264 リラックスの境地!!
二百六十四話 リラックスの境地!!
さぁ……どうしたものかなぁ。
オレは心の中で小さく呟く。
今オレがいる場所はリビング。 そして目の前には横に3つに並べられた敷布団!
なんかデジャブだよねぇそんなことあったよねぇ!!!
なぜこんな状況になってしまったかというと、少し前に遡る。
◆◇◆◇
それはエルシィちゃんがエマの家でご飯を食べ終わり、再びうちに戻って来てからのこと。
「そうだエルシィちゃん、今夜は私と一緒に寝ようか」
ソファーに座っている優香がエルシィちゃんを膝の上に乗せて頭を撫でる。
羨ましい……。
「んー? エッチー、ゆかーと、ねんねするぅー?」
「そうだよ。 それかエルシィちゃん、桜子と寝たかった?」
突然自分の名前を呼ばれてびっくりしたのだろう。
お皿洗いをしていた結城の体がピクリと反応。 優香たちの方へと視線を向けた。
「エルシィ? その……私がいいなら、いいよ? 一緒に寝る?」
「んんー、エッチー、ここで、みーんなで、ねんねがいいーー!!!」
◆◇◆◇
ーー……ということがあったのだ。
もちろん優香はこんな展開今回が初めて。
しかし結城から前回……優香が修学旅行で家を開けてる時にこうやってみんなで寝ていたことを話すと、優香はすんなりと理解。
むしろ『なんでそんな楽しそうなこと教えてくれなかったのー?』と言いながらかなりノリノリで布団を用意したのだった。
「さ、誰がどこに寝よっか!」
優香が手をパンと叩きながら皆を見回すと、金髪天使エルシィちゃんが元気よく手を挙げる。
「エッチー、ダイキと、ねんねしゅゆーー!!」
え。
「そうなのエルシィちゃん」
優香がエルシィちゃんに目線を合わしながら尋ねる。
「んーー!! ダイキ、いっぱいがんばた!! だから、エッチーが、よちよちしてあげゆのーー!!」
エルシィちゃんが眩しい笑顔を振りまきながらオレを見上げる。
ウゥ!! エルシィちゃん!!!!
「えっと、ダイキはそれでいい?」
おいおい愚問だぜ優香ぁ。 こんな天使によしよしされながら眠りにつけるんだ。
世界中の大富豪にどれだけ積まれようが譲る気はねぇぜ!!!!
オレは優香の質問に即答でイェス!
これでオレの隣はエルシィちゃんということで決定した。
「じゃあエルシィちゃんはダイキの隣ってことにして、桜子はどこがいい……とか、誰の隣がいいとかある?」
優香も相変わらず優しいなぁ。
結城のことだ。 どうせ「私はどこでも大丈夫……」と答えることを分かっていながらも聞いてあげるなんて。
……となればどうなるんだ?
上からの図を想像すると、オレが右端か左端になって、その隣にエルシィちゃん。 で、エルシィちゃんの隣に優香か結城ってことになるのかな。
まぁどっちにしろオレがエルシィちゃんにヨシヨシされながら眠れる未来に変わりはない!
グヘ……グヘヘヘエ……。
オレがエルシィちゃんが眠る間ずっと頭を撫でてくれている姿を想像して萌えていると、結城が小さく口を開いた。
「わ、私……お姉ちゃんと福田……くんの間が……いい」
グヘグヘヘ、ーー……エ?
エエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?
ゆ、結城がオレの隣を自ら選択してくるだってぇえええ!?!?!?
一体なぜ……!?
そしてそれは優香も同じことを思っていたらしく、驚いた表情で結城の顔を覗き込んでいた。
「えっと……桜子、なんていうかその、珍しいね」
「そ、そうかな」
「なんでお姉ちゃんとダイキの間がいいって思ったの?」
優香の質問を受けた結城の頬が僅かに赤く染まる。
ーー……ハッ!! そうかわかったぞ!!
これは結城の照れ隠し!! 本音はオレの隣がいいんだけど、それだと理由を聞かれた時に『好きだから』って言うのが恥ずかしいから無難にオレと優香の間が良いって発言したんだ絶対そうだ!!!!
オレがそんな予想を立て終えたところで結城はその理由を話し出した。
「だって……もう後少しで私、もう1人のママと一緒に寝ることになるから。 だから私、それまではここで……家族に囲まれながら寝たいなって」
「「!!!!!!!」」
ズギャアアアウウウン!!!!!!!
