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318 新たな戦いの幕開け!?


 三百十八話  新たな戦いの幕開け!?



 西園寺母の要望通り、西園寺は学校が終わるまでの時間までウチにいることに。

 せっかく西園寺も元気な状態で学校を休んでるんだ。 だったら本気でくつろげばいいのではと思ったんだけど……



「あ、お姉さん! 洗濯物取り込むの手伝います!!」



「お姉さん! 掃除も私がやります!! 疲れてるでしょうし、ゆっくりしてください!」



 あーー、これは一体どうしたというのだろうか。

 さっきから西園寺が事あるごとに優香の後ろを付いて回り家事を率先して手伝おうとしているのだ。



「え、いいよ希ちゃん。 希ちゃんはお客さんなんだからダイキと一緒にゆっくりしてて」


「そんなわけにはいきません! せっかくの休養日なんですから、家事は私に任せてください!」


「でも……」


「たまに……ですけど、私もお母さんのお手伝いとかしてるので大丈夫です!」



 そんなこんなで西園寺は先ほどの洗濯物を取り込む以外にも、それをベランダに干したり掃除機をかけたりと家事をテキパキこなしていき、その1つ1つの作業が完璧だったのだろう……最初こそ横について見ていた優香も「じゃあ……ごめんだけどお願いしていいかな」とソファーに腰掛けうたた寝するまでに至ったのだった。


 ていうか優香……やっぱり疲れてたんだな。 

 これは西園寺には感謝しかないぞ。



 ◆◇◆◇



 時刻はお昼を少し過ぎた頃。

 優香はソファーの上で気持ち良さそうな寝息を立てていたのでオレは西園寺と2人で先ほど西園寺が買ってきてくれたお弁当を食べることに。



「えっと……私も食べちゃっていいの?」



 西園寺が困惑した様子でオレに尋ねる。



「何言ってんだ、当たり前だろ」


「でもそしたら夜の分足りなくなっちゃうよ?」


「その時は夜ご飯の買い物行けば済む話だ。 なんかお前見てたらオレもちゃんとしなきゃなって改めて思ったからな。 夕方くらいにオレが買い物行ってくるさ」



 オレはそう言いながらお弁当を西園寺の目の前に。

「だから気にするな」と付け足しながら西園寺のコップにお茶を注ぐ。



「え、福田くん、お買い物出来るの?」


「当たり前だろ、これでも帰省中は結構買い物行ったもんだぜ?」


「えーすごい、それで間違えずに買えたんだ」


「と、ととと当然だろ。 なんだかんだでオレも5年生……それくらい出来るって!」


 

 オレは帰省初日のウスターソース事件を記憶から抹消しながらフンっと胸を張る。



「へぇー、凄いね! なんか思ってたよりも家庭的でびっくりしたよ」


「おいおいオレをあまり舐めんなよ? その辺の男子よりは絶対に出来ること多いんだからな?」


「う、うん。 それはなんとなくそう思ってた」



 顔を少し赤らめた西園寺が小さく頷きながらコップに口をつける。



「え、そうなのか?」


「うん……」


「おいおいなんだよ、それなら早く教えてくれよ。 てっきり誰も気づいてないと思ってたじゃねーか!!」



 まぁオレは前世で社会人をしてた分、その辺のガキよりは経験豊富……言うなれば何をするにもオレの方が優ってるんだけど、そうか……やっぱり気づく人は気づくんだなぁ。


 オレは心の中で感動しながら他のガキどもよりも優れていると思うところを脳内で挙げていくことに。


 ……学校だと宿題はちゃんと提出して内申点を確保してるし、先生に対しての敬語も徹底している。 人間関係も良好だ。 基本オレに攻撃してこない限りは平和な関係を徹底しているからな!

 やはり過去にリーダーをしていた西園寺にはそんなオレの大人びた人間性が一際輝いて見えていたのかもしれない。


 しかしどうせならそういう細かいところも西園寺の口から聞きたいな。

 そう考えたオレは早速西園寺に尋ねてみることにした。



「な、なぁ西園寺」


「なに?」


「その……さ、ちなみにオレのどんな行動を見てそう思ってくれたんだ?」


「え?」



 西園寺がオレを見たままピタッと止まる。



「ん、なんだ?」


「えっと……私が福田くんの何の行動を見て他の子たちよりも優れてるって思ったかって?」


「そう」


「ーー……」



 お、なんだなんだ?

