293 涙の理由!!
二百九十三話 涙の理由!!
翌日の病院内。
オレは午前中から福田祖母の部屋で話をしていたのだが、茜からのメールを合図に「また来るね」と部屋を出る。
ちなみになんてメールだったかというと、
【受信・茜】検査終わって部屋に戻ったよ。
よし……やるぞおおおおおおおおお!!!!!
オレは近くのコンビニでアイスを購入し、駆け足で茜の病室へと向かった。
◆◇◆◇
「ごめんねーダイきちくん、私あまり身体を冷やし過ぎたらダメなんだー」
ガーーーーーーン!!!!!
オレの手からアイスの入ったレジ袋がスルリと抜け落ち床に落ちる。
「そ……そうなの?」
「うん。 ジュースくらいならいいんだけど、それより冷たいアイスとかは身体が冷えてびっくりしちゃうからって」
なんということだ……でも確かにそうだ、入院してるんだから何らかの制限がかけられていてもおかしくはない。
もっと事前に調べておくべきだったぁ……!!!
オレが1人で「ぐああぁ……!」と項垂れていると、茜が「そういや神様は?」と尋ねてくる。
「美香?」
「うん。 今日は一緒じゃないの?」
「あー、うん。 今朝メールが来たんだけどさ、とりあえず見た方が早いかな。 ほらこれ」
オレは今朝美香から届いたメールを表示させて茜に見せる。
【受信・美香】今日はこの地域を守護する氏神に挨拶しに行く。 本当は茜に会いたいけど、これも神の務め。 残念。
「へぇ、神様の世界にも挨拶とかあるんだね」
「ね。 オレもこのメールで初めて知ったもん」
あ、ちなみに美香からのメールに書かれていた【氏神】って単語。
よく分からなかったから調べてみたんだけど【ウジガミ】って読むらしく、その土地に生まれた者を守る神様のことなんだって。
その後オレは必要のなくなったアイスを備え付けの小さな冷凍庫の中へと入れてもらい、何気ない会話を開始させる。
内容はそれこそ『どんなアニメ見てた?』とかそういった初歩的な会話からだよな。
だってオレそこまでトークスキルないんだもん。
「うーーん、私はあまりアニメとか見てこなかった人間だからなー」
はい! オレの会話の引き出し終了しましたぁーー☆
仕方ないじゃないか!! オレの当初の予定では【アイス横からパックンチョ作戦】する予定だったんだから!!
オレは必死に何か会話のネタが転がっていないか周囲を見渡してみることに。
すると……
ーー……ムムッ!!!
オレの視線が茜のベッドの下の方の置いてある紙袋に向けられる。
そこから少し外にはみ出しているもの……あれは間違いない。
ブラジャーだ!!!
少ししか見えてはいないが薄いピンク色でリボンとか付いている可愛い見た目。
昨日着用時の姿を見てしまってはいたのだが、もしあの時見れていなかったとしても普段優香のブラを見まくっていたからこそ分かる……中学生にしては結構大きい方だ!!
いやぁブラジャーやパンツって本当に夢があるよね。
だって1日の大半を持ち主の肌と共にしてるわけなんだから。 そりゃあ見たくもなるし、触りたくもなるし、嗅ぎたくもなるわけだ。
なのでオレはダメだということは分かってはいながらも、そのちょこんと見えている茜のブラジャーに視線をロックさせる。
まぁそうしていると、もちろんこの不自然さに気づいた茜もそこに視線を向けてくるわけで……
「あ、こらダイきちくん!」
茜が少し頬を赤らめながら手を伸ばして、はみ出ていたブラジャーを紙袋の中にギュッと押し込む。
ーー……グッバイ茜のブラジャー。 またいつか会おうぜ。
オレは心の中で茜のブラに別れを告げると「あははは」とごまかし笑いをしながら茜に視線を移す。
「ごめん、ついつい」
「もーっ! これがその年の男の子だったらまだ許せるけど、ダイきちくんって私と同い年か少し上くらいなんでしょ? だったら平気なものも恥ずかしいよ」
あー、そうだった。
茜にはオレが前世で死んだ時の年齢まだちゃんと教えてなかったんだった。
これは教えてあげるべきだろうか……そんなことを考えていると、なぜだろう……オレの目から自然と涙が零れ落ちていることに気づく。
「ん? え、あれ? あれれ?」
焦って拭うも涙が止まらない。
「えぇ!? ダイきちくん!? どうしたの大丈夫!? 私なんか変なこと言っちゃった!?」
そんなオレの姿を見た茜が心配そうに身を乗り出してティッシュの箱を渡してくる。
「あ、ごめん。 でも自分でもよく分からない」
「どこか痛いの?」
「ううん、痛くない」
「悲しいの?」
「悲しくない」
「じゃあ……花粉症?」
「なんでこんな時期に……」
「ふふ、冗談」
オレの素のツッコミに茜が「ごめんね、不謹慎だったかな」と手を口元に当てて笑う。
それがもう可愛いのなんのって……
「ーー……ん?」
オレはそんな茜を見ながら考える。
「どうしたの?」
「いや、なんていうか……さっき茜さん、オレに『悲しい?』って聞いたよね」
「うん」
「思ったんだけど、むしろ今の感情としては……『嬉しい』なんだよね」
「嬉しい?」
「うん。 なんでだろう……」
オレは少しは勢いは治ったものの、未だ流れてくる涙をティッシュで拭いながら考える。
どうしてオレは嬉しいって感情になったんだ?
