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255 全力のオレ!


 二百五十五話  全力のオレ!



「えーー!! なんで!?!?」



 翌日の朝。 今日も昨日と同じで教室内で小畑の叫び声が響き渡る。

 話題はもちろん試合の話。 三好と多田が『行かない』と言っていることに対し、小畑が理由を聞いているところだ。



「なんで一緒に行ってくれないの!?」


「だってウチ、今日は塾だし。 流石にサボったら親に怒られるもん」


「ま、まぁ麻由香はそれなら仕方ないよね。 でもなんで佳奈までぇーー!?!?」



 小畑は三好の背後に回り抱きつくと、顔を覗かせながら尋ねる。



「えーー、だって疲れるだけじゃん! 昨日だって1回もボール奪うことすら出来なかったのにさ、時間と体力勿体無いし。 それにエマがバスケ出来るんでしょ? だったらもうよくない?」


「だめーー! どんだけ上手いのか分かんないし、だったら人数多い方が有利じゃん! 絶対勝って頭下げさすんだから!!」


「えーー、でも私はなぁーー」



 正攻法では三好が来ないと悟ったのか、小畑は急に甘い声を出しながら耳元で囁き始める。



「ねーぇ佳奈ぁー。 いいじゃん友達でしょー」


「あのねぇ美波、いくらそんな可愛い声でお願いしても無理なものは無理なの。 私も家に帰ってやりたいこととかあんだから」


「やりたいこと? なにー?」


「そ、それは色々だよ! なんでいちいち言わないといけないの」


 おいおい三好、正直に言ったらどうなんだ。

 お前昨日メールで『あんなの拷問じゃん』って言ってたじゃないか。

 まぁこのことは小畑には内緒にしておいてあげるが……



「お願いー。 来てよー。 あ、じゃあ来てくれたら福田をあげよう」



 小畑がニヤリと笑いながら人差し指を立てる。



「!」



 一体なぜそうなるんだ。

 小畑の言葉を聞いた三好の身体がビクンと跳ね、その後離れたところからその様子を眺めていたオレと目が合う。

 ーー……いや、なんでオレ見んだよ。



「どどど、どうしてそうなんのさ!」


「だって佳奈、福田がお気に入りなんじゃないの?」


「んなわけないでしょ! なんで私が福田なんかを!!」



 三好が小畑の言葉を強く否定しながらオレを睨みつける。

 いやだからなんでオレ見んだよ。 睨みつけるなら小畑だろどう見ても。

 まぁでも三好のやつ……顔を真っ赤にしながら否定するなんてどんだけ全力なんだよ。 



「くそ……ちょっと傷つくじゃないか」



 これ以上聞くと心に悪いと思ったオレはゆっくりと席を立ち教室の外へ。

 とりあえず時間までトイレの中で過ごそうと思い向かっていると、後ろからエマに呼び止められた。



「ん、なんだエマ」


「今日のことなんだけどさ」


「あー、試合?」


「そう。 バスケの感覚訛ってるかもだから、昼休みちょっと付き合ってよ」


「え」



 話を聞くと、どうやらエマは今の身体になってからバスケをまったくやっておらず、試合前に感覚を思い出しておきたいとのこと。

 なので昼休みに体育館で練習に付き合ってほしいというものだった。



「まぁ……いいけどエマ、お前本当に大丈夫なのか?」


「なんで?」


「だってさ、今のお前の体ってその……小山楓の時よりも体力とかないし低身長なわけだろ?  それで勝てんの?」



 ぶっちゃけオレも前世の森本真也時代と比べると、今の体との違いに驚いたことが結構あるからな。


 例えば食欲だといつもなら胃がもたれていた量でもペロリと完食出来るし、睡眠欲も健康的な生活を送らせてもらっているからなのか、やましいことを考えていない限りは常に熟睡だ。

 そして性欲も今までよりも明らかに速いスピードで、かつ量も……ゲフンゲフン!!!!


 ……あれ? オレ的には違って困ったことはないかもしれないな。


 そんなことを考え込んでいるとエマが「そこは任せなさいよ!」とあまりない胸をトンと叩く。

 えっと何の話してたっけ……、あ、その身長と体力で本当に前みたいにバスケ出来るのかって話だった。



「そうなのか?」


「もちろん! もし体力が続かなかったとしても、エマにはバスケをし続けていたっていう記憶と技術・知識があるからね! 身体的なところはそういう内面でカバーしてみせるわよ!」


「お、おぉ……頼もしい」


「だから昼休み、頼んだわよ」


「おう」



 こうしてオレは昼休みにエマの練習に付き合うことが決定。

 だけど舐めてたぜ。 昼休みにオレはちゃんと体育館へと向かいエマの練習相手をしていたのだが……



「ほらダイキ! エマから全力でボール奪ってみて!」


「お、おう」


「違う! 妨害するときはちゃんと相手の体の向きに合わせながら視線の先を見て!」


「あ、はい」


「だからちがーーう!!!」



 ス……スパルタだああああああああ!!!!!

 なんだろう……今のエマはエマではなく、エマの体をした小山楓だ!!

 バスケに本気すぎるっ!!!!



「はい次はエマがシュート決めようとするから全力で前に立ちはだかって!」


「えええ!! それ昨日言ってたあれじゃねえか! やだよ突き指怖えよ!」


「だからそんな簡単にならないって言ってるでしょ!」


「じゃあ突き指もしなったらどうすんだよ!」


「その時は身の回りの世話をエマがしてあげるわよ! だから全力で来なさい!」



 ーー……身の回りの世話? マジ?

 てことはトイレの時とかも……


 オレの脳内で足の小指ブレイクをした際の優香とのトイレタイムが再生される。



 ゴクリ。



「わかった」


「う、うん。 やけに素直ね。 じゃあやるわよ!」


「っしゃああああ!!! 全力で行くぜええええええ!!!!」



 それからオレはエマがシュートの構えをとるたびに全力ジャンプ&ガード!

 なんだかんだで突き指が怖かったオレはそんな恐怖とも戦いながらも何度もエマの前に立ち塞がったのだが……



 ズッキーーン!!



「痛ってえええええええ!!!!」



 ほら見ろまさかとは思ったがやっちまったじゃねぇか!!!

 ボールが全力ガードしていたオレの指先に激突。 オレは指を抑えながらしゃがみ込む。



「ちょ、バカ! どこに手を伸ばしてディフェンスしてる時に指曲げる人がいんのよ!! そこは基本通り伸ばしなさいよ!」


「そんなの知らねぇよ知識ないんだから!!!」


「じゃあ体育の時とかどうしてたのよ!」


「そんなの決まってんだろ! ボール来たらいやだから目立たないようにそれとなく走ってただけだよ!」



 ちくしょう……指先がジンジンと痛みやがる。

 


「……しかしこれで決まりだな、エマ」


「え、なにが?」


「オレはちゃんと突き指をした。 身の回りの世話、頼むぜエマおねーたん」



 オレが未だ激痛の走る指を見せると、エマはため息をつきながらオレの手首を掴んで引っ張りあげる。



「とりあえずあれね、保健室いきましょ」


「でもよ、今までの経験上……この時間保健室に先生いないと思うんだけど」


「突き指の処置くらい何度もやってきたから大丈夫よ。 その時はエマがやったげるから心配しないで」



 こうしてオレは保健室でエマによる処置を受けることに。

 なんか……あれだな。

 指の手当てをするから当たり前のことなんだけど、エマがたくさんオレの手に触れているのを見ていると、ちょっと照れてきちゃうよね。

 

 エマの手は運動したからなのだろう……程よく体温が上がっていて温かく、肌は当たり前のようにフニフニで最高の感触でした。



「ーー……で、エマ、どうだ?」


「なにが?」


「勝てそうか?」


「ふふ、エマに任せなさい」



 その言葉を聞くと安心するぜ。

 そして来たる放課後、オレたちは決戦の地へと向かった。



お読みいただきましてありがとうございます!

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感想やブクマ・レビュー等もお待ちしております!!


ほんとエマは頼りになる同級生ですねぇ!!

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[良い点] エマたそにお世話とか…うらやまけしからん
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