279 すべてがプラス!!
二百七十九話 すべてがプラス!!
夜。 今回は優香とオレの2人だけということで二階の部屋に1人ずつという形に。
前は結城と一緒の部屋だったなーと懐かしみながら以前撮った結城の寝顔コレクションをジッと眺めていると、突然着信通知と共に着信音が流れ始める。
かけてきた相手は……
「えぇ!? 高槻さん!?」
◆◇◆◇
一体何事だろうと思ったオレは急いで通話ボタンをタップ。
スマートフォンを耳に当てる。
「もしもし高槻さん?」
もしかして結城か結城母に何かあったのだろうか。
オレがそんな心配をしながら電話に出ると、予想していなかった相手の声がスピーカーから直接耳に入ってきた。
『もしもし? 福田……くん?』
ぎゃあああああああああ!!!! ゆ、ゆゆゆゆ結城じゃねえかあああああああ!!!!!
そんな0距離からの結城ボイスなんて……めちゃめちゃご褒美だよおおおおおおおお!!!!
オレの心拍数がどんどんと上昇していくのが分かる。
「ゆ、結城さん!?」
『うん。 ごめんね夜遅くにかけちゃって。 今大丈夫……かな』
「え!? あ、うん! 大丈夫だよ!」
『なにしてたの?』
「え!? えーと……ボーッとしてたかな」
『そうなんだ……』
……さっきまで君の寝顔写真を眺めてましたなんて口が裂けても言えねえぜ。
「そ、そそそれでどうしたの?」
『あ、うん。 ママ……先生から貰ったよ。 福田……くんからのホワイトデーのお返し。 ありがとう』
「あぁ! あれね! うん、直接渡せなくてごめんね」
『ううん、嬉しかったよ。 ありがとう。 ママもありがとうって言ってた』
「あー、それは良かった……って、え、それはどっちの?」
『ん? 私の本当のママ』
『ーー……』
ほわああああああああ!!!! 高槻さんんん!!!!!
あなた普通に母親の前で渡したんかい!!!!!!!
オレの脳内で高槻さんが『ふふ、ごめんなさい』と舌を出して謝っている姿が浮かび上がる。
実はオレが結城にお返しとしてプレゼントしたのは開運キーホルダーだったのだ。
キーホルダーのくせして結構な値段したぜ?
アヒルとヒヨコの1つずつのセットなんだけど、それを誰かとシェアすることで、その相手とこの先もずっと歩んでいける……といったものらしい。
これを見つけた時は直感で結城と結城母用だって思ったよな。
ただそれを親の前で渡したというのはちょっとというか……かなり恥ずかしいぜ。
オレがスマートフォンを耳に当てた状態で1人で悶えていると耳元から『福田……くん?』と尋ねてくる。
「え、あ、ごめん! そ、そっか! 結城さんのお母さん喜んでたんだ! それは良かった!」
『うん。 ママはアヒルで私がヒヨコにしたの。 ママ、すぐにスマホにキーホルダーつけてたよ』
「そうなんだ。 ていうかお母さん、スマホまた契約したんだね」
『うん。 もう心配する必要ないからって』
なんか結城、どんどん幸せになっていっている感じがして嬉しいぜ。
今までが苦しかったんだ、そうでないと困るよな。
オレがそんなことをしみじみ感じながら結城の話を聞いていると、『あ、そうだ!』と結城がこれまた嬉しそうな声で話しかけてくる。
「どうしたの?」
『私も今度ね、スマホ買ってくれることになったんだ!』
「そうなの!?」
『うん! ママ……先生が買いに行こうねって! そうしたらいつでもママと電話出来るでしょって!』
おぉ……高槻さん、やはり女神……いや、聖母か。
保護者代理になろうとしたきっかけはどうであれ、ちゃんと結城と向き合って結城に愛を注いでいる……もう本当に頭が上がらないぜ。
「そっか、良かったね」
『うん、だから買ってもらった時はいっぱいお話ししようね』
「え、あ、うん」
それからしばらく話した後に通話を終了。
その後じわじわと感情が湧き上がってきて……
「ええええええ!!! ていうかさっき結城、オレに『いっぱいお話ししようね』って!!! てことはさっきみたいにスピーカーから0距離で結城の声をまた聞けるってことなのかあああああ!!! これは胸熱な展開だぜええええええ!!!!」
そう布団に包まりながら叫んでいると部屋の外から優香が「ダイキー」と名前を呼んでいることに気づく。
オレは急いで布団から出ると扉を開けた。
「あ、はいどうしたのお姉ちゃん」
「ダイキ、さっきなんか叫んでるみたいだったけど大丈夫?」
「え? まぁうん。 えっと……聞こえてた?」
「ううん、最後の『胸熱な展開だぜー』くらいかな」
は……恥ずかしい!!!!
