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261 特別編・ユリ④ 重要なこと?


 二百六十一話  特別編・ユリ④ 重要なこと?



 ユリの提案から半年が過ぎた頃。

 新たに作られたレッスン場では床と運動シューズの擦れることで生まれるキュッキュという高い音が絶え間なく鳴り響いていた。


 そう……ここは新たに設立されたアイドル部門の練習場。

 ユリの熱い想いが伝わったのか、はたまたマネージャーが上に掛け合った際に偶然上手く話が進んだのかは分からないが、結果的にユリはアイドル候補生として日々ダンスレッスンや体力づくり・ボイストレーニング等に明け暮れた毎日を送っていた。

 


『はーい! では今日はここまで! 明日は今日の復習から始めるから頭の中で各自整理しておくように!!!』



 新たにコーチとして雇った振り付け師が手を叩きながらユリを含めた5人のメンバーに声をかける。



『『『はい!! ありがとうございました!!!』』』



 ◆◇◆◇



『あー、今日もきつかったねぇー!』



 更衣室。 先輩たちがレッスンの感想を各々述べながら練習着である某有名スポーツブランドのジャージから私服に着替える。

 先輩……そう。 ユリにとっては皆が先輩。

 事務所は現在新人を募集しておらず、一番新しく入ったのが約半年前の入所したユリだったのだ。

 


『そういやユリ、髪伸びたよね』



 1人の先輩がユリの髪をサラリを撫でる。



『あ、はい! 分かりますか!?』


『うん。 入ってきたときはショートっぽかったのに今は肩下くらいまであるじゃん。 それに最近よくポニテにしてるよね』



 先輩の言葉にユリの心が弾む。



『はい! ユリ、やっとここまで伸ばせて……やりたかった髪型だったんです!』


『へぇー、なんか参考にしてる人とかいんの?』


『はい!』



 そういうとユリはスマートフォンを付けて画像を表示。

 画面に映っている人物を先輩に見せつける。



『ーー……え、それ楓じゃん!』


『です! ユリ、楓と同じ髪型にしたくてここまで頑張ったんです! どうですか? 楓っぽく見えます!?』



 ユリが後ろでくくったポニーテールを見せつけながら先輩たちに尋ねる。



『まぁ、髪型だけね』



 1人の言葉に周囲がうんうんと頷いている。



『へ?』


『だってユリ、明らかに身長が足んないじゃん』


『もおおおおおお!!! ユリ、そこ気にしてるところなのにーーーー!!!!』



 ユリが先輩たちに向けて頬を膨らましていると、1人の先輩が思い出したかのように口を開く。



『あ、そういえばこのアイドル部設立もユリが提案したんだってね』


『あ、はい!』


『なんで?』



 理由を聞かれたユリはフンと鼻息を鳴らしながら堂々と答える。



『ユリ、楓の夢を叶えるためにお願いしたんです!』



『『楓の夢……??』』



 先輩たちが揃って首をかしげる。



『はい! ユリ、思ったんです! 楓はアイドルになりたかったんだろうなって!』


『それ、楓が言ってたの?』


『いえ! そう思ってたんじゃないかなって思って! ていうか思ってるはずです!』



 あまりにも根拠のない話だがユリのこの堂々たる姿を目にしているからなのだろう。

 先輩たちも実はそうだったのかな……という考えに脳が侵食されていく。



『た、確かに楓、ニューシー好きだったもんね』


『あーそうそう! オーディションが決まってた日も、なんだっけ……「ニューシーのライブの【ネバーワールド】が当選したからそっち行く!」って鬼マネと喧嘩してたもんね』


『あーあったあった!! 楓、手毬くん担だったっけ?』


『楓、よくニューシーの新曲出るたびに私らに布教してきてたよねー!』



 ーー……。



『あれ? どうしたのユリ』


『えっ』



 先輩の声に我に返ったユリは体をピクリと反応させる。

 気づけば目からは涙。 ユリは急いでその涙を拭った。



『あ、ごめんなさい! ユリ、先輩方が楓の話で盛り上がってくれてるのが嬉しくてつい……!』


『そうなの?』


『はい! それに楓って、学校でも事務所でも同じだったんだって分かって嬉しかったんです!』



 どこにいても自分をさらけ出していた楓。

 それを知ったユリは、自分も楓のように全力で自分を貫いていこう……そう心に決めたのだった。



 しかし現実は非情。

 いくら皆一丸となって頑張っていても、上からゴーサインが出ないのだ。


 アイドルとはどうあるべきなのか……それを皆必死に模索しながら突き進んできた。

 いろんな女性アイドルグループのライブに参戦して見せ方を学んだり、レッスンが休みの日もメンバーで集まって自主練やどうすればもっと自分たちの魅力を引き出せるかのミーティングも行った。

 なのに何一つ成果なし。


 そして気づけばもう夏前。

 皆の心が折れかけていたある日、珍しく鬼マネがレッスン場に顔を出す。

 

 

『調子はどうなの?』


『マ……マネージャー』



 全員マネージャーに視線を合わさず暗く俯く。



『なによ辛気臭いわねぇ。 本当にここがアイドルのレッスン場なの? 華やかさが足りないんじゃない?』



 そう声をかけながらマネージャーがメンバーの前に立つ。



『あの、マネージャー、どうしてここに?』


 

 先輩の1人が小さくてを上げながらマネージャーに尋ねる。

 するとマネージャーは少し寂しそうな顔をしながら全員を見渡した。



『悪いお知らせよ。 あなたたちを指導していたコーチが辞退したわ』



『『えぇ!?!?』』



 聞くところによるとユリたちには何かが足りず、自分にも分からない。

 だからこれ以上自分では輝かせることが出来ないと言ってきたとのことだった。



『それでもし今年中に芽が出なかった場合はこのアイドル部門は消滅。 それまでの期間は私が面倒をみることに決まったの』



 マネージャーが小さくため息をつきながら『まぁ、私、アイドルのことなんてよく分からないのだけれど』と小さく呟く。



『そ……そんな』



 マネージャーの言葉を聞いた全員の顔が曇る。

 もうダメかもしれない。 ユリを含めた皆が諦めていた……そんなときだった。



『だからね、この残りの期間、私の思うようにやらせて欲しいのよ』



 マネージャーが手を叩きながら私たちに笑顔を見せる。



『マネージャーの……やりたいこと?』


『そう! 私実はたまにだけど皆のレッスン風景とか覗いてたんだけどね、これが原因なのかなーって感じるところがあるっちゃああるのよ。 だから……』



 全員の視線がマネージャーへと向けられる。

 マネージャーは皆が自分の言葉に耳を傾けていることを確認すると、『これはかなり重要なことよ?』と念押しした上で、声を大にしてこう言ったのだった。



『だからもうすぐ夏休みでしょ!? なのであるオーディションを見学するために旅行に行きたいと思います!! もちろん全て事務所の経費で!!』



『『『ええええええぇ!?!?!?』』』



お読みいただきましてありがとうございます!!

もう1話気合で書きましたぁ☆ ストックなど用意しない作者!笑


下の方に☆マークがありますので評価していってもらえると嬉しいです! 

感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!

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[一言] こんのマネージャー自由だの… にしても、アイドルになりたいな突拍子がないの
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