284 ドッキドキなトーク!!【挿絵有】
二百八十四話 ドッキドキなトーク!!
オレは茜に突然確信づいたことを言われたことで動きを止める。
「本来の持ち主とは別の、違う魂……?」
「そう」
茜がこくりと頷く。
「えっと……どうして?」
「それはなんとなく。 私、ちっちゃな頃から霊感……みたいなものがあって、魂の色……オーラみたいなものが見えるから」
「オーラ?」
「うん。 それでね、普通はオーラって1つなのに、君……ダイきちくんにはオーラが2つ重なってる」
オレが言葉を失っていると、茜が「もしかして、図星?」と問いかけてくる。
「い、いや。 それよりも聞かせてくれ。 オーラってどんなオーラなんだ?」
すると茜は少し目を細めながらオレを凝視。
しばらくするとようやく口を小さく開いた。
「元のオーラは、くすんだ青……これは恐怖や自信の無さの象徴。 でももう1つのオーラはピンク色。 青のオーラを覆い尽くす勢いで激しく光ってる。 これはその……えっち……変態の象徴」
茜が少し恥ずかしそうに視線をそらす。
「へ……変態の象徴!?!?!?」
「うん。 その年頃ならエッチなことに興味が出てきてるのも分かるけど、それとは比べものにならないほどに強大……普通はその人の体を覆うくらいの大きさなのに、ダイきちくんの変態オーラはこの部屋を包み込むほどに大きい。 もはや異次元。」
な……なんて反応すればいいんだあああああああ!!!!
『その通りです、オレは変態なんです』とでも言えばいいのか!?
ていうか元のダイキの性格も言い当ててるし、さっきの『違う魂が入っている』という話題もハッタリではなさそうだ。
……これは認めたらどうなるんだ?
オレは少しの緊張を覚えながらも悟られないように拳を強く握りしめる。
「も、もし仮にの話だけど、そうだとしたらどうするんだ?」
「え?」
茜がキョトンとした顔でオレを見つめる。
「なんか怪しげな術とか使ってその魂を引き剥がすのか?」
「なんで?」
「だってそうだろ、茜さんの話だと……今のオレは元の持ち主の魂を差し置いて、この体を占拠してることになってるんだから」
「あー、そういうことね」
もし引き剥がされることになるのだとしたらオレはここから早々に離れ、福田祖母や陽奈には悪いが今後この病院には……!
そんなことを考えていると茜が焦っているオレを見てクスリと笑う。
「な、なんだよ」
「ダイきちくん、変態の上に中二病?」
「ーー……は?」
あまりにも気の抜けた笑いに軽くムカッとしていると、茜が「あのね」と口を開いた。
「私、霊感はあるけど、そんなアニメみたいな技は持ってない。 ダイきちくん、ここは現実」
「!!!!!!」
オレは茜の言葉を受けて顔が真っ赤に染まっていく。
そうだよな……ここは現実。 突然こんな場所で退魔イベント的なものは発生するわけがないもんな。
は……恥ずかしい!!!!
オレは茜に背を向け、恥ずかしさから両手で顔を隠しながらしゃがみ込む。
「ダイきちくん?」
「な、なんだよ!」
「もしダイきちくんが別の魂だとしても、私は何もしない。 むしろ話を聞きたい」
「ーー……え」
思ってもみなかった茜の言葉にゆっくりと振り返ると、茜が慈愛に満ちた表情で微笑んでいる。
「話を……聞きたい?」
「うん」
「えっと……なんで?」
そう尋ねると茜は少し遠くを見るような視線を向けながら口を紡ぐ。
「あ、茜さん?」
「多分なんだけど……私、そんなに長くはないんだよね」
「え?」
そう呟いた茜はゆっくりと自身の手を開き、そこに視線を下ろす。
「私ってさ、ほら……オーラ見えるって言ったでしょ?」
「うん」
「だから自分のオーラも見えるの。 先に教えると、もうほとんど色がない」
「ーー……そうなのか?」
「そう。 だから、もしダイきちくんが他の人の魂で、一度死んだ経験をしてるなら……あの世がどんな感じなのか先に聞いておきたいなって思って」
茜はゆっくりと拳を握り締めると「私……結構ビビりだからさ」と、力なく笑う。
ーー……!!
