322 答えは夢と希望!【挿絵有】
三百二十二話 答えは夢と希望!
もうアバウトに言ってしまえば大体1ヶ月ぶりだろうか。
朝。 少しは暖かくなったとはいえ、まだ冷え込む空気を肌で感じながらオレは久しぶりの通学路を結城やエマ、エルシィちゃんとともに歩いていたのだが……
「ちょっとどうしたのよダイキ、朝から鼻に何かぶつけたの?」
エマが「ほんとダイキって注意力ないわよねー」と言いながらオレの顔を覗き込んでくる。
そう……今のオレは鼻の穴にティッシュを詰め込まれているのだ。
「なんでそうなったわけ? 久しぶりの早起きで寝ぼけて玄関にでも激突した?」
「う、うるせーな。 んなわけねーだろ」
「じゃあなんでそうなるのよ」
「そ、それは……」
オレは何故こんなことになったのか……それは少し前に遡る。
◆◇◆◇
本当にちょっと前……家を出る少し前のことだ。
ギャルJK星の作ってくれた朝食を食べて部屋に戻り、ランドセルを用意してリビングに向かうとギャルJK星の姿が見当たらない。
「あれ、星さんどこ行った?」
トイレかなーと思ったオレはそろそろ登校時間ということもあり、とりあえず優香に学校に行ってくることを伝えに行くことに。
そしてこの行動が今のオレの状態に繋がることとなる。
「お姉ちゃん、じゃあそろそろオレ、行ってくる……けど……」
ーー……え。
声をかけながら扉を開けたオレだったのだが、そこに飛び込んできた光景にオレは言葉を詰まらせる。
普通信じられるか? だってそこには……
「お、ダイキ。 いてらー」
そこには何故か上半身裸の状態でこちらを振り返っているギャルJK星の姿。
カーテンを開けているせいなのだろう……朝の神々しい光がギャルJK星をこれまた美しく照らし出している。
「うわああああああ! ちょっと美咲! 早く隠して!」
オレに気づいた優香が勢いよく飛び起きてギャルJK星のとある部分を指差し、そんなギャルJK星は「あー、ほんとだ。 あはは、すまんすまん」と言いながら指で指された部分を控えめに隠した。
優香……昨日よりは元気そうだな。
でも今はそれよりも……
「ほ、ほほほ星さんンンン!?!? 何やってんの!?!?」
オレは視線をどことは言えないがとある一点に集中させながらギャルJK星に尋ねる。
ちくしょう!! 光が邪魔だな!!! 今日ほど快晴を恨んだ日はないぜ!!
「あー、これか。 ほら、下はあれだとしてさ、上も洗濯機ぶち込んじゃってたから代わりがなくてね。 ゆーちゃんが貸してくれるって言うからサイズが合うものあるかなーって思って。 ほら、アタシってゆーちゃんよりナイスバディじゃん?」
ギャルJK星がニヤニヤしながら優香に視線を移す。
「ちょっ……やめてよ美咲! そんなこと言ったら私が貧相みたいじゃない!」
「でも実際に合わなかったから合うもの探してるわけじゃんー?」
「前は使えてたでしょ!」
「チッチッチ……甘いぜゆーちゃん。 美咲ちゃんは日々成長しているのだよ」
「日々……成長!?」
優香の視線の先には勝ち誇った顔で夢と希望を見せつけるギャルJK星。
「ゆーちゃんは成長もしかして止まっちゃった?」と言いながら少しずつ近づいていく。
「そ、そんなことないもん! わ、私だって成長してる……今持ってるのもちょっと窮屈って感じてたもん!」
「そぉー?」
「そうなの!」
優香ももう意地になっているのだろう、体を軽く反って胸を張りながら「ほら見てよ! 前よりあるでしょ!?」とギャルJK星に訴える。
何が前よりあるんだろう……多分あれだ。 胸張って堂々としてるし、自己肯定感が前よりあるって言ってるんじゃないのカナ?
「んーー? そうかなーー」
「そうだよ!」
「でも見た感じは前と代わり映えしないようなー」
「じゃあほら、確かめてみればいいじゃない!」
「ほぉー、言ったなゆーちゃん。 美咲ちゃんチェックは厳しいぜぇ?」
「の、望むところだもん!」
こうしてオレの目の前で突如始まった優香とギャルJK星の仲睦まじいイチャイチャタイム。
オレはしばらくの間時間を忘れてそれをただただ眺めていたのだが、鼻から何かが伝い落ちる違和感でようやく我に帰り、静かに家を出たのだった。
◆◇◆◇
いや……まさにあれは眼福だったぜ。
そんな感じで朝の幸せな光景を再び脳内で再生しているとエルシィちゃんが「あーっ」と突然大きな声を上げる。
「ど、どうしたのよエルシィ。 いきなりビックリするじゃない」
「う、うん。 私もその……ビックリした」
その声にエマや結城も驚きながらエルシィちゃんに尋ねる。
そんなエルシィちゃんにオレも視線を向けると、エルシィちゃんはクリクリとしたその純粋な蒼い瞳でオレを見上げている。
「どうしたのエルシィちゃん」
「ダイキ、ここ、なにはいってゆのー? シュマホー?」
「ん?」
エルシィちゃんが視線を下ろしてオレの下半身の方へと向けたので、どうしたのだろうとオレやエマ・結城もそこに視線を向けた。
するとすぐに反応が。
「ちょっ! ダイキ!」
「きゃっ!」
オレよりも先にエマと結城の小さな悲鳴が上がる。
ーー……あ。
なんということでしょう。
そこには異様な膨らみ……実際はエルシィちゃんが言ってたようにスマートフォンが横になってポケットの中に入っているだけなのだが、見ようによっては……詳しくは言えないがハプニングだ。
「ちょっと朝っぱらから何してんのよダイキ!!」
エマがオレのポケット内に入ってるスマホを指差しながら詰め寄ってくる。
「いや、これスマホ」
「嘘言わないの! あ、やっと繋がったわ!! 鼻血の理由思い出してそうなったんでしょう!!」
エマが「エルシィの教育に悪いから早く沈めなさい!」とエルシィちゃんの視線から遮るように膨らみに触れるギリギリの位置で手をかざす。
隣にいる結城も顔を真っ赤にしているが……いや、今回はガチでスマホなんだよな。
オレは嘘じゃないことを証明するためにポケットの中に手を入れてスマホを取り出す。
「ほら」
「あ、消えた」
「ほんとだ……」
エマと結城が消えた膨らみを確認してポツリと呟く。
本来ならこれで話は終わるのだが……
久々にやっておくか。
やっぱりこれをしてこそオレだよな。
ニヤァ……
「なぁエマ」
「な、何よ」
「実際にさっきの膨らみはスマホだったわけだけど、エマは一体何を想像してたんだ?」
「えっ!?」
オレは口角をグインと上げながらエマに顔を近づける。
「べべ別にいいじゃないそんなの! スマホだったんでしょ!?」
「さっきエマはオレに『朝っぱらから何してるの』的なこと言ってたけどさ、エマこそ朝っぱらから何考えてんだろうねー」
「何考えてたって……ああああああ!! もううるさいうるさい! 早くもう学校行くわよ!」
エマは少し顔を赤らめながら結城の手を引っ張ると、オレとエルシィちゃんの前に移動。
2人でひそひそと話し出し、「ややこしいのよね本当に」とか「そ、そうだね」とか聞こえてきたのだった。
うむ、そういう考えをしてる女の子をみると興奮するよね!
今日は朝から最高の日だなぁ!!!
オレがそんな幸せを噛み締めているとエルシィちゃんがオレの服の袖を引っ張ってくる。
「ん? どうしたの?」
「ねぇダイキ、ダイキはいま、シュマホ、おててに、もってるでしょー?」
エルシィちゃんがオレが右手で持っているスマートフォンを指差す。
「あ、うん。 そうだね」
「じゃあねー、つぎはポケットに、なに、はいってゆのー?」
ーー……あ。
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めちゃめちゃ日光さん仕事しますねぇーー!!笑




