307 メッセージ!!
三百七話 メッセージ!!
「気づいたら私ね、天界ってところにいたんだ」
病室内。 美香の姿をした茜はベッドに腰掛けながら天界での出来事を話しだした。
茜の話では、最初茜はそこがどこか分からずに周囲を見渡していたらしい。
すると突然背後から声をかけられ、振り返るとそこには美香の姿ではない……数年前に出会った真の姿をした神様が立っていたとのことだった。
ーー……オレも似たような感じだったなぁ。
「そこで何を話したんだ?」
「うん、神様はそこでこう言ったの。 『やっぱり来たか』って」
「そうなんだ」
「それでね、『はい来ちゃいました』って答えたらすぐに私に手をかざしてきて……」
「ーー……え?」
「それで神様が『茜ちゃんは生きた方がいい』って呟くと、私の意識がそこで飛んで……気づけば神社の境内付近で横になってたんだよね」
茜はオレに「これが私の覚えてることだよ」と言いながら人差し指を立てる。
ちなみにその後茜は『これは夢かもしれない』と思ったらしくその場で再び目を閉じ眠ってしまい……結果、通りすがりの人に発見、病院へ運ばれていたとのことだった。
ーー……ん?
「それだけ?」
「うん」
「他に何も会話もなく?」
「うん」
「オレに伝言なんかもないの?」
「ないよ」
「えええええええええええええええ!?!?!?!?」
オレが頭を抱えながらしゃがみ込む。
おいおいオレと神様の仲じゃねえか!!
なんでオレに何も伝えないまま行っちまうんだよ!!!
そんなことを考えていると数日前……美香が『帰る』と言っていた日のことを思い出す。
確かあの時、美香は去り際に……
『じゃあダイキ、バイバイ』
もしかしてあれが最後の別れの挨拶だったってことなのかよ。
だったらもうちょっと分かりやすく寂しそうに言えっての! 無表情だから分かりづれえんだよ!!
オレがあの時勘付いていればと後悔していると、何かを思い出したのか茜が「あっ」と言いながら両手を合わせた。
「ん、どうしたの?」
「そういや私の意識が消える寸前に何か言ってたような……」
「何か?」
「確か……手紙が何とかって」
「!!!!」
オレはその『手紙』という単語を聞いて脳に電流が走る。
そういや美香から貰ってたんだった!! 陽奈や茜の件で色々あってその存在自体忘れてたぜ!!
「あーー、確かここら辺にーー!!」
オレはバッグの底を掻き分けてあの封筒を取り出す。
前に美香から『茜が退院するまでに見たら一生片思いで終わる』という恐怖のワードを言われたので、簡単に視界に入らないよう、奥深くに忍ばせておいていたのだ。
「えっと……それなに?」
茜が不思議そうな視線をその封筒に向けてくる。
「あー、これは前に美香からすぐには読むなって言われてたんだけど……」
茜の言葉からしてもう読んでもいいってことなんだよな。
オレは「頼むからタイミング合っててくれよ」と小さく呟きながら封を開け、中に入っていたベーシックな便箋を取り出し目を通していくことに。
そこには結構な達筆……そして美香の口調のような感じでこう書かれていた。
====
福田ダイキへ
これを読んでいるということは美香の姿をした茜がいると思う。
それは正真正銘の茜。 安心してくれていい。
そしてダイキはこう思うはず……茜の魂を他の誰かに転生させれば良かったんじゃないかと。
でもそれはダイキの例を見て分かった。 あれは危険。
誰もがダイキのような変態脳じゃないから、人によっては前世よりも大変なことが待ってるかもしれない。
だから一番恵まれた……神がかった運を持ちながらも恵まれた身体を持ち合わせている美香を選んだ。
このことはこの地の神々には特別に了承をもらっている。
声を大にしては言えないけど、みんな交渉に応じてくれた。
だからエマちゃんのリップや西園寺ちゃんの靴下、奴隷・水島花江のパンツはもうない。
これよりワシは神の仕事に戻る。
少しの間だけど楽しかった。
今度は天寿を全うしてからまた会おう。
堀江茜へ
前に茜のその先の話をダイキ抜きでしたことがあると思う。
あの時は『このままだと悲しい結果……でも前向きに生きていると未来は変わる』と嘘をついた、ごめんなさい。
茜が少しの間元気になったのは美香の……神の波動に当てられていただけ。
でもその美香の体はとても神聖だから、今後病気になることもなければ大きな怪我をすることもない。
だから安心して残りの長い人生を謳歌するといい。
もし可能なら……もう視えないかもだけど、あの神社に……またワシに会いに来てくれると嬉しい。
茜に幸あれ。
2人へ
最後に。 これを2人が読んだ時、美香の込めたおまじないが発動する。
それがどんなおまじないなのかは茜と2人で探してくれたらいいと思う。
====
「「ーー……」」
前の美香……神様から貰った手紙を読んだオレたちは静かに顔を見合わせる。
「なんか……オレ感動しちゃったかも」
「私も」
まったく……急な男気を見せてくれるじゃねえか。
惚れた女の子のために、自らリスクを犯してまで作り上げた最高傑作の身体を譲り渡すなんて。
茜は目に涙を浮かべながら何度も神様からのメッセージを読み返している。
それにしてもーー……
「なぁ茜、この最後の文章……どういう意味だと思う?」
オレは神様からの手紙のラストの部分を指差す。
「あ、『美香のおまじないが発動』ってところ?」
「うん」
「そこはあれじゃないかな。 私たちが今後も元気に過ごしていけるように願いを込めた……とか?」
「ーー……それはないと思うけど、そうなのかなぁ」
だって全員の記憶を操作して学校に潜りこんだりするくらいだぜ?
そんなまさに神がかった力を持ってるんだから何をしてきてもおかしくはない。
そんなことを考えていると、ポケットの中に入れておいたスマートフォンが振動していることに気づく。
確認してみると優香からのメール受信通知だ。
【受信・優香】ダイキ、まだかな。 そろそろ今日は帰ろうかなって思うんだけど。
「ーー……やっべ」
時間を確認してみると結構遅めの時間。
「ちょっとごめんな茜。 今日はオレもう帰らないと」
「そうなんだ……。 明日は来れる?」
「もちろん。 明日はおばあちゃんの退院日で病院来るからその時にまた話そう」
「わかった。 じゃあ……また明日」
こうしてオレは再び茜に「おかえり」と言ってその場を後に。
優香とともにタクシーで福田祖父の待つ家へと帰ったのだった。
ーー……てかあれよな。
冷静に考えて他の神様もエマのリップや西園寺の靴下で喜んでたんだよな?
いい趣味してるじゃないですか。
お読みいただきましてありがとうございます!!
下の方に星マークがありますので、評価していってもらえると励みになります!!
感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!




