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283 お見舞いのはずが……


 二百八十三話  お見舞いのはずが……



 それはオレが今は亡き陽奈の姉・愛莉に敗北した翌日。



「陽奈、大丈夫かー?」


 

 受付で陽奈の病室を教えてもらったオレは陽奈に内緒でサプライズ訪問。

 オレが扉を開けたと同時に陽奈と目が合った。



「ダイきちー!」



 陽奈が勢いよくベッドから飛び降りるとオレのもとへと駆け寄ってくる。



「お、おぉ陽奈。 元気そうだな」


「うん元気だよ! なんで陽奈が入院するのか分かんないくらい!」


「あれ? でも入院の理由は聞いたんだよな?」


「うん! でもほら、見ての通り陽奈、ピンピンしてるよ?」



 陽奈は自らが元気だと見せたいのだろう、その場でピョンピョンと飛び跳ねながらくるりと一周回る。



「わかった、わかったから落ち着け」



 オレは陽奈の背中を押しながら無理やりベッドの上へ。

 渋る陽奈をなんとかベッドに腰掛けさせると、いつ検査が始まるのかを尋ねた。



「えっと……多分お昼過ぎだったかな。 その時にママも来るって」


「そうか」


「ダイきちはわざわざ陽奈のために来てくれたん?」


「まぁ……おばあちゃんのお見舞いも兼ねてな。 ほら、陽奈がさみしがってるかなーって思ってさ」



 オレが冗談交じりに笑いながら陽奈に顔を近づけると、陽奈は「全然! むしろめっちゃ楽しい!」と答える。



「そうなのか?」


「うん! 今はみんな検査とかリハビリに行ってていないけど、特にアカネちゃんって子が優しいの!」


「アカネちゃん?」


「うん、アカネちゃんは違う部屋の子なんだけど、ダイきち、一緒に行く!?」



 陽奈が目をキラキラと輝かせながらオレを見つめる。

 こんな目で見られて拒否れるわけがないだろうが!!


 オレは渋々陽奈の提案に同意。

 近くを歩いてた看護師さんに行き先を伝え、オレは陽奈とともにそのアカネという女の子の入院している部屋へと向かった。



 ◆◇◆◇



 歩いてしばらく。



「ここだよダイきち!」



 陽奈が嬉しそうにとある部屋を指差す。

 そこには【堀江 茜】と書かれたネームプレート。

 なるほど、アカネ……茜って書くんだな。


 

「アカネちゃーん! 陽奈だよ開けていいー!?」



 陽奈が扉の前で声をかけると「いいよ」と端的な声。

 ていうか今の声、最近どこかで聞いたような。


 オレが記憶を辿っていると陽奈がそんなのお構いなしにスライド式の扉を勢いよく開ける。

 そしてオレの視界に入ってきたものが……



「ーー……あ」



 そこには昨日オレと目があって話しかけてきた黒髪ロングの女の子。

 どうやら個人部屋のようで、ベッドの上で上体を起こした茜がこちらに視線を向けていた。

 


「あ、昨日の男の子だ」



 茜がオレを見て小さく呟く。

 腕に視線を向けると点滴の針が数本刺さっている……治療のためとはいえ少し痛々しい。

 


「こ、こんにちは」


「陽奈ちゃんのお友達だったんだ」



「そうだよ! アカネちゃんはまだ点滴かかるん?」


「うん。 あと1時間くらいかな。 そしたらちょっとだけどここから出られる」


「そっかー、その時は陽奈、検査の時間だー」



 陽奈が残念そうに壁に掛けられていた時計を見上げる。



「そうだったね、何もなかったらいいね」


「うん! そしたらまたお話しする!?」


「いや、何もなかったら陽奈ちゃん退院でしょ。 私とお話しするのはこれが最後かもしれないね」


「えー! じゃあ終わったら話しにきていい?」


「うん。 いいよ」



 それからしばらくの間、陽奈は茜と仲良さそうに話していたのだが、看護師さんが扉を開けて顔を覗かせてくる。



「陽奈ちゃん、お母さん早く来たからちょっとお部屋に戻ろっか」


「ママが? わかった!」


 

 陽奈は大きく頷くと「じゃあちょっと行ってくるけん」と茜に手を振りながら背を向ける。



「うん、バイバイ」



 なのでオレも茜に小さく会釈をして陽奈のあとを付いて行こうとしていたのだが……



「あ、君はちょっと待って」


「え?」



 突然呼び止められたオレは茜の方を振り返る。



「えっと……なんでしょう」


「君はもうちょっと私とお話ししていかない?」


「え?」


「お願い」



 そう言われてもなぁ。

 見ず知らずの人とすぐに仲良くなれるようなフレンドリースキルなんてオレ持ち合わせちゃいないし、別にオレと話したところでそこまで盛り上がるような話題もない。

 茜には悪いけど、ここは断って福田祖母の病室に向かうとしよう。



「あー、ごめんだけどオレには用事が……」



「いいなーダイきち! じゃあ陽奈の検査終わるまでアカネちゃんと待ってて!」


「ーー……え」



 オレの気持ちなんて一切汲み取らない陽奈が病室から出る寸前のところで眩しい笑みをオレに向けてくる。

 この空気を読めてないあたりも三好に似てるなぁ!!



「いや、でもオレ……」


「大丈夫! アカネちゃんめっちゃ優しくて面白いから、ダイきちも好きになるはずやけん!」


「あのな、そういうわけではなくて……」



 看護師さんに助けを求めようと思い見上げてみるも、「じゃあボクはここで待っててね」と軽くあしらわれて終了。

 


「はぁ……わかりました」



 こうしてオレは看護師さんと陽奈を見送り扉を閉めたのだった。



「ねぇ」


「?」



 茜に視線を向けると茜はオレに小さく手招き。

 それと同時に点滴の管も揺れていたのでオレは急いで茜のもとへ。 近くに置いてあったお見舞いに来た人用の椅子に腰掛け体を向けた。



「それであの……なに話します?」



 オレはコミュニケーション苦手ですオーラをこれでもかというくらいに出しながら茜に尋ねる。



「ちょっとさ、昨日君を見かけた時から気になってたことがあって」


「オレを?」


「うん」



 茜が小さく頷く。



 気になっていたこと?

 なんだろう……もしかしてオレに一目惚れしちゃって彼女がいないか気になってる……とか、そういう感じなのだろうか。

 一見そんなはずはなさそうだけど、これはもしかして……もしかするのかもしれないぞ。


 そんなことを考えると茜がオレをジッと見つめていることに気づく。



「え? あの……茜……さん?」


「ダイきちくん……だっけ?」


「は、はい」


「君さ、もしかしてその体の本来の持ち主とは別の……違う魂だったりする?」



「え」



お読みいただきましてありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新ヒロイン茜ちゃんだと!! それに、バレてるよぉ!!! ダイキどうする!?
[一言] およ?スピリチュアル系女子?これはお姉ちゃん(幽霊)もぼんやり感じ取れてる系? あらやだ怖い(笑)
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