320 助っ人!!
三百二十話 助っ人!!
西園寺が学校を休んでウチに来たその日の夕方。
これまた大変なことが起こったのだ。
「あ、もうこんな時間だ……」
「まじか、早えな」
西園寺がそろそろ帰ると言うので、西園寺を送ってくるついでに買い物に行くことを優香に伝えるためにリビングへと向かったオレだったのだがーー……
リビングの扉を開けると未だ優香用のお弁当はテーブルの上に置かれたまま。
「まだ寝てる……?」
ソファーの方へと視線を向けると、優香はお昼時と変わらない場所で横になっている。
ーー……流石に寝すぎだろ。
これでは夜に眠れないやつだと考えたオレは優香を起こすことを決意。
ソファーの前に回り込んで優香の顔を覗き込んだ……その時だった。
「あれ、顔赤くね?」
優香の顔が全体的に赤く染まっており、若干息が荒い。
「これは……もしかして」
オレはイヤな予感がしながらも優香の体を強めに揺すって起こすことに。
服の上からだから何とも言えないけど若干熱いような……
「んん……あ、ダイキぃ。 ごめんね、お姉ちゃん結構寝ちゃってたかも……」
ゆっくりと上体を起こした優香が左右に揺れながら目を擦る。
「あ、うん。 それはいいんだけどさ、お姉ちゃん大丈夫? ちょっと熱い気がするし、もしかして風邪ひいたんじゃ……」
「なに言ってんのダイキぃ。 お姉ちゃん元気だよー。 って、あ、もうこんな時間……ごめんね、今から買い物に行くから」
優香はそう口にしながらオレに柔らかく微笑むと、床に足を下ろして「よいしょ」と立ち上がった。
ふらぁーーー。
「あ、あれ? あれあれーーー???」
「うわあああああ!!! お姉ちゃああああああああん!?!?!?!?」
はい、体調不良確定ーーーーー!!!!!
◆◇◆◇
優香の体調不良が発覚してから約1時間後。
「てなわけで、アタシ参上ーーー!!! 美咲ちゃんが来たからにはもう心配いらないぜ」
玄関の前には、学校が終わって直接来てくれた感じだろう……制服姿のギャルJK星が軽く息を切らしながら立っている。
「ごめんね星さん、ありがとう」
「弟が気を使うもんじゃないぞー。 それよりゆーちゃんは?」
「今ベッドで横になって貰ってる」
「そっか。 とりあえずスポーツドリンク大人買いしてきたから冷蔵庫貸してくりー」
「え」
そう言われてギャルJK星の手元に視線を向けると大きめのサイズのスーパー袋にぎっしりとスポーツ飲料が詰め込まれている。
「うわあああ、星さん! オレ持つよ!」
「だーから気にすんなって。 とりあえず、お邪魔しまーす」
どうしてこんな展開になったか説明するとだな、流石にオレが明日も学校を休んで看病することを優香が許可しなかったので相談してみたのだ。
ちなみにそのメールのやり取りはこちら。
【送信・星美咲】星さん、今大丈夫?
【受信・星美咲】お、昨日帰ってきたんだよね!? おかえりー。 で、どした?
【送信・星美咲】お姉ちゃんが風邪ひいちゃったのか熱出ちゃっててさ。
【受信・星美咲】えええ!? マジ!?
【送信・星美咲】うん。 それで明日も学校休んで看病してあげたいんだけど、お姉ちゃんがそれはダメって言うから星さんに知恵をもらおうかと。
【受信・星美咲】美咲ちゃんに任せろ。 さっき学校終わったから秒で向かうぜ!
ううう……なんでこんなに頼り甲斐があるんだギャルJKーー!!!
オレは「ありがとう星さん」と言いながらギャルJK星を中に。
リビングに招き入れると、まだ帰っていなかった西園寺が身体を固まらせてギャルJK星を見つめていた。
「ありゃ? キミは初めましてだね」
ギャルJK星は西園寺と目が合うなり興味津々で西園寺のもとへ近づいていく。
「え!? えっと……はい」
「アタシはゆーちゃ……ダイキのお姉ちゃんのお友達の美咲って言うんだけど、キミは?」
「さ、西園寺希です!」
西園寺の自己紹介を受けたギャルJK星は「希ちゃんかぁー」と呟きながら西園寺の頬を軽く突く。
「な、なんですかぁ!?」
「希ちゃん、美人だねぇー。 ダイキのお友達……だよね?」
「そ、そうですけど」
「そっかぁー、ダイキのお友達かぁ。 帰ってきた日の翌日に早速ねぇ、へぇーーー?」
ギャルJK星がニヤニヤしながら身体を屈めて西園寺の目線の高さに合わす。
「な……なんですか?」
「もしかしてさ希ちゃん。 希ちゃんはダイキのこt……」
「ひゃああああああああああああああああ!!!!!」
おぉ!?
