254 JC対策!
二百五十四話 JC対策!
「くやじーーーