311 復活のバカ!【挿絵有】
三百十一話 復活のバカ!
茜と茜の両親を見送った後に優香から届いた陽奈のお目覚めメール。
やっぱり幸せって連鎖するんだな!
茜が両親と再会出来た日にこれだよ!!
オレは口角をグインと上げながら病院の中をスーパーダッシュで駆け抜け陽奈の病室へと向かい、勢いよくその扉を開けた。
「陽奈、大丈夫か!?」
声をかけながら中を見渡すとベッドの上には上体を起こした体勢の陽奈。
どうやら陽奈の母親はいないようだが……陽奈の背後には愛莉が浮かんでおり、その隣には優香もいる。
「あ、ダイきちー!!」
扉を開けた人がオレだと認識するなり陽奈は目をキラキラと輝かせながらオレに大きく手を振ってくる。
おお……久しぶりに見た気がするぜ、このバカ元気な陽奈の姿!!!
オレがやっと見たかった陽奈の姿に感動していると、優香が「あわわわわ陽奈ちゃん!! なにやってんのーー!!!」と叫びながら必死に動きを止めにはいった。
「えー!? 優香ちゃん、なんでー!?」
「まだちゃんと傷塞がってないんだから……安静にしてないとダメって叔母さんや先生も言ってたでしょ!?」
「でももう陽奈元気やけんー」
「確かに手術後にしては元気すぎるって先生も言ってたけど……」
優香の横では顔を真っ青にした愛莉がサメのぬいぐるみを抱きながら『優香さんの言う通りだよー! 身体起こすだけでも反対されてたんだからこれ以上心配させないでー!』と嘆いている。
陽奈……、病気になっても元気になっても周りを心配させるんだな。
仕方ない、オレからも安静にしておくよう言ってやるか。
オレは「はぁ……」と小さく息を吐くと、改めて陽奈を見ながら「おい陽奈」と声をかけた。
「なにダイきちー!」
「あのな、お姉ちゃんも心配してるだろ? なんだかんだで手術終わりなんだからもっと病人らしく大人しくしとけよ」
「なんでー?」
「お前そんなことしてたら傷口開いて血ぃ出るぞ」
「血?」
「そう、血」
血が出ると聞いた途端、陽奈は「あーー……」と言いながら傷口あたりを触り出す。
なんだかんだで陽奈も子供だ。 血が出ると聞けばそりゃあ怖くなって動かなくなるだろうさ。
ククク……あははははは!!!!
これはどう見てもオレの作戦勝ち! 子供チョロいぜ!!
そうオレが自分の話術に酔いしれだした……その時だった。
「いや、多分大丈夫! なんか触ってもちょっと痛いだけやし!」
「「『え』」」
そう言うなり陽奈は体を捻りながら優香の制止を離脱。
その後オレに元気なことを証明したかったのだろう……陽奈は掛け布団を蹴り飛ばして身体の正面をオレに向けた。
陽奈のやつ……一体何を?
先ほどの茜と同様、陽奈が何故か入院着の下を履いてないのは一旦置いといて、陽奈は「見ててよダイきちー!」と言いながら両手を勢いよく挙げる。
「ひ、陽奈?」
「陽奈、こんなに元気ーー!!!」
なんという恐れ知らずなのだろうか。
そう元気に口にするなり陽奈はあろうことかその両手をブンブンと上下に振り始めたではないか。
「「『うわあああああああああ!!!!』」」
その場にいたオレや優香、愛莉の額から一気に冷や汗が流れ出る。
「お、おい陽奈やめろこら!!」
「大丈夫やってー! これ見たら先生、陽奈のことすぐに退院させてくれるかなー!」
「んなわけねーだろ! お姉ちゃん、陽奈を止めて!」
「無理だよー! 変に力入ったら傷口開いちゃうかもしれないじゃん!」
「た……確かに」
なら……これならどうだ!!
オレは心の中でこう叫ぶ。
愛莉さん!! 早く陽奈に憑依して安静にさせてくれ!!!
『無理だよーー!! 今の陽奈ちゃん元気すぎて入ろうとしても弾き出されちゃうんだよーー!!』
くそ!! ならどうすれば!!!
必死に考えていると丁度いいタイミング!!
どこかで話をしていたのだろう……医師とともに陽奈の母親が中に入ってきた。
「あ、おばさま!」
優香が焦った声で陽奈の母親に呼びかける。
「ん、どうしたの優香ちゃ……」
「見て見てママーー!! せんせーー!! 陽奈、こんなに元気やけんもう退院して良いやんねーー!!!」
「「ーー……」」
うん、そうなるよな。 医師も陽奈の母親もそんな陽奈の姿を見るなり顔が青ざめてくるわけで……
「ちょっと陽奈ちゃん!! なにやってるの!! 安静にしてなさいって言ったでしょ!!!」
「えーー!! でもほら、陽奈元気やけんーー!!!」
「そういう問題じゃなくて!!」
母親の後ろでは医師が「術後すぐにこんなに動けるなんて信じられない……」と声を震わせている。
医師がそう言うってことは陽奈の元気さはそれほど異常なことなのだろう。
これも命のタスキを繋いでくれた茜のおかげ……なんかそう考えると涙が出てくるぜ。
オレが1人感動していると、陽奈の母親が「ダイキくん!」と声をかけてくる。
「あ、はいなんですか?」
「陽奈ちゃんを止めるから……ダイキくんも手伝って! 優香ちゃんも!」
「わ、わかりました」
優香が先ほど『無理に止めると変に力が入って傷口が開くかも』とか言っていたけどなりふり構ってはいられないのだろう。
オレと優香、そして医師が焦りながらも陽奈のもとへと駆け寄った……その時だった。
「ねぇせんせー! 陽奈、見ての通り元気やけん、いつ退院しても大丈……」
プッシャー
ーー……あ。
突然陽奈の胸元から鮮やかな赤色のシャワー。
「ーー……ありり?」
一気に陽奈の顔が青ざめる。
もちろんそれは陽奈だけではなくオレたちも同様。
一瞬の沈黙が支配する中、陽奈がポツリと一言……
「も、もしかしてこれ陽奈の……?」
シャワーの出所に視線を向けた陽奈はこの状況がまだ理解できていないのだろう。
口をパクパクとさせながらしばらくそれを見つめ、そしてーー……
「ーー……きゅうぅうう」
パタン。
「「「『うわああああああああああ!!!!!』」」」
こうして気絶した陽奈は再び医師や看護師さんたちによって再び手術室へ。
幸い傷口が少し開いただけで済んだらしいのだが、今回の件を踏まえて陽奈は傷口が完全に閉じるまでは絶対的な安静……陽奈の母親同意のもと、緩くではあるがベッドの上で拘束されることになったのだった。
そして陽奈の一件が終わりホッと胸を撫で下ろしていると優香が小さく「あっ」と声を出す。
「どうしたのお姉ちゃん」
「ーー……おばあちゃんのこと忘れてた。 もう検査とっくに終わってる時間だ」
「あ」
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ちょっと挿絵描く時間なかったのですが描きたかったのでラフですが!
やっと陽奈元気になりましたあああああああ!!!!




