276 早いお返し!①
二百七十六話 早いお返し!①
「さてと……どうしたものか」
土曜日の午前中、オレは1人で外出しショッピングモール内の雑貨屋で腕を組みながら考える。
そう、バレンタインで貰ったチョコのお返し選びだ。
無難にクッキーを買っても良いところだけど手抜きされたと思われても嫌だからな。 ここは真剣に考えないと……
オレはスマートフォンのメモアプリに記したお返しする人リストに視線を落とす。
・優香
・ギャルJK
・西園寺
・水島
・エマ
・三好
・結城
「な、7人かぁ……! これは選ぶのに時間かかりそうだぜ」
◆◇◆◇
夕方。 何とか選び抜いて購入したオレは渡す相手に順次連絡。
駅から水島の家が一番近かったのでオレはとりあえず水島家近くの公園で水島を待つ。
「ごしゅじんさまーー!!!」
私服姿の水島がオレの姿を見つけるなり小走りで近寄ってくる。
「おー水島、すまないな急に呼び出して。 あとここで『ご主人様』はやめろ」
「あちゃ、ごめんね。 どうしたの?」
「いやさ、家の用事で学校を1週間ちょい休むことになってな。 ホワイトデーに間に合わないかもしれないから先にお返ししようと思って」
「えええー、大変だねぇー。 でも花ちゃんにお返しくれるの? 嬉しいなぁー!」
水島の周囲に小さな花がポツポツと咲き始める。
なんだかんだでこいつあれだよな、癒し系似合ってんなぁ。
「そりゃあそうだろ、貰ったらお返ししないとだからな」
そうしてオレは片手で持てるサイズの紙袋を水島に。
水島は「え、なんだろー」と目を輝かせながら中を覗いた。
「あ! なんかいっぱい入ってるよ? ボディクリームに化粧水に乳液に……こんなに良いの?」
「あぁ。 水島は学年のマドンナだろ? だったらその美貌を助けるものが良いのかなって思ってな」
「えぇーー! 花ちゃんのこと考えて選んでくれたんだ! ご主人様ありがとー!」
水島がニコォーっと緩い笑みをオレに向ける。
「オレこそチョコありがとうな。 じゃあオレはこれで」
「え、もう行くの?」
オレが立ち去ろうとすると水島がキョトンと首をかしげる。
「あぁ。 だって他にも渡す人いるからな」
「え、ご主人様、他にもチョコもらったの?」
「え、うん」
「だれー?」
「それは言えん」
そうオレがきっぱりと答えると水島が頬をプゥーっと膨らませながらオレを見る。
「ほらー、やっぱり花ちゃんの思ったとおりだ! ご主人様最近いい感じだもん! せっかく花ちゃん、そんな子達に諦めてもらうためにわざわざ皆の前でご主人様にチョコあげたのにーー!!」
「ーー……え、そうだったの?」
「ハッ!!」
オレが軽く冷めながら尋ねると水島はやっちゃった的な表情をしながら視線を逸らす。
「えー? あははは、花ちゃん今何か言ったかな。 覚えてないやー」
「はぁ……流石は策士。 まぁいいけどな。 結果こうしてオレはお前からチョコもらえたわけだし……」
その後オレは水島と別れ次のお返しへ。
次に渡すのはーー……
◆◇◆◇
「えっ!? 福田くんお休みするの!?」
西園寺家の近く。
水島の時と同様にオレがしばらく学校を休むことを話すと、西園寺は目を大きくしながら驚く。
「あぁ」
「どのくらい長引くか……とかは分からないの?」
「まぁそうだな。 だから早いけどホワイトデーのお返しをしにきたんだ」
「それは嬉しいけど……なんか寂しいな」
「まぁそう言うなって。 とりあえずほら、これ」
オレは西園寺に手の平サイズで中身の見えないビニール袋に包まれたお返しを渡す。
「あ、ありがとう。 中、見てもいい?」
「もちろん」
西園寺はオレの了承を得ると「なんだろう」と呟きながら中を覗く。
そしてその中身を確認すると、「あっ!」と声を上げながらそこに入っているものを取り出した。
「ふ、福田くん……これ……」
目をキラキラと輝かせながらオレにそれを見せつけてくる。
「お前それ好きだっただろ?」
「うんっ! ありがとう!!!」
西園寺に渡したのは東北のご当地キャラクター・チェリーくんのキャラクター手袋。
ちょうど立ち寄ったところで東北物産展が期間限定で開催されており、たまたま人の寄りついていないエリアにそいつが置かれてあったのだ。
ちなみにめちゃめちゃ奇妙な見た目でな。
手を開くと指の位置に顔があって、手の平中心くらいが妙にモッコリしているんだ……なんでだろうな。
それで手を閉じると好きな時にそのモッコリ感触を楽しめる……といったものらしい。
「付けていい?」
「そりゃあもちろん。 だって西園寺にプレゼントしたんだからな」
「うわぁっ……! あったかい……それにちゃんとモッコリしてる」
西園寺が嬉しそうにチェリーくんのモッコリ部分を指先でフニフニと押し込む。
「お、おう」
「あとほら、こうやってするともっとあったかい……」
西園寺は嬉しそうに微笑みながらモフモフと自身の両頬に当てる。
「ーー……!!!!!」
ウォオオオオオオオオ!!!!! その仕草でその表情はダメだ可愛すぎるぅーーーー!!!!!
てかそれするんだったらチェリーくん……お前のモッコリが邪魔だ!!! 普通に可愛い手袋買ってればよかったぜええええええ!!!!!!
オレがそんな西園寺の萌え仕草に悶えていると西園寺が「福田くん?」と上目遣いで尋ねてくる。
くそう!!! 可愛いなおい!!!
「え、あ……こほん、とりあえず喜んでくれてよかったよ」
「うん、嬉しい」
「とまぁ、そういうことだから、遊園地はオレが帰ってきてからになるけど良い?」
「ーー……え、行ってくれるの!?」
西園寺が目をパチクリさせながら一歩前に近づいてくる。
「え? まぁうん。 あれ? 行きたくなかった?」
オレがそう尋ねると西園寺は顔を左右にブンブンと振り否定。
「ううん! 行きたい! ありがとう福田くん!」
「おう、じゃあまた帰る目処だったらメールか電話するな」
「うん。 でもそんなの関係なく連絡していい?」
「そりゃあもちろん。 むしろ大歓迎だ」
「うんっ! じゃあするね!」
「あぁ。 じゃあな」
「ありがとう福田くん!! 詳しくは分からないけど……ばいばい!」
その後西園寺と別れたオレは三好に連絡。
三好はちょうど外に出ていたらしく、最寄りの駅で待ち合わせることに。
外も結構暗くなってきていたのでオレは駆け足で待ち合わせ場所へと向かった。
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