 西園寺のやつ、ゆっくり視線をオレから逸らしてコップを見つめ出したんだが。

 も、もしかして……



「西園寺……もしかしてさっきの言葉……お世辞?」



 そう尋ねると西園寺は「そ、そんなんじゃないよ!」と少し慌てた様子で激しく首を左右に振る。



「じゃあなんだよ、教えてくれよ」


「え……えええ」


「おいなんだ? 言えないってことはやっぱりそういう……」



 それからしばらくこの「言ってくれ」「えええ……」の攻防が続き、オレのあまりのしつこさに西園寺も観念したのだろう……西園寺は「分かったよう……」と力なく頷いて小さく口を開いた。



「……全部」



 西園寺が顔全体を赤く染めあげながらオレを若干上目遣い見つめてくる。



 ーー……は?



「お、おい西園寺、それはあまりにも適当すぎやしないか?」


「え……えぇ!? そう……かな」


「いや、そうだろ。 具体的に教えてくれよ。 例えばオレが西園寺の好きなところを挙げるとして、そこで『全部好き』って答えたらどうだ?」



「ぜ……全部!?!?」



 西園寺が声を裏返しながら勢いよく立ち上がる。


 

「あぁ。 そんな大雑把に言われても嬉しくないだろ?」


「う……ううん、私はその……嬉しい……かな」


「嬉しいの!?!?」


「……うん」



 おやおやおかしいな。

 オレが以前モテるためにはどうするかを調べてた時、ネットには【女子は大雑把な答えはNG! 物事を伝えるときには事細やかに!】って書いてたような気がするんですけど。

 他のサイトにも【愛情を伝える際、アバウトな答えは返って悪印象。 どこがどう好きかを言葉にすべし】ってあったぞ。



 ネット記事を書いた奴らめ!! 全然違うじゃねえか!! ガセネタ書きやがってえええええええ!!!!!



 ネット情報と現実との違いを突きつけられたオレは頭を押さえながらその場でヘナヘナと座り込む。



「ふ、福田くん? 大丈夫?」


「あー、うん。 もうネット情報は信じないようにしようかなって」



 西園寺の頭上にはてなマークが出現。

「ネ、ネット情報?」と言いながら不思議そうに首を傾げる。



「まぁそこは気にすんな。 じゃあ西園寺から見たオレの行動は、その全部が他の男子より上に見えてるって事なんだな」


「う……うん」


「そうか、それはありがとう。 それはそれで想像以上の答えだから嬉しいよ」



 結局詳しいことが分からないままオレの他より優れているテーマは終了。

 途中お腹もなっていたのでそれからは2人テーブルで向かい合ってお弁当を食べていたのだが……



「ね、ねぇ福田くん?」



 食べている最中、西園寺が何か言いたげな表情をしながらオレに話しかける。



「ん、なんだ? 苦手な食べ物でも入ってたか?」


「ううん、そんなんじゃないの。 ただその……さっきのアレってどうなのかなって思って」


「さっきのアレ?」


「うん。 ほら、例えばの話で福田くん言ったじゃない? 福田くんが私のどこが好きかを教えるとして、『全部』って答えたらどう思うかって」


「あー、うん。 言ったな」


「実際のところさ……どう?」


「え」


「福田くんが私の好きなところを言うとしたら、どんなところ?」



 改めてお弁当から西園寺に視線を移すと、西園寺は口先を少し尖らせながらオレをチラチラと見つめている。



「え、なに言わなきゃダメなやつなの!?」


「だって気になるんだもんーー!!」


「ほらな! オレもさっき今の西園寺と同じ気持ちになったの! 今めっちゃモヤモヤしてるだろ!?」


「うん……モヤモヤしてる!」


「よし、じゃあさっきオレをモヤモヤさせたお礼に西園寺もモヤモヤさせてやろう。 だからノーコメントだ」


「えええええええ!?!?」



 その後オレたちが食べ終わってもなお優香は目覚めないため、特にやることのないオレは西園寺にある提案をすることに。



「なぁ西園寺」


「なに?」


「さっきの話の続きなんだけどさ」


「え、うん!!」



 コップ等の洗い物をしてくれていた西園寺が目を輝かせながらオレのもとへ近寄ってくる。



「明日からオレもまた登校するわけで脳のウォーミングアップしておきたいからさ、問題集勝負しようぜ」


「問題集勝負?」


「あぁ。 問題集って最後に理解してるか確認するための小テストついてるだろ?」


「うん」


「それで点数勝負するんだけど、負けた人は勝った人の好きなところを1つ教えていくっていうのはどうだ? 勝者のみが好きなところを聞けて気持ちよくなれる……最高だと思わないか?」


「なにそれ面白そう!!! やるっ!!」



 こうしてオレと西園寺は優香を起こさないよう静かにオレの部屋へと移動。

 お互いの学力を競う戦いが幕を開けたのだった。

 


お読みいただきましてありがとうございます!!

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[良い点] 西園寺ちゃん……売り込んでやがるぜw 微笑ましいやり取り!!
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