「それってさ、私のその……ブラを見たからじゃないの?」
「まぁそれは最高に嬉しかったけど……」
オレは再び茜のブラジャーの押し込まれた紙袋に視線を向けた。
「ダイきちくん?」
「うーーん、とりあえず本当にそうなのかもしれないから、ちょっと試してみていい?」
「ーー……え?」
◆◇◆◇
「ふむふむ……なるほど」
オレは茜の許しを得て、先ほどはみ出していたブラを手に取るとお椀型の部分を指でフニっと押し込む。
「だ、ダイきちくん?」
「なるほどなるほど」
「ね、ねぇ。 流石にそんなに触られたら恥ずかしいんだけど……って、聞いてる?」
うむ、流石はJCのブラジャー。 可愛さにステータスが振られているだけあって可愛いもの好きのオレからしたら見ていて飽きない。
でもそれはそれだけであって……
「んーー、やっぱ違うなぁ」
そう、嬉しいのは嬉しいし色んなものがスタンダップし始めているのだが、涙は出てこない。
「ねぇ茜さん」
「え、はい?」
「他にも色々試していい?」
そう尋ねると茜の頭上にはてなマークが出現。
茜は首を傾げながらも「うん、別にその……いいけど」と呟いた。
「じゃあ遠慮なく」
オレはゴクリと生唾を飲み込むと両手に持つブラを顔の前へ。
そしてそれをギュッと自身の顔面に押し付ける。
いざ……吸引の儀!!!!
スーーーーーーン!!!
「ちょ、ちょっと!?!? ダイきちくん!?!?!?!?」
スンスンスーーーーン!!!
「ダイきちくーーーん!?!?!?」
スンスンスンスーーーーン!!!
パフパフ!!! スンスンパフパフ!!! スンパフスンスーーーーン!!!!!
オレはこの行為によって興奮度がMAXに。
茜の声など耳に届かずに極上のクッションの感触を存分に堪能していく。
グヘヘェ!!!
優香や結城とはまた違う香りだああああああ!!!!
あーーーペロペロしたい!!! ペロペロしたいぞおおおおおおお!!!!!!
オレの変態的欲求が限界突破!
もはや茜が見ていることなど忘れ、口から舌が出てこようとした……その時だった。
「は、はいもうお終い!!」
顔を真っ赤にした茜が手を伸ばしてブラジャーを無理やり取り上げる。
「あぁ……っ!!!」
「もう何してるのダイきちくん!」
「何って……あ、ついつい本能が……」
「同年代かちょっと年上にやられてるって思ったら恥ずかしくて死にそうだよもぉーー!」
茜は奪い返したブラジャーを両手で抱え込みながらオレに視線を向けた。
ーー……!!!!!
「それだ」
気づいたオレは小さく呟く。
「え?」
「そうか、涙の理由……これだったのか」
オレはゆっくりと茜に歩み寄ると、肩に手を当てて「ありがとう」と頭を下げた。
「えっと……ごめんねダイきちくん。 まったく話が読めてこないんだけど、さっき泣いてた理由分かったの?」
「うん」
「それは……私が聞いてもいいことなのかな」
茜のその質問にオレはゆっくりと首を縦に。
その後、先ほどの涙の理由を話すことにしたのだった。
「オレさ、こんな見た目だけど魂は年上じゃん?」
「うん」
「だから何をしたとしても……当たり前だけど、前世のオレより年下の人たちから子供扱いされてきたわけ。 まぁそれはこのこと誰にも言ってないし今後も言うつもりはないんだけど、茜さんが初めてだったんだ」
「初めて? 何が?」
「オレがこの身体よりも年上の人間だったって分かった上で、それを受け入れて接してくれてるのが」
大学時代の親友・工藤はアニメの話やフェチ話をしてようやく信じてくれたけど、茜の場合はオーラが見えるから……というのもあるけどオレが何を言うわけでもなくすぐに受け入れてくれた。
素の自分を受け入れてもらえるってこんなに幸せな気持ちになれるんだな。
オレは以前、エマが「自分は中身……魂が他の人間のもの」と言ってきた時のことを思い出す。
あの時……オレがエマの言葉をすぐに信じたら、エマのやつかなり安堵した表情で喜んでいたよな。
……今なら分かる。 確かにこれは心が晴れ渡っていくようだぜ。
「ふふ」
突然茜が笑ったのでオレは我に返り視線を茜に向ける。
「どうした? あーー、やっぱり変だった? オレの涙の理由」
そう尋ねると茜は「ううん」と首を左右に振って否定。
その後ゆっくりと手を伸ばしてオレの頬に添えた。
「あ、茜さん?」
「大丈夫。 私の前では自然でいてくれていいよ」
「!!!!!!」
ブワアアアアアアアアアアアア!!!!!!
茜の言葉によりオレの涙腺が一気に崩壊。
しばらくの間オレは茜に「ほら泣かないのー。 子供じゃないんでしょー?」とあやされていたのだった。
お読みいただきましてありがとうございます!
下の方に星マークがありますので、評価していってもらえると嬉しいです!!
感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!