一体どうしたと言うんだろうか。
さっきまで普通に会話していたと思っていたのだが、突然西園寺が顔を真っ赤にして発狂し始める。
「お、西園寺どうした? 星さんにイジられたのか?」
「ううん、なんでもないの、気にしないで!!」
西園寺は勢いよく顔を左右に振ると、一瞬ではあるがギャルJK星をキッと睨みつける。
「そ、そうなのか?」
「うん! じゃ、じゃあ私、帰るね! お姉さんのお友達が来てくれたんだったら大丈夫だろうし!」
「あーうん。 でも家まで送るぞ?」
「ううん大丈夫! まだ外そこまで暗くないし、福田くんはお姉さんの近くにいてあげて!」
「いやでもよ……」
「ほ、本当に大丈夫だから!! そ、それじゃあ福田くん……と、美咲さん、それじゃあ!」
西園寺は少しテンパりながらオレたちに挨拶すると、早足で玄関へ。
「じゃあ福田くん、また明日ね」と小さく手を振り帰って行ったのだった。
西園寺のやつ、結構焦ってるように見えてたけど……
「ーー……なんだ? トイレか? 使ってけばいいのに」
「んなわけないでしょ」
小さく呟いただけだったのだが後ろからギャルJK星のツッコミチョップがオレの頭に直撃する。
「あいたっ、星さん?」
「ダイキはあれだね、まずは少女漫画を読もうか」
「少女漫画? なんで?」
「とりあえずアタシがチョイスして今度持ってきてあげるから、そこで色々と勉強するがよい」
「べ、勉強?」
「その後確認テストするからね! もし不正解だったら今後、美咲ちゃんパンツプレゼント企画はなくなりまーす」
「ええええええええええええ!?!?!?」
学力テストの次は少女漫画テストだとおおおおお!?!?!?
こうしてオレは次から何故か少女漫画を読むことが決定。
その後ギャルJK星が翌日の学校を休んで優香の看病をしてくれることが決まり、オレは安心して明日の時間割の用意に取り掛かったのだった。
「あ、そうだダイキー」
「なに星さん」
「ちっとコンビニに買い物行ってくるから留守番よろー」
「あ、うん。 それは良いけど……何買うの?」
「タマゴとか簡単な野菜をちょろっとね」
「タマゴ?」
「今日はゆーちゃんの身体にも優しい……美咲ちゃんスペシャルお粥を特別に作ってあげようと思って」
「おおおおおおおおおお!!!!!」
ギャルJK星の手料理……これかなりレアなんじゃね!?
「あ、あの星さん、それってオレも……?」
「もちろんいいべー。 でも希ちゃんがわざわざ買ってきてくれたお弁当があるんだから、それ食べてまだ胃袋余裕あったらね」
「大丈夫です食べ盛りですからぁ!!!!」
そしてギャルJK星は駆け足で近くのコンビニへ。
オレはそんなギャルJK星がゆっくりくつろげるようにお風呂を沸かし、帰ってくるまでの間、部屋のベッドで横になっていた優香の近くにいることにしたのだった。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「うん。 多分あれだ……無事に色々終わって帰ってこれて、緊張の糸が解れたんだと思う」
「そっか。 あ、そうだお姉ちゃん、今日の夜は星さんがお粥作ってくれるんだって」
「えー、美咲が? 美咲の料理食べるの初めてかも。 楽しみだなー」
うん、さっきから優香は身体はダルそうだけど咳とかそういうものは一切していない。
てことは本当に緊張の糸が解れた影響……
どんだけ気を張ってたんだ優香。
まぁでも今夜からはお互いに信頼し合っているギャルJK星と2人きりなんだし、オレがいない時間は気兼ねなく女子トークで盛り上がってストレスも解消されるんだろうな。
ギャルJK星、改めてありがとう。
そして西園寺、優香がそんな状態だってことに気づいていなかったとしても、少しでも楽をさせてくれてありがとう。
まったく……オレは本当に恵まれてるぜ!!!!
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