280 まさかの展開!?【挿絵有】
二百八十話 まさかの展開!?
月曜日。 本来ならオレたち子供は学校で勉学に励む一週間が始まるわけだが、オレと優香は特別で行き先は学校ではなく病院へ。
福田祖母が入院している病院は福田祖父母の家からは結構離れていたのでオレたちはバスへと乗車。
そしてその途中のこと……
「えー、早速陽奈ちゃんに会ったんだ」
「うん。 丁度陽奈の家もお好み焼きだったんだって。 それでソース買いに来てた」
「へぇー、何か話したの?」
「ちょっとだけね。 帰りに『最近すぐ息切れするんだよねー』って言ってたくらいかな」
オレは昨日別れ際に陽奈と話したことを思い出しながら優香に教える。
しかし息切れなんて……オレなんか高頻度でしてるぞ。
季節的にもまだ寒いし、陽奈の場合は体あまり動かせられてなくてなまってるだけだろ。
「そうなんだ。 あれだったらダイキ、夕方とかは陽奈ちゃんと遊んで来てもいいんだよ?」
「なに言ってんのお姉ちゃん。 オレはお姉ちゃんの負担を少しでも減らすために来たんだから」
オレは鼻をフンと鳴らしながら優香を見る。
「うん、それは嬉しいけど、昨日の夜みたいなマッサージとかは大丈夫だよ?」
「そうなの?」
「だってダイキも疲れちゃうでしょ?」
優香が何を思い出したのか少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら微笑む。
「いや、オレは別にそこまでは……」
「そっか、じゃあ2・3日に1回のペースでお願いしよっかな」
「わかった!!」
オレの行動次第でギャルJK星のパンツがゲット出来るかが変わるんだからな!
何事にも全力でいかせてもらうぜ!!
しばらくしてバスは病院前に停車。
オレと優香はそこで降り、福田祖母の入院している部屋へと向かった。
あ、ちなみに病院内を歩いているときにスマートフォンをチラッと確認したのだが、もう学校が始まって担任からオレの話を聞いたんだろうな。
メールがいくつか届いていたぜ。
【受信・三好】先生も言ってたよ。 頑張れ。
【受信・多田】びっくりしたよー! がんばってねー!
【受信・小畑】福田しばらく休みなの? おもんなー。
【受信・水島】先生も言ってたけど、ご主人様、がんばってねー☆
【受信・西園寺】今日からだよね! 夜くらいに連絡するから、その時に福田くん大丈夫だったらお返事欲しいな。
【受信・エマ】がんばりなさいよー
【受信・美香】ダイキ、家に帰るまで気を抜いちゃダメ。
まったく!!! オレ、愛されてるぜ嬉しいな!!!!!
しかし美香も知ってるとは流石神様だ。 オレが田舎に帰ってるのもお見通し……最後まで優香をアシストしろってことだよな。 任せてくれ!!!!
◆◇◆◇
「あらららら!! 優香ちゃんにダイキちゃん!! 来てくれたの!?」
病室に入ると福田祖母が目をキラキラと輝かせながら、ベッドの上から視線を向ける。
「そうだよおばあちゃん、大丈夫ー?」
優香がベッドの近くに置いてあった椅子に座りながら尋ねる。
「ほんとおばあちゃんドジだわー。 でもほら、この通り元気元気よ!」
「そっか、安心したよー。 おばあちゃん元気なかったらどうしようって思ってたもん」
そこから優香と福田祖母のトークタイムが開始。
どうやらお年寄りの転倒は骨が折れやすく、放っておくと後に影響するらしいので今は経過観察中とのこと。
他には優香やオレの学校のことを話していたのだが……
話が一区切りしたあたりで優香がスッと立ち上がる。
「どうしたのお姉ちゃん」
「なんか喉乾いたなって思って。 おばあちゃん、ダイキ、何か買ってくるから飲みたいものある?」
ーー……!!!!!
来たぜ!! 役に立つタイム!!!!
