296 男のプライド!!
二百九十六話 男のプライド!!
夜。 福田祖父母の家のリビングでテレビを観ていると、机の上に置いていたスマートフォンが振動する。
「ダイキ、スマホ震えてるよ」
向かい正面に座っていた優香が「ほら」とオレのスマートフォンを指差す。
「あ、本当だ」
オレはスマートフォンを手に取り確認。
どうやらメールの受信通知……西園寺からだ。
【受信・西園寺】まだ帰れそうにない?
ーー……『まだ』って、もうそんなに日にち経ったかな。
オレはそのメールを見た後に今日の日付を確認する。
そうか……もうこっちに来てから1週間ちょっとが過ぎてるのか。
なんだかんだで早かったなぁ……と感じていると、優香が不思議そうにオレの顔を見ていることに気づく。
「お姉ちゃん?」
「あ、ううんごめんね。 ダイキが何考えてるんだろうなーって思ってさ」
「オレが?」
「うん。 なんか感慨深そうな表情してたからさ」
優香はゆっくりと立ち上がるとオレの後ろへ。
そしてなんということだろう……優香がそのまま背後からオレを優しく抱きしめてくるではないか。
「お、おおおおお姉ちゃん!?!?」
オレは突然のことに動揺しながらも、優香の柔らかさに集中させながら尋ねる。
「ダイキ、寂しくない? 大丈夫?」
「えぇ!?」
もし「寂しい」と答えた場合どうなるのでしょうか!!
もしかして禁断の姉弟の愛物語が始まるんですかあああああ!?!?
オレは僅かな期待を抱きながら「なんで?」と尋ねる。
「ほら、最近ダイキ、学校楽しそうだったからさ。 そろそろ皆に会いたいんじゃないのかなーって」
優香が「ごめんね、お姉ちゃんについて来させるような感じになっちゃって」と耳元で切なそうに囁く。
ビクビクゥ!!!
オレ……耳弱いんですぅ!!!
耳から身体全体に伝わっていく快感に心震わせながら喜んでいると、優香が「ダイキ? どうしたの震えてるけど……」と顔を覗かせて尋ねてくる。
や……ヤバい。
いくら姉とはいえ、性感た……ゲフンゲフン、気持ちいいところがバレるというのは結構恥ずかしいものがある。
オレは必死に作り笑いで誤魔化しながら、無理やり話の流れを変えていった。
「そ、そういやお姉ちゃんはさぁ!!」
「ん? お姉ちゃんがどうしたの?」
「お姉ちゃんは寂しくないの? 学校の友達に会えなくて。 星さんとか」
「美咲なら連絡毎日取ってるよ。 ほら」
そう言うと優香は自身のスマートフォンを取り出してメールのやり取りをオレに見せてくる。
もちろん内容を読ませないように素早くスライドさせていってはいるのだが、こういう時のオレの動体視力を舐めちゃあいけない。
数行の短文だと読めちゃうんだよなぁ!!!
もちろん見せてもらっているのは受信ボックスなので優香からの送信メールまでは確認できないが、そこにはこんな感じで書かれていた。
【受信・美咲】ねね、そういや話変わるけどさ、そっちではゆーちゃんとダイキって別々の部屋なわけ?
【受信・美咲】だってさ……ほら、年頃の男の子だったら色々あるべ? 夜な夜なさ。
【受信・美咲】やってるに決まってんじゃん! だってほら、ゆーちゃん前に言ってたべ? ダイキが足の指痛めたとき、お風呂で身体洗ってあげてたらちょっとの反動で出てたって。
【受信・美咲】案外聞き耳立ててみたら聞こえんじゃない? てか身体洗ってる短時間で出るってもしかして早い子なのカナ。
な……なんて会話してるんだ優香ああああああああ!!!!!
オレは背中から伝わる感触と、優香とギャルJKの色々とギリギリなやり取りで顔を一気に赤らめていく。
「……とまぁこんな感じで結構美咲とはやり取りしてるんだけど……って、あれ? ダイキ? どうしたのそんなに顔赤くして」
優香がスマートフォンをポケットにしまいながら「おーい」と尋ねてくる。
これは……あれだ。
会話の内容は恥ずかしいけども、誤解は解いておかなければならない。
そう……
男として!!!
オレはゆっくり立ち上がると優香に視線を向ける。
「ん? どうしたのダイキ」
「ちょっとトイレ行ってくるよ」
「あ、そっか。 うん、行ってらっしゃい」
オレはユラリと揺れながら歩き出すと、視線をリビングの扉の近くに置いてあった……ドッシリとした食器棚に狙いを定める。
ーー……まさかここでまたあれをやることになるとはなぁ。
オレは静かに右足を後ろにあげると、勢いよく棚の角目掛けて足を振り下ろして小指をピンポイントでぶつけにかかる。
見せてやるぜ優香!! オレが早い子じゃないって証拠をよぉ!!
ウルァアアアアアアアアア!!!!!
バキィ!!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
流石に3回目ともなると狙いの精度も格段に上がっており、見事に小指にクリティカルヒット。
オレは悲鳴を上げながらその場で転げ回る。
「だ、ダイキ!? なんでまたぶつけたの!?」
「よ……よそ見してたら」
「えええええ!? よそ見しててそこ当てる!?」
驚きながらも心配して駆け寄ってきた優香の手をオレはガシッと掴む。
「ダイキ、立てる?」
「ーー……ムリ」
「ええええ、でもトイレ今から行くんでしょ?」
「トイレは……もういいや。 ただ……」
「ただ?」
「流石にお風呂は難しいからさ、お爺ちゃんが上がったら、一緒に入って」
「ええええええええええええええ!?!?!?!?」
こうして今夜、男のプライドを賭けた戦いが幕を開けたのだった。
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