表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/733

260 特別編・ユリ③ 告白


 二百六十話 特別編・ユリ③ 告白



 楓の所属していた事務所のマネージャーの提案を受け入れモデル修行をすることとなったユリ。

 最初の頃ユリは、まぁそれなりに苦しくなるまで頑張って、それから楓の後を追おうと考えていたのだが……



『か、楓……。 楓は本当に凄いね』



 心の声が口から溢れる。



『ほらぁーー!!! ユリ!! スピード落ちてるよ!!! モデル歩きを完全に体が覚えるまであと100往復!!』


『は、はひぃーーー!!!』



 まさに鬼マネ。 毎日こんな感じでマネージャーにしごかれて……家に帰る頃と空腹を満たしてそのまま限界にまで達していた疲労からすぐに就寝。

 楓はこれほどの苦行を学校生活と併用してやっていたんだと考えると、いかに楓が努力型だったかということが身にしみて感じられた。



『ユリーー!!! またバランス崩してる!! ステージを歩いている自分を上空から……俯瞰で見てる感じを意識しなさいって言ったでしょーー!!!!」


『す、すみませーーん!!!』



 この状況……ユリと同じ境遇の人がいたとして、大抵の人なら『こんなことしても意味がない』と感じてすぐに親友の後を追っていることだろう。

 しかしユリはその選択は選ばず。 それはこんな理由からだった。

 それはある日の休憩中に放ったマネージャーの何気ない一言。



『ユリってあれかしら。 楓の近くにいたからなのかな……、たまにウォーキングとか他の練習の時の素ぶりがたまに楓と重なるのよね』

 

『え……、ユリが楓と……?』


『えぇ。 こんなこと言うとおばさんが何夢見てんだって思うかもしれないけど、まるでユリに楓が乗り移ってるみたいに……』



『!!!!』

 


 ◆◇◆◇



 ある日の夜。

 特訓を終え後は寝るだけの状態になったユリがベッドの上に倒れこむと、ふと以前マネージャーから言われた言葉を思い出す。



『今日もマネージャー、ユリの上達スピード見て驚いてたなぁ。 楓、ユリに頑張れって言ってくれてるんだよね』



 スマートフォンの画面に映る小山楓の写真に向かって微笑みながら話しかける。

 今映し出されている写真は高1の春、休日に楓と2人でサニーズのニューシーというアイドルグループのライブに行った日の帰りに撮った時のもの。

 お互いに担当アイドルのうちわを胸前に持ち、満面の笑みをカメラに向けている。


 楓はその写真をしばらく眺めながら、当時のことを思い出していた。



『楓、覚えてる? ユリたち、この日のライブでお互いの担当からファンサ貰えたんだよね。 楓は手毬くんから。 ユリは増岡くんから。 それで、この日新曲を特別に歌ってくれたんだよね』



 思い出しているとユリの脳内でその時の曲がやんわりと流れ出す。

 その曲名は「生きて」。 失敗しても諦めず生きて欲しいというバラード曲で、楓が毎日リピートするほどに好きになっていた曲だ。



『ーー……ん? あれ、待って?』



 とある違和感を感じた楓は上体を起こして目を覚ますように顔を左右に細かく振る。


 

『なんで今、そんなこと思い出したんだろう』



 今までもこの写真は何度も見てきた。

 でも思い出すのは決まってお互いにファンサービスを貰えたことやライブの時に盛り上がっていたこと。 

 なのにどうして今このタイミングでそんな曲のことを……



『もしかして楓……本当にユリの側にいるの? だからこんなこと……』



 ユリは小さく呟く。


 それは単なる偶然なのかもしれない。

 されどユリにとってはその偶然すらも楓を近くに感じているようで幸せに思えた。


 そしてもしこの状況を他の人が体験したのなら、『その人のためにも自分は頑張って生きていこう』と思うだろう。

 しかしそう、ここにいるのは少しズレた天然少女。 楓の「北山とは付き合っていない」を真に受けて本当に告白して付き合ってしまったレベルの思考の持ち主・ユリなのだ。

 ユリはそんな体験をした後、こう小さく呟いた。



『楓……モデルじゃなくて、アイドルになりたかったの?』



 事務所に入って今日までマネージャーの言ってた通り……本当に楓が自分に力を貸してくれてたらいいなとか思っていたのだが、今この時よりユリは確信する。



 楓は絶対に自分の近くにいる。



 そして楓はモデルとして成功したら、アイドルになりたかったんだ……それを今自分に伝えてきたんだ!!

 そう思うと疲れているはずなのにメラメラと力が湧いてくる。



『待っててね楓! ユリが楓の願い……何としてでも頑張って叶えてあげるから!!!』

 


 そうして決意した翌日の朝。

 ユリはマネージャーの部屋の扉を勢いよく開けると、興奮気味にこう言ったのだった。




『マネージャー!! ユリ、モデルじゃなくてアイドルやりたいです!!!!』

 


『えええええええええええええええ!?!?!?』

 

 

 

お読みいただきましてありがとうございます!

励みになりますので下の星マークで評価していっていただけると嬉しいです!

感想やブクマ・レビュー等お待ちしております!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ユリちゃん……良い子や!! けど、ちょっとズレテル。 だが、良い子なんや!! (。´Д⊂)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