297 負けられない戦い!!
二百九十七話 負けられない戦い!!
「まさかここでもダイキとお風呂入ることになるなんてね」
脱衣所内。 優香が少し顔を赤らめながら呟く。
「ん? お姉ちゃん何か言った?」
「ううん、何も」
そうは言っても視線はちゃっかり釘付けなんだよなぁ……。
そりゃあそうだ。 だってもうオレの魂は既に臨戦態勢……これから始まる『男としてのプライド』を守る戦いに燃えたぎっている一方で、楽しみにもしているのだから!!!
もうジンジン燃えているオレの身体は止まらないぜ!!!!
「それじゃあ行こうお姉ちゃん!」
足を負傷しているオレは、転ばないように優香と手を繋ぎながらいざ戦いの場・浴室へ。
しかしオレも緊張していたんだろうな。
「うぉっと……!」
浴室に入るやいなや濡れた床で足が滑りバランスを崩して優香に抱きついてしまう。
「わわっ! だ、大丈夫ダイキ!?」
「あ、ごめんお姉ちゃん」
「う、うん。 大丈夫ならいいの。 とりあえずほら、バランス取り戻そ? 色々と当たっててお姉ちゃん恥ずかしいから」
優香が小さく頷きながら「足下気をつけてね」と言いつつ目線に気を配りながらオレをゆっくりと立たせる。
うわああああああ!!! その照れてる顔が可愛い!!
戦いが始まる前から理性が狂って……でも負けないぞ耐えるんだ!!
さぁ証明するぞ!! 優香の間違った認識を今夜ここで改めさせてやるぜ!!!!
「じゃあ先に身体洗っちゃおうね。 ダイキ、ここ座って」
「はい」
「えっと……ダイキ、ここは自分で……」
「いえ、お姉ちゃんお願いします」
「えええええ!?!?」
優香はかなり動揺しながらも渋々了承。
一体優香はどこを見て言ってたんだろうな……オレ、常に上を向いて生きてる人間だから分からなかったぜ。
「それじゃああの……ダイキ、洗うよ」
「お願いしまぁす!!!!」
こうして戦地に赴いて早々に戦闘開始。
オレは心の中で歓喜の雄叫びを上げながらも必死に耐えていたのだが……
「ーー……痛かったら言ってね」
ンーーーーーーーッ!!!!
「えっと……どう?」
ンンーーーーーーーッ!!!!
「あ、ごめんねダイキ、石鹸で手が滑って……」
アカーーーーーーーーン!!!!
「ハーーーックション!!!!」
◆◇◆◇
ズーーーーン。
呆気ない終わりを迎えたオレはシクシクと目には見えない涙を流しながら二階の部屋へ。
スマートフォンを耳に当てながらとある人物に電話をかける。
『もしもしダイキ? どうしたのよいきなり』
「エマァアアアアアーーーーーーー!!!!!!」
こういう時には元JKだったエマに話すに限るよな。
オレは恥を捨ててエマに相談することに決めたのだった。
「あのさエマ……」
『何よそんな泣きそうな声出して。 何かあったの?』
「エマはその……早い子ってどう思う?」
オレの突然の質問にエマは「はぁ?」と困惑。
『早い子? 何の話よ。 足の話?』
「ちがう」
『え、じゃあ頭の回転の話?』
「それもちがう」
『じゃあ何よ』
「だからさ、ムニャムニャムニャムニャ……」
オレは部屋の近くに誰がいたとしても聞き取れない程の声の大きさでエマに相談。
するとエマはこんな悩みを打ち明けられるとは思ってもみなかったのだろうな……『な、いきなり何聞いてんのよ変態!!!!』と声だけでも顔が真っ赤になっていることが分かるほどの感情を乗せてオレにぶつけてきた。
「そんなこと言わないでさ、オレ……真剣に悩んでんだよ。 開始数分って早いのか?」
『なんでそれをエマに聞くのよ!』
「だってエマ、元JKじゃん。 JKだったらそういう話とかしてるんじゃないの?」
『しないわよ!! だからそれが早いか遅いかなんてエマに分かるわけがないでしょ!! あーもう、ダイキのせいでちょっと想像しちゃったじゃない、最悪ーー!!』
ーー……くそ、エマも分からないのか。 どうすればいいんだ。
オレが肩をガクリと落としていると、エマが『ていうかなんでそんな話になったわけ?』と尋ねてきた。
「お姉ちゃんと星さんのメールのやり取りが偶然目に入ってさ、そこにオレが早い子なんじゃないかって話になってて……それでこれは男としてどうかと思い、リベンジした結果が……」
『ーー……で、エマに相談したと』
「はい」
スピーカーの向こう側からは『あらら』の声。
同情するならアドバイスか何かをくれ。
『じゃあ星さんに相談すればいいじゃない。 あの人だったら色々経験豊かそうだし』
エマが『これ名案じゃない?』と言いながらオレに尋ねる。
あー、そうか、エマも一度ギャルJK星とお買い物とか行って仲良くなってたんだったな。
しかし……
「あのなエマ。 今エマは……星さんのことを色々経験豊かそうだと言ったよな」
『えぇ、言ったけど……どうしたの?』
「これはオレもちょっと驚いたんだが、星さん……あんな明るい性格のくせして未経験なんだ」
『ウソ!?!?』
エマがさっきから話していて1番の驚きの声を上げる。
ーー……てことはオレが早い子だったってことは予想の範囲内だったってことなのか?
オレが深いため息をついて落ち込んでいるとスピーカー越しから『ねぇダイキ、今の話本当なの!?』とエマがしつこく問いかけてくる。
「あぁ、その通りだ。 てかどうしたエマ。 やけにそこに食いつくな」
『だってそうじゃない? あんなに明るくて美人で面倒見のいいお姉さんがまだ誰の色にも染まってないなんて……ちゃんと自分を大切にしてる証拠じゃない』
エマが『そんな自分を持つ女にエマもなりたいなー』と自分の世界に入り出す。
ーー……まぁ前に一目惚れして、その人の好みに全力でなろうとしてたけどな。
これはエマの理想を崩さないためにも言わないでおいてあげよう。
それからはオレの悩み相談のことなど一切忘れてしまったのか、エマはギャルJK星の話ばかり。
『また一緒にお買い物行きたいなー』などとエマが話し、気づけば夜もいい時間になったので通話を終了したのであった。
納得のいかないオレはとりあえずメールで送っておくことにする。
【送信・エマ】で、結局早い子ってどうなの女子的に。
【受信・エマ】あーそんな話してたわね。 別にいいんじゃないの? エマは分からないけど。
【送信・エマ】そうなのか?
【受信・エマ】だって誰にも迷惑かけてるわけではないんだし。
ーー……確かにそうだな。
普段は迷惑なんかかけてないもんな。 今夜は優香にはかけ……ゲフンゲフン!!!
うむ。 流石はエマ、いい事を言ってくれるぜ。
それからオレはお風呂場で盛大なくしゃみをかましたせいもあるのだろう……いい感じに疲れていたのでそのままぐっすりと眠りについてしまったのだった。
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