313 セーフ!?
三百十三話 セーフ!?
美香……アドバイスありがとう。
そして陽奈……不動明王様の身代わりお守りを譲ってくれてありがとう。
そんなことを脳内でリピートしながら、オレは今顔面に伝わっている……とてつもない感触を堪能していたのだった。
さて、一体何が起こったのか。
それは数分前に遡る……
◆◇◆◇
「ふぅ、やっと着いたねダイキ」
「うん」
結構な疲労だったためオレと優香は駅から自宅マンションまでタクシーで帰宅。
「ダイキ、とりあえず家に荷物置いてから高槻先生のお宅向かおっか」
「そうだね」
マンション前に着いた頃には既に周囲は暗くなっており、オレたちは眠気も合わさりながら階段を上っていたのだが、オレの目の前には先に上っている優香のお尻。
あぁ……えぇ眺めやぁ。
今のオレ的には『触れたい』というよりかは『眺めていたい』感情の方が正しいな。
なんだかんだで長旅で疲れてるんだ……そりゃあ触らせてくれるのなら喜んで触るのだが、そこまでの贅沢は言うまい。
そんなことを思いながらジッと優香のお尻に視線を集中させていた……その時だった。
なぜかは分からない。
優香のカバンに入れていた身代わりお守りがスルリとカバンから滑り落ちて階段に落下する。
「あ、お守り」
優香は疲れているのかどうやら気づいていない様子だったので、オレはそのお守りを託してくれた神様……美香のことを思い出しながら落ちたお守りに手を伸ばす
そしてそのお守りに指先が触れた瞬間、あの美香の言葉が脳裏をよぎった。
『家に帰るまで、気を抜いちゃダメ』
あー、なんか美香のやつ、そんなこと言ってたなぁ。
そういやあれってどういう意味だったんだろうと考えながら拾い上げると、一体どうしたんだろう……突然目の前を先行していた優香の身体がグラつきだしたではないか。
「え……あれ?」
そう小さく声を出したまま優香の体が後ろへ傾き、背中がゆっくりとオレの方へ。
両手は荷物を持っていて塞がっているのか手すりを持つことさえままならないまま一気にこちらに倒れてきた。
「お、お姉ちゃんンンンン!?!?」
もしかして美香が言っていたことってこのことなのか!?
となればもしオレが何も動けずにいた場合……
優香に大変なことが起こる!?
ーー……ここはオレがなんとかしなければならない!
そう決心するも、今のオレの体勢は前屈みになっていて片手は荷物で塞がっていてもう片手には身代わりお守り。
荷物を離して支えるという方法もあるがおそらくそれだと間に合わない。
ならオレに出来る行動はただ1つ……そう、、
顔面ガーーーーード!!!!!
オレは顔を前面に突き出して優香の背中をガッツで支えにかかる。
ドサッ
痛ってええええええええええ!!!!!
優香の全体重を乗せた背中がオレの鼻にプレスアタック!
それにより鼻が押しつぶされそうになり激痛が走る。
「あ、あれ……私どうして……ってダイキ!?」
意識がはっきりとしてきたのだろう……優香がオレの方を振り返る。
「お……ねぇぢゃん……っ!!!」
「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん急にフラッとして」
「だ……大丈夫……だから!」
オレは「グヌヌヌヌ……!」と踏ん張りながらもなんとか優香の転倒を阻止。
なんとか優香の体勢を整えることに成功し、最悪の事態を防ぐことができたのだった。
「あ……危なかった」
優香の無事を確認したオレは安心から一気に身体中の力が抜けその場で膝から崩れ落ちる。
そしてそんなオレを優香が必死に少し上の踊り場まで引き上げてくれたのだった。
「ダ、ダイキ!」
「お姉ちゃん……ごめん、ありがと」
「ううん、ごめんねを言うのはお姉ちゃんの方だよ……最後の最後でボーッとしちゃって」
優香がオレを抱きしめながら頭をギュッと抱きしめる。
なのでオレの顔面はもちろんあのマシュマロオアシスに触れているわけで……
アアアアアアアーーー!!!!!
さっきまで当たってたところが背中だったから痛かったけど、今はその逆……柔らかいんじゃああああああああああ!!!!!
それに強く抱きしめられてるから顔面全てでその感触を楽しめることが出来てるし、優香の香りも直に嗅ぐことが出来る。
まさにこれこそ、幸せの極みなんじゃああああああああああ!!!!!!
これによりオレは疲れているはずなのにいろんなものがスタンダップ!!
疲れ切っていた脳はこの状況全てをメモリーしようと必死だし、肺も少しでもこの香りを吸収しようと必死。
顔面の触覚は弾力を味わうことに必死だし、口はそのオアシスの頂上はどこだろうと必死に探していたのだった。
そしてどことは言わないがオレの魂は……くしゃみしたくて堪らなかったっぽいぞ。
◆◇◆◇
その後オレと優香は足下に気をつけながらようやく帰宅。
そういや自室で気づいたんだけど、陽奈に渡していたあの身代わりお守りあるだろ?
あれ、階段で拾い上げた時は別になんともなかったのに、さっき触ってみたら中の板っぽいものが真っ二つに割れてたんだ。
これは優香が落とした時に実は割れていたのか、それとも優香の身代わりに?
ーー……その真相は不動明王様のみぞ知ってるんだろうな。
「でもまぁとりあえずは……」
オレはそう小さく呟くと、お守りをポケットに入れてリビングへ。
するとそこには荷物を直し終えた優香の姿。
「お待たせお姉ちゃん」
「うん、じゃあ行こっか。 さっき今から行きますって連絡入れたから」
「うん!!!!!」
こうしてオレと優香は晩御飯をご馳走してもらいに一階下の高槻さん宅へと向かったのだった。
今行くぜええええええ結城いいいいいいいいい!!!!!!
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