315 反抗期!?【挿絵有】
三百十五話 反抗期!?
朝。 本来なら今日は平日で、オレと優香も学校へ行かなければならない日なのだが……
「あー、平和だね、お姉ちゃん」
「そうだねー」
時刻は朝の9時になろうとしているくらい。
そう……オレたちは昨夜遅くに帰ってきたこともあり、疲れた身体を癒すために1日多く休むことにしていたのだった。
なのでオレも優香も時間を気にすることなくのんびりとテーブルの前でお茶を飲む。
「そうだダイキ、もうちょっとしたらお姉ちゃんお買い物行こうと思ってるんだけど……今日の晩御飯なにがいい?」
「うーーん、お姉ちゃんが作ってくれる料理はなんでも美味しいからなー。 でも今日はお肉な気分かなー」
「やんもう、ダイキったら。 でもありがと。 わかった、お肉系ね」
優香が「ふふ……」と嬉しそうに笑いながらオレに優しい視線を向ける。
あぁ……このゆっくりと流れる優香との時間、久しぶりだぜぇ。
「じゃあお昼は買い物ついでにお弁当買ってくるね」
「うん、ありがとう。 ていうかオレも一緒に行くよ?」
「ううん、大丈夫だよ。 ダイキはあっちで頑張ってたんだもん。 今日は1日ゆっくりしてて」
「え、でも……」
「お姉ちゃんもお買い物から帰ってきたら晩御飯の用意まではゆっくりするから」
「んーー、わかった」
それからオレと優香はしばらくの間のんびりタイムを再び満喫。
そして時刻が10時を過ぎようとしたところ。 優香が「じゃあちょっと準備して出かけてくるね」と言いながら席を立ち上がった……その時だった。
ピンポーン
平日の午前中だというのに家のインターホンが鳴る。
「あれ、誰かな。 荷物頼んだ覚えないんだけど」
優香が小さく首を傾げながら玄関の方へと視線を向ける。
「お姉ちゃん、出なくていいんじゃない?」
「なんで?」
「だってこんな時間に宅配なんておかしいでしょ」
オレは優香の腕を掴みながら首を左右に振る。
もしこの家に荷物を送る人がいたとしたら、ここにはオレと優香しか住んでいないと知っているはず……だからこんなTHE・学校時間に配達の時間設定をする人がいるなんて考えられない。
オレの言葉に優香も「まぁそれはそうだけど……」と考え込む。
ピンポーン
「あ、また鳴った。 ちょっとお姉ちゃん行ってくるね」
「いやいや、やめた方がいいって。 変な勧誘とかだったら時間かかるし面倒だよ」
こういうのは森本真也時代に結構経験してきたからな。
押しかけ訪問販売やら聞いたことない宗教やら……基本的には断ったらすぐに帰るけど、ごく稀にそれでも食い下がってくるやつらがいるんだ。
だからもしもう1回インターホンを鳴らしてきたら、それは面倒なやつに認定してもいいだr……
ピンポーン
はい確定えええええ!!!!!!
ちくしょうオレと優香ののんびりタイムを邪魔しやがって!!! ここは経験者のオレがバシッと決めてきてやるぜ!!!
オレは優香に「もし面倒な雰囲気になった場合だけ助けて」とだけ伝えて玄関へ。
そしてこれから始まるであろう話術対決に少し緊張しながらも、「よし!」と小さく気合いを入れて玄関の扉を勢いよく開けた。
「あのーすみませんがウチはそういうのお断りして……」
ーー……え。
先手必勝。 断りの言葉を口にしながら扉の向こうの人物へと視線を向けたオレだったのだが、その先の人物の姿を見て言葉を詰まらせる。
だってそこに立っていたのは……
「え……西園寺? なんで?」
そう……オレの目に前には、何が入っているのかは分からないがピンクのエコバッグを持った私服の西園寺の姿。
「その、昨日遅くに帰ってきたって聞いたから」
「うん、まぁそういうメールは送ったけどさ」
「それでね、福田くんも福田くんのお姉さんも疲れてるかなって思って……だからこれ」
西園寺がエコバッグの中身をオレに見せつける。
「えっと……どうしたのこれ」
そこに入っていたのはスーパーかコンビニ……どこで買ったのかは分からないが4食分のお弁当。
てことは今日の昼と夜用ってことなのだろうが……
「うん。 長い間留守にしてたってことは食材系もあんまりないかなって思ってさ。 だから少しでもゆっくりしてほしいなって思って。 その、迷惑……だったかな」
西園寺がチラチラとオレの表情をチラ見する。
「いや……それはありがたいんだけどさ、それよりも西園寺……お前学校はどうした」
「え?」
「だって今って2時間目の授業中だろ? ていうか……あれ? 今日って祝日だったっけ」
「ううん、ちゃんと学校ある日だよ」
だ、だよな。
「じゃあなんで西園寺はここに……」
「サボっちゃった」
西園寺が小さく舌を出して微笑む。
ーー……え?
「ーー……サボった?」
「うん」
西園寺は悪びれもなく爽やかに頷く。
「えーと……すまん、西園寺ってそういう子だったっけ」
「ううん、今までズル休みしたこと1回もないよ」
「で、ですよね。 じゃああれか? 他にも用事があって、そのついでにウチに寄ってくれた……とか?」
「ううん、さっきも言ったけど、これを福田くん家に渡しに行くためだけだよ」
「ーー……」
なんでそこまでしてくれるんだ?
オレは意味がわからずしばらくの間無言で瞬き。
その後ゆっくりと口を開く。
「えーと、お前がこれをわざわざ持ってきてくれたことは理解した。 でもよくお母さん許してくれたな。 前に話聞いた限りでは結構世間体気にするような感じだったけど」
「うん、最初は学校に行けって怒られたけど……今日だけは私も譲れなかったから。 だから最後はお母さんが折れて学校に風邪ひいたって連絡してくれたの」
ーー……え。
西園寺の言葉を聞いて一気に背筋に悪寒が走る。
「てことはお母さんとは今は……?」
「うん、絶賛喧嘩中だけど気にしないで。 私はそんなことよりも福田くんのとこに行きたかったから」
「うわああああああああ!!! 電話番号教えろおおおおおおおおお!!!!!」
これがおそらく反・抗・期!!
とりあえず外はまだひんやり寒いのでオレは西園寺を一旦家の中へ。
オレや優香のことを気遣ってくれたのは嬉しいけどそれが理由で家族間に亀裂が入るのはいただけないからな。
ここはなんとかして関係を修復……いや、喧嘩の元凶のオレが謝り通さなければ!!!
オレは優香に軽く事情を話して西園寺を優香に預けると、先ほど教えてもらった西園寺家の電話番号をスマートフォンで入力。 通話ボタンを押したのだった。
まぁ小学生相手にブチ切れないとは思うけど……なんだかんだでドキドキするぜ。
お読みいただきましてありがとうございます!
下の方に星マークがありますので、評価していってもらえると嬉しいです!
感想やブクマ・レビュー等お待ちしておりますーー!!!




