチ、保健室連れてくけど」
「大丈夫! そんなんじゃないから!」
多田の質問に三好が全力で首を左右に振りながら否定すると、それを見た小畑がニヤリとドSスマイルを浮かべる。
「あー、私分かっちゃったわー」
「み、美波? なにが分かったの?」
そう三好が尋ねると、小畑は三好の耳元に顔を近づけて小さく呟く。
「もしかして佳奈ってさ、福……」
うーーん、さすがは小声。
聞きたかったけどちゃんと聞き取れることはできなさそうだ。
しかし小畑の言葉は何かしらの的を得ていたようで、三好の目はどんどんと大きく見開かれていき、顔も先ほどと同様真っ赤に染め上げていく。
「は、はぁ!? ちょっと美波……そ、そんなことあるわけないじゃん!!」
「えー、なにその反応! もしかして佳奈、図星ー!?」
「図星じゃないし! ただちょっとだけ眠くて体温が上がってただけだし!!」
一体小畑は三好に何を言ったのだろうか。
かなり気になるところではあったのだが、それを尋ねるよりも早く多田が口を開いた。
「いや、眠くなって体温上がるのって赤ちゃんじゃん」
「「ーー……」」
一瞬の沈黙。
ただのツッコミを受けて2人は黙り込み見つめあっていたのだが、流石はドSの女王……何かを思いついたようで口角がオレ並みにグインと上がる。
そしてそれは長い付き合いだからこそ分かるのだろう……三好も小畑の反応に気づいて何を言われても言い返せるよう、姿勢を正して反撃の構えをとった。
「ねー佳奈ちゃん! おネムだったのかなー!?」
「は……はぁ!?」
「じゃあ早くおネンネしないとダメでちゅねー! あ、あそこにパパがいまちゅよ! パパー!」
そう言うと小畑はオレを見ながらこっちへ来いと言わんばかりの手招きをしてくる。
すると三好は「な、なんで福田が関係あんのさ!」と小畑を見上げながらオレを指差した。
オレが「えっと……何かな小畑さん」と尋ねながら近づくと、小畑はニヤリと微笑みながらオレの手首を素早く掴み、その手を三好の頭の上に乗せる。
「え?」
「えええええええええええ!?!?」
もちろん突然のことだったので声が重なるオレと三好。
しかし小畑はそんなこと気にも留めずにオレに耳打ちをしてきたのだった。
「ねぇ福田」
「何?」
「このまま佳奈の頭、ヨシヨシしてみ?」
「え、何で?」
「面白いもんみれるから」
「面白いもん?」
オレが不思議そうに尋ねると、しびれを切らした小畑が「あーもう焦れったいなぁ。 こうすんの、こう!」と言いながら掴んでいるオレの右腕を強制的に操縦。
なのでオレの右手はオレの意思とは関係なく三好の頭を撫でていく。
「ちょ、ちょっと小畑さん!?」
オレは小畑にツッコミを入れながらも手の感覚に全神経を集中させる。
だってなんだかんだでオレが触れているのはJSの頭……なんてツヤツヤで若々しいんだ。
オレはその感覚をしばらくの間味わっていたかったのだが……
「ふ……ふにゃあ……」
何故か三好はその場でノックダウン。
ヘナヘナと力が抜けていき再び机の上に突っ伏してしまったのだった。
「あーーっはははははは!! やっぱそうじゃん!! ごめんね福田、ありがともういいよ!」
こうしてオレは小畑から解放。
オレはもっとヘナヘナ三好を見たかったのだが、ドSの女王を差し置いてそんなこと出来るわけもなく……オレはそのまま素直に席へと戻り、何故三好があんな風になってしまったのかを考えていたのだった。
まぁ出た結論だけを教えるとすると、おそらくはあれだ。
そう……高槻さん現象。
高槻さんが結城にヨシヨシされてフニャッたように……
優香がオレにヨシヨシされてフニャったように……
一部の女子はヨシヨシに弱いとみた!!!
これは奇跡の大発見だ。
オレは脳内で今の三好のようにフニャらせたい相手がいないかを考えリストに挙げていく。
とりあえずフニャった状態……高槻さん現象を見たい相手は結城・西園寺・ギャルJK星・エマの4人だな。
4人が完全にフニャったらどんな感じになるのだろう……
ちなみにこの妄想は莫大な想像力をオレに提供してくれたので、オレは授業中も皆がフニャった表情や仕草を想像しては悶絶していたのだった。
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今回の挿絵高画質VERは後ほど作者ツイッター( @mikosisaimaria )にて掲載しておくので、よろしければ見にきてやってください♪