な、なんだこの心の底から守ってあげたくなる感情は。
これは結城に初めて抱いた感情と同じ……いや、それ以上か?
オレが自身の胸に手を当てながら鼓動の高鳴りを感じていると、茜が「ダイきちくん?」と尋ねてくる。
「え、あ……ごめん! ボーッとしてた!」
「それで……どう? もしダイきちくんがその体の本来の持ち主とは別の魂の人間なら、お話聞かせてくれないかな。 誰にも言わないって約束するから」
茜が点滴針の刺された腕をゆっくりと持ち上げてオレに手を差し出す。
その時に向けられてた表情はとても儚げで……オレもそろそろ大学時代の友・工藤以外の人に話したかったんだろうな。
あまり深く考えないままに、こう答えてしまったんだ。
「わかった。 あまり参考にならないかも……だけど」
そこからオレはどれだけ話しただろう。
死んだ時の状況は勿論伏せたのだが、死んで目が覚めた時にいた世界のこと、そこで出会った神様のこと、とあるアイテムと引き換えにこの体に魂を転生させてもらったことを事細かに伝えていく。
「へぇ……神様って物と引き換えにそんなことしてくれるんだ」
「まぁね、オレもそこにはびっくりしたけど」
「じゃあさ、もし転生を望まなかったらどうなるんだろう」
あー、なんか美香のやつが前にそれっぽいこと言ってたな。
えっと……なんだったっけか、確か……
「これはオレも聞いた話なんだけど、輪廻転生……つまり生まれ変わりへの道を歩くんだったかな。 それで、家族たちの供養や祈りの力がそれを加速させてくれる……みたいなことだったはずだけど」
これ以上は禁則事項だって言われて教えてくれなかったはずだ。
オレが「それ以上はわからない」と言うと、茜が驚いた様子でこちらを見ている。
「ん、どうしたの?」
「いや、ダイきちくんによくそこまで教えてくれたなって」
「あー、なんでだろうね。 あはははは」
笑ってごまかしていると茜が「あ、そうだ……」と小さく手を合わせる。
「なに?」
「最初にダイきちくんが出会ったって言ってた神様いるでしょ?」
「うん」
「その神様ってどんな感じだった?」
その質問にオレは脳内で思い出しながら答える。
「えーと、白髪で髭を生やしたおじいさんだったな。 それこそ皆がイメージするような見た目だったよ」
「その神様ってさ、もしかして『なのじゃ』とか語尾に付けてた?」
「え」
茜の言葉にオレは目を高速で瞬きをする。
「し、知ってるの?」
「うん……昔……ていうか小学生低学年の時、私都会の少し外れに住んでたんだけど、初詣のときかな……それっぽいおじいさんと話したことあるんだ」
「そうなの?」
「うん。 それこそダイきちくんの言ってた通りの見た目のおじいさんなの。 私がトイレを我慢できなくて茂みに隠れてしようとしてたら少し離れた木の隙間からこっちを覗いてたんだ」
あ……あのジジィーーーーー!!!!!
茜の話では、当時の純粋な茜が神様に「なに?」と尋ねると、神様が少し動揺しながら近づいてきて『視えるのかの?』と話しかけてきたらしい。
それから茜がトイレをしている間、近くに誰かが近づいてこないかを見張ってくれていたそうなのだが……
それ、ただ単に近くで見て聞きたかっただけなのでは?
「あ、確かその時の写真あるよ。 私のだけど……見る?」
そう言うと茜は近くに置いてあったスマートフォンを手に取りオレを手招き。
「数年前の写真だからちょっと画質荒いけど……」と言いながら写真が表示されている画面をオレに向けた。
そしてそれを見たオレは衝撃を受ける。
「な……マジか」
そこに写っていたのは鳥居だろうか……赤い柱の前で着物を着た当時の茜。
そしてその姿が……メガネこそかけてはいなかったものの、髪型・顔立ち・見た感じのテンションの低さから、全てが美香そっくりだったのだ。
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