オレの心に超巨大な雷が落下。
涙腺という壁を跡形もなく破壊して目から大量の涙が零れだす。
「どしたぁーだいき、どこか、いたいんー?」
オレの涙に気づいたエルシィちゃんがオレの腕を引っ張りながら心配そうに見上げる。
「いや……なんでも、ないよ。 ありがと……う、エルシィちゃん」
「そうなー? だいき、だいじょぶなのよー?」
「う……うんっ」
あぁ……なんて尊くも悲しいことを言ってくれるんだ結城。
時を戻せるなら数十秒前の邪な考察をしていたオレをぶん殴ってやりたいくらいだぜ!!
まぁそんなオレよりも大変な人がオレの目の前にいるわけで……
「だ、大丈夫お姉ちゃん」
結城が少し慌てながら優香の手を握りしめる。
それもそのはず。 優香は先ほどの結城の言葉を聞くなりオレ以上に大号泣。
言葉も話せないほどに息を乱しながら、心配して見上げている結城に抱きつき胸に顔を埋めていた。
こんなに泣いてる優香、オレも初めて見たぞ。
まぁそれも仕方ないか。
だってさっきの結城の言葉……もうすぐ別れが近づいてるってことだもんな。
オレがそんな姉妹のやりとりを眺めていると、エルシィちゃんが「だいき?」と声をかけてくる。
「どうしたのエルシィちゃん」
「エッチーも、ユッキーちゃんみたいに、ギュってしたえう」
「え?」
結城みたいにギュって……? どういうことだ?
首を傾げているとエルシィちゃんがゆっくりと両手を開いてオレを見上げる。
ーー……ハッ!! モシカシテ!!!!!
「エ、エルシィちゃん、オレもその……抱きついて……いいってこと?」
「そうよー。 エッチー、だいきを、ギュってしたえうの。 だからだいき、エッチーの、おぱぁ、おいでぇー?」
オ……オオオオ、オパァアアアアアア!?!??!?!?
どことは言えないがオレの視線がエルシィちゃんのとある部分へと向けられる。
この場合オレはやましいことをしていることになるのか?
ーー……否!!!
これはやましいことにあらず!!
エルシィちゃんは激ロリにしてどことは言わないがぺったんこ!!
これでオレが欲情なんてするはずが……!!!!
「はい、だいきー、おーいでぇー」
欲情なんて……するはずが……!
「は、はい」
ペタリ。
する……はず……が……
「だいき、よちよちなのよー?」
あんぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!
なんじゃこりゃあああああああああ!!!!
オレはエルシィちゃんに顔を優しく包まれながらも考える。
なんで……どうしてこんなにも興奮しているんだオレは!!!!
落ち着くんだ……! エルシィちゃんのそれは今の所同い年付近の男となんら変わりはないはずだ!!
なのに何故オレは今こんなに幸せな気持ちに満ち溢れているのだろう!!!!
オレはこの謎を究明させるために今まで生きてきた森本慎也の脳と半年以上共にした福田ダイキの脳に検索をかける。
するとどうだろう……真っ黒な背景の中心に真っ白な文字は少しずつ浮かび上がってくるではないか。
目を凝らしながら集中していると、ぼんやりではあるがそこにはこう映し出されていた。
『ソレガ……母性ダ』
ーー……!! ぼ、母性!!
そうなのか、だから今オレはこんなにも暖かい気持ちに……!
「ーー……あれ、なんだこの感覚は」
母性を感じた途端に急に全身の力が抜けていく。
まるでリラックスの境地に立っているような……
「どしたぁだいき、からだ、ガクンてしたのよー?」
「いや……エルシィちゃ……ん、なんでもない……よ……」
「そうなー? でもエッチー、ちゃんとだい………」
あまりの心地よさにオレはここで寝落ち。
目を覚ました時にはもう朝で優香と結城がキッチンで朝ごはんを作っていたのだった。
「あれ、ダイキおはよ。 昨日は疲れてたのかな、エルシィちゃんにもたれかかるように眠っちゃってたんだよ」
優香の言葉に結城も「うんうん」と頷いている。
ーー……やってしまった。
オレとしたことが、まさかあれからすぐに寝落ちしてしまうなんて。
てことはオレ、エルシィちゃんの添い寝ヨシヨシ味わえなかったってことじゃねえかああああああ!!!!
「ーー……あれ、そういやエルシィちゃんは?」
「エルシィちゃんなら少し前に起きて制服に着替えてくるって言ってたよ。 ご飯はエマちゃん家で食べるって。 こっちももうすぐ出来上がるし、ダイキも早く顔洗って着替えておいで」
「あ、はい」
こうしてオレはそそくさと洗面台へ。
鏡で自分の顔を見た時に『あぁ……ここにエルシィちゃんの……当たってたんだな』と思いながらニヤニヤしていたのであった。
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