「そ、そうなんだ。 いや、ほんとになんでもないから気にしないで」
オレは「あははは」とわざとらしく笑いながら「それで何か用だった?」と優香に尋ねる。
「あ、そうそう。 明日お姉ちゃん、おばあちゃんのお見舞いに行こうと思うんだけどダイキはどうする?」
「え、オレ?」
「うん。 おじいちゃんは家にいるらしいんだけど、ダイキはどうしたいのかなって」
「あー、オレっておじいちゃんと一緒にいた方がいい?」
「ううん、それは大丈夫だと思うよ」
「そっか、じゃあ一緒に行こうかな」
「わかった。 じゃあそうおじいちゃんに伝えとくね」
優香は「ごめんね、それだけだから。 それじゃあおやすみ」とオレの頭を数回撫でると一階へと降りていく。
「あ、うんおやすみお姉ちゃん」
優香を見送った後部屋に戻ると布団の上に置いておいたスマートフォンが光っている。
確認してみるとギャルJK星のメール受信通知だ。
「ん? ギャルJK星? どうした?」
オレは首を傾げながらメールを開く。
【受信・星美咲】ダイキ、ちゃんとゆーちゃんのサポートしてるー?
お? なんだいきなり。
【送信・星美咲】うん、してるよ。 今日夕方着いてから、買い物に走ったりお風呂掃除とかしたよ。
【受信・星美咲】おー! 偉いじゃーん! その調子だぞ! 今度ヨシヨシしてあげよう。
【送信・星美咲】ほんと?
【受信・星美咲】ほんとほんと。 もしゆーちゃんがベタ褒めするくらいの活躍をしてたら更に……
【送信・星美咲】さ、更に?
【受信・星美咲】美咲お姉さんのパンツ……
!!!!!!!
ナ……ナンダッテエエエエエエエエ!!!!!
オレは速攻でギャルJK星に返信。
【送信・星美咲】いっぱい手伝って、そしてお姉ちゃんを労います!!!
そうしてオレは部屋を飛び出し優香のもとへ。
すると丁度優香も寝ようとしていたらしく階段を上ってきていたので……
「お姉ちゃん!!」
「え、どうしたのダイキ」
「今日疲れたでしょ!! マッサージしまぁあああす!!!!!」
「え? ええええええ?」
オレは困惑している優香の手を握るとそのままオレの部屋へと連行。
「じゃあお姉ちゃんはゆっくりしてて」と声をかけながらうつ伏せに寝てもらうと、オレはその上に跨るようにして座りながらマッサージを開始した。
「あー、気持ちいい。 ダイキ、よく分からないけどありがと」
「うん!! お任せを!!」
「ただダイキ、なんか固いのが……」
「ん? どこか凝ってるの?」
「あ、ううんいいの、その調子でお願いできるかな」
「わかった!!!」
優香、マッサージの効果で血流が良くなったんだろうな。
たまに顔を覗き込んで確認していたんだが、いい感じに赤くなってたぜ。
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