309 進展!!
三百九話 進展!!
「確か……この階だったよな」
翌日の朝、福田祖母の退院のため病院へと迎えに行ったオレと優香。
福田祖母は最終検査の診断を受けている最中だったので優香は陽奈の部屋へ、そしてオレは場所の記憶が曖昧だったのだが美香の体に転生した茜が入院している部屋へと向かっていた。
看護師さんに部屋を聞こうか迷ったんだけど今の茜は身元不明の少女。
オレが知ってるとなれば色々と聞かれそうだからな。 ここは静かに侵入するより他にない。
オレは周囲の視線を掻い潜りながら茜の入院している部屋の前へ。
ノックの音すら気づかれる可能性があったので、中にいる茜には申し訳ないが音を立てないよう、静かにドアをスライドさせて中へと侵入したのであった。
◆◇◆◇
どうやらオレの記憶は正しかったようで、ベッドの上には茜。
しかしまだおネムの時間だったようでスースー寝息を立てて眠っている。
オレは起こそうと茜のもとへと近づいていったのだが……
「ーー……ハッ、これは」
オレの目線は茜へではなくベッドの下へ。
そこに落ちていたあるものへと強制的に視界がロックされる。
そう……そこに落ちていたあるものとは……
「い、イチゴ……パンツ」
そこには脱ぎ捨てられてベッドから落ちたのだろう……美香が普段愛用していたあのイチゴパンツが無防備に落ちている。
オレは一瞬茜をチラ見、その後音を立てないよう気をつけながらしゃがみ込んでそのパンツを手に取った。
「お……おおおおおおおお」
どこがとは言わないが、とある部分にはいい感じのシミが。
鼻を当てて香りを嗅いでみると、当たり前なのだがそこには付録独特の香りではなくJSの香り。
ーー……てかあれだな。
優香や結城のパンツをほぼ毎日のように嗅いだり触ったりしていたからこそ実感するんだけど、所詮は付録のパンツ……触り心地や布の生地が全くの別物だ。
よくあの時のオレはこれで興奮してたものだぜ。
まぁ今はそれをJSが履いてたという理由だけで価値が国宝級に跳ね上がっているんだけどな!!!!
オレがそんな尊い香りを必死に嗅いでいると茜が起きる寸前なのか「んんっ……」と声を出しながら眉間にシワを寄せる。
それに気づいたオレはすぐさまパンツを自身の背後へ。
ノールックで綺麗に丸めながら折り畳むと、それをバッグの中へと速やかに忍ばせた。
……その時だった。
コンコンコン
数回扉がノックされると、カルテを持った看護師さんが中へと入ってくる。
「あれ、君は確か最近よく見る……どうしてここに?」
「あ」
あっぶねええええええ!!!
あと数秒遅れてたらオレがパンツカバンに入れてるところ目撃されるところだったぞーーー!!!!!
オレは自分の強運に感謝しながらも、自らのもとへと帰ってきた運命のイチゴパンツに心の中で『おかえり』と微笑みかける。
「ねぇ君、聞こえてるかな?」
「ハッ!!!」
そうだ、とりあえずパンツは大丈夫だったとして、ここにオレがいる理由をどう説明する!?
オレがどう返答しようか混乱していると、先ほどのノックで目が覚めたのだろう……茜が知らない間に上体を起こしており「私が呼び止めたんです」と看護師さんに話し出した。
あ、アカネええええええええええ!!!!!!
「えっと……そうなの?」
「はい。 1人で寂しかったから話し相手になって欲しいってお願いしたんです」
この茜の言葉に看護師さんは納得。
「そうだったのね」と頷きながらオレに「ありがとう」と小さく声をかけた。
「それであの……私に何か?」
「あ、そうそう。 あのねお嬢ちゃん……自分のお名前とか分かるかな」
「えっと……すみません、今日も思い出せないみたいです」
茜が「昨日に引き続きすみません」と謝ると、看護師さんは「いやいや、いいのよ?」と即座にフォローに回ってここに来た理由を話し出した。
「あのね、お嬢ちゃんの親戚だって方が見つかったの。 会いたいって言って病院に来てるんだけど……どうかな」
おいおい親戚ってなんだ聞いてねえぞ。
茜もオレと同じ考えらしく「親戚……ですか?」と看護師さんに聞き返している。
「そうなの。 何も覚えてないんだもんね。 もし怖いなら断っておくけど……」
「いえ、私も会いたいのでよろしくお願いします」
「「え」」
オレと看護師さんの声が重なる。
「えっと……いいの? 緊張しない?」
「大丈夫です。 私も早く自分が誰なのか知りたいので」
こうして看護師さんは「じゃあ連れてくるからちょっと待っててね」と言い残して部屋を後に。
扉が閉まったのを確認したオレはすぐに茜に話しかけた。
「なぁ茜、いいのかよそんな簡単に会ってみて。 今までもオレに親戚の話とかしたことなかっただろ」
「まぁね。 実際に私、親戚あまりいないし。 でもダイきちくん、考えてみて」
そう言うと茜は人差し指を立ててオレに向けてくる。
「ーー……何を?」
「ほら、こうも考えられないかな。 これがもしかしたら美香さん……神様の発動させたおまじないかもって」
茜がニコリと微笑みながらゆっくりと布団をめくってベッドから足を出す。
「お、おい……いいのか寝てなくて」
「うん。 だってもうどこも不調ないんだもん。 それに今から来る親戚って人と会うのに座ったままじゃ失礼でしょ?」
「ーー……そうなのか?」
「そうなの。 せっかく元気なんだもん、ベッドの前で立って迎え入れようかなって」
そう言うと茜は……本当に元気な身体になったんだなぁ。
ピョンと軽く跳ねるようにベッドから降りると「ほら、もうこんなに元気」とオレの前でも数回小さく跳ねる。
オレはそんな元気な茜を微笑みながら見つめていたのだが……
「お……おおおおおおおお!?!?!?!?」
なんとなく視界の下の方が肌色だなぁと感じたオレは視線を下に下ろしてみると、なんということだろう……茜のやつ、入院着のズボンを履いていないじゃないか!!!
しかもさっきパンツを落としていたということで、本来着用しているはずの最終防衛布地もないわけで……
「ん? どうしたのダイきちくん。 さっきから下の方見て」
「え、あ、いや」
それでも視線を移さないオレを不思議に思った茜は自身の視線をオレの視線が向けられている先へ。
そしてとうとう気づいてしまう。
「ーー……あ」
それは恥ずかしさと色っぽさが混じり合った「あ」。
そんな貴重な「あ」を発した後に茜は両手で股の辺りを隠しながらゆっくりと視線をオレに向けてくる。
「ダ、ダイきちくん?」
「ハイ」
「この辺にさ、パンツ落ちてなかった?」
「エ? パ、パンツ? 見テナイデスネ」
「そ、そっか。 じゃあ神様が夜中に取りに来たのかな……」
その後茜は頬を茜色に染めながら小声でオレに「えっち」。
その「えっち」もとても儚げで恥ずかしそうで色っぽくて……
オレは即座に脳に録画モードを指令。
自分の目を通じて脳内メモリーへと直接録画を開始したのであった。
お読みいただきましてありがとうございます!
下の方に星マークがありますので評価していってもらえると嬉しいです!
感想やブクマ・レビュー等、お待ちしております!!!
運命を変えてくれたパンツとの運命的な再会……なんてロマンチックなのでしょう!笑