「お姉ちゃん!!! オレ行きまぁああああす!!!!」
突然のオレの張り切り声に福田祖母の体がビクリと動く。
「うわぁ、びっくりした! ダイキちゃん元気ねぇ」
「そうなの。 私のお手伝いするって昨日も張り切ってたんだよ」
「そうなんだ、ダイキちゃん変わったわねぇ」
「ほんとに」
優香は福田祖母と笑い合った後にオレに視線を向けた。
「じゃあダイキ、ゴメンだけどお願いしていいかな」
「わかった!!!!」
こうしてオレは病室を飛び出し病院内1階にある売店へ。
飲み物と少量のお菓子を買って病室へと戻っていると、少し先の所で窓の外の景色を眺めながら缶ジュースを飲んでいる女の子と目があった。
同い年から中学生くらい……だろうか。
黒髪がストンと伸びた入院着を来た女の子がオレに体を向ける。
「え? えっと……」
顔立ちは整ってはいるけど……なんか暗い感じの印象だな。
そんなことを考えながら見ていると女の子が小さく口を開いた。
「君は……初めて見る。 最近入院したの?」
「え?」
女の子が少しずつオレに距離を詰めてきながら尋ねてくる。
「えっと……なんでですか?」
「だって今日は月曜日。 普通なら学校に行ってる時間でしょ?」
「あー、そっか。 えっとですね、オレは……」
別に初対面なのでオレは詳しくは言わずにざっくりとここにいる理由を説明。
すると女の子は「そっか、いいね」と無表情のまま答えると、どこかへ消えていってしまったのだった。
一体何だったんだ?
雰囲気暗かったけど口調やら表情は神様……美香にそっくりだったな。
あれが神様の目指す理想像なのだろうか。
この時のオレのあの女の子に対しての印象は、ただ偶然すれ違って話しかけられただけのただのJC。
そんな認識でさほど気にする様子もなく、買い物袋を握りしめて福田祖母と優香の待つ病室へと戻ったのだった。
それから大体2時間ほど経ったくらいだろうか。
「じゃあおばあちゃん、私とダイキ、もう行くね」
「そう? もうそんな時間?」
「うん。 早めに帰って夕飯の買い物しないと」
「あら、そうねぇ。 じゃあお爺ちゃんをよろしくね」
「うん」
こうしてオレたちは福田祖母に「また来るね」と残して病室を出た。
◆◇◆◇
「おばあちゃん元気で良かったね、ダイキ」
「うん」
福田祖母のことを話しながら院内を歩いていると、聞き慣れた声が突然聞こえてくる。
「あ、ダイきち! それに優香ちゃんも!!」
「え?」
振り返ってみると待合席の所に陽奈の姿。
その隣には母親らしき女性も一緒だ。
「あ、おばさまお久しぶりです」
優香がぺこりと頭を下げながら陽奈の母親の方へ。
「去年は陽奈が押しかけてごめんなさい」などと話し出したので、オレは陽奈の隣に座る。
「何で陽奈がここにいるの?」
「陽奈、体育の時間に調子乗りすぎて鉄棒から落ちちゃってさ。 その時に胸らへん強く打っちゃって息が出来ないくらいに苦しかったけん一応診てもらおうってことになって早退してきたんだよね」
陽奈がアハハと笑いながら胸のあたりを撫でるように擦る。
「え、大丈夫なのか?」
「うんっ! あの時は苦しかったけど今は何ともないよ! ただママが心配だからって」
「そっか、なら良かったな」
オレが陽奈と話していると陽奈の母親が「あ、そうだ」と両手を合わせながらオレたちを見る。
「どうしましたおばさま」
「優香ちゃんもダイキくんも一緒に帰らない? おばさん車で来てるから送ってあげる」
「え、いいんですか?」
「いいのいいの、陽奈がお世話になったせめてものお礼をさせて」
「じゃあ……お言葉に甘えて」
こうしてオレと優香は陽奈の診察待ちに。
しばらくして陽奈の名が呼ばれ、母親と共に診察室へと入っていったのだが……
「ーー……ねぇお姉ちゃん、長くない?」
「そうだね、どうしたんだろう」
陽奈が入ってもう1時間くらいだろうか。
もう何ともないと陽奈は言っていたのに一向に出てくる気配がない。
「お姉ちゃん、もう帰る? 流石に待ってるのも苦痛じゃない?」
「えぇ? でもお願いしますって言った手前失礼だよ」
「そうかな、でもこのまま夜になったら買い物とかも……」
そんなことを話していると診察室から陽奈の母親が片手をおでこに当てながら出てくる。
「あ、良かった来た。 ……ってあれ?」
優香が不思議そうに診察室の方を覗き込む。
「ごめんね待たせちゃって」
「あ、いえ大丈夫です。 それよりも陽奈ちゃんは?」
「うん、とりあえずおばさんの車の所まで行こっか」
「「?」」
意味が分からないままオレと優香は陽奈の母親の後を付いて車の中へ。
陽奈の母親がエンジンをかけた所で痺れを切らした優香が声をあげた。
「あの、おばさん、陽奈ちゃん置いてっちゃうんですか?」
「ーー……」
優香の言葉に陽奈の母親がゆっくりと後ろを振り返る。
「お、おばさん?」
そして次に発した言葉にオレと優香は目を大きく見開いた。
「陽奈、入院することになっちゃった……」
ーー……は?
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