291 影響?
二百九十一話 影響?
美香と茜が対面して大体30分が経ったくらいだろうか。
オレが今何をしているかというと、そうーー……
トイレで時間を潰しているのだ!!!
どうしてこうなったかと言うと、それは少し前に遡る。
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それは美香が茜に数年前に会った神様だということを暴露した時だった。
『え……あの時の神様なんですか?』
『そう』
美香がまっすぐな瞳で茜を見つめながら頷く。
『でもその……あの時とは姿や性別が違うというか……』
『それは当たり前。 美香は茜が気に入った、だからこうして当時の茜の格好をしている』
……さ、さすがは神様。
普通なら気持ち悪いと思われることを危惧して言わなければいい内容なのにも関わらず正直に話してやがる。
でも今の美香の発言は、さすがの根がクールな茜でも若干引くだろうと思ったオレは視線を茜の方へ。 どんな表情・反応をするのか見てみることにした。
すると……
『え、神様……あの時の私のこと……気にいってたの?』
『美香が嘘を言ってるように見える?』
『ううん全然』
茜は顔を左右に放りながらそう答えると、再び美香の顔をじっくりと観察しだした。
『どうしたの、茜』
『いや、それにしては髪の毛茶色だなって思って。 当時の私って黒髪だったと思うんだけど……。 それにメガネもかけてないよ?』
『そこは美香のオリジナリティ。 でも嫌だったらメガネも外すし髪も黒くする』
『ううん、そこは別にいいよ。 だって私本人の身体じゃないわけだし』
それからも茜は美香に色々と質問を繰り出していた。
神様にもオーラが見えるのか、何故あの時神様は茂みの中をうろついていたのか、どうして私に声をかけたのか等……。
美香もそれに出来る限り返答し、答えづらい質問には『そこは禁則事項』と断っていたのだが……
『むぅ……、茜、さっきから質問ばかり』
美香が少し困った口調で茜を見上げる。
『あああ、ごめんなさい。 まさか生きてる間に本物の神様と話せる機会があるなんて思わなくて……。 でもあと1つ……あと1つだけいいですか?』
茜が人差し指を立てながら美香に頭を下げる。
『構わない。 でも答えられない場合は答えない』
『それでもいいから』
『わかった』
しかし何故だろう、美香の了承を得た茜がいきなりオレに視線を向けてくる。
『え、茜さん、何?』
『あの……ちょっとこれはダイきちくんには聞かれたくない話だから……』
茜が申し訳なさそうな顔でオレに両手を合わせる。
ーー……これって席を外せってことだよな。
まぁオレが聞いても問題ないことだとは思うんだけど、もしかしたら女の子によくありがちな恋愛相談とかなのかもしれない。
そう悟ったオレは茜に直接言葉で言われる前に『わかった』と席を立ち、部屋から出て行ったのだった。
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「……にしても遅えな」
やることも特別ないオレはトイレから出て近くの窓から外の景色を眺めることに。
そしてそれから少し経った頃……
「ダイキ」
声がしたので振り向くと、すぐ側で美香が立っている。
「あ、美香。 なんだ、呼びに来てくれたのか?」
「違う」
「え?」
「茜、検査の時間になった。 だから出てきただけ」
「なるほど」
ということで、オレは美香とともに近くにある小さな休憩スペースへ。
そこには中央に長机、その周囲に椅子が等間隔で置かれていた。
「ここでゆっくりするか」
「そうする」
偶然にも今このスペースにいるのはオレたちだけ。
美香は椅子に座ると同時にまるでスライムのようにヘナヘナになりながら机の上に突っ伏した。
「お、おい美香どうした」
「むぅ……緊張の糸が解れた」
美香が小さく呟く。
「え、まだ緊張してたの?」
オレの問いかけに美香は机に突っ伏した状態で「んー」と答える。
「でも茜と結構話弾んでたじゃないか」
「それは当たり前。 スピリチュアルな話は誰とでも出来るわけではない。 だから茜の言ってることを全て理解できる美香は貴重」
「そうか、まぁそりゃそうだよな。 でもだったらもう少し嬉しそうにしろよ」
そう言うと美香がムクッと顔をあげてオレを見つめてくる。
「ん、なんだ?」
「美香、緊張の糸は解けたけど、これでも結構喜んでる」
「そうなのか?」
「うん。 特に身体は正直」
「身体は?」
オレが頭上にはてなマークを浮かばせながら聞き返すと、美香がコクリと頷きながら視線を自身の下の方へ。
どこかはわからないが一点をジッと見つめながら小さく口を開いた。
「美香のここ……もう洪水」
ゲフンゲフーン!!!!!
◆◇◆◇
夕方。 あれから茜が長い時間帰ってこなかったため、オレは福田祖母に軽く顔を出した後に帰宅することに。
美香に家に来るかと誘ってみたのだが、『大丈夫。 美香には行く当てがたくさんある』とのことで、病院前で美香と別れたオレは1人でバスに乗車。 その途中、茜からのメール受信通知があったので急いで開いた。
【受信・茜】ダイきちくんごめんね、検査長引いちゃった。
【送信・茜】大丈夫? どこかヤバかったの?
【受信・茜】ううん、その逆。 今までと違って数値が良すぎて、先生が機械の故障を疑って何回もやってたの。
おぉ……! それは嬉しいお知らせじゃないか!!
これってもしかして……美香はそんなこと一言も言ってなかったけど、美香が……神様が近くにいたことによって茜の身体に良い影響が起きたとか、そういうやつなんじゃないのか?
オレは自然と口角が上がっていくのを感じながら返信を打っていく。
【送信・茜】よかったね
【受信・茜】うん。 それで明日も今日と同じような結果が出たら、検査の時間減らしてもいいかなって言ってた。
「ーー……」
オレはその文字を見つめながら小さく呟く。
「え、てことは……もし明日検査の時間が早く終わったら、【三好たちがやってたようなアイス横からパックンチョ】が出来るんじゃね?」
そしてこれは家に帰ってから気づいたのだが、あれから三好からメールが届いてたぞ。
ちなみにオレが三好に送った内容は【三好がポニーテールしてくれてるらしくて嬉しい、早く見たい】で、それに対してこう返信がきていたんだ。
【受信・三好】じゃあ早く帰ってくればいいじゃん。
ーー……ねぇ、つめたくね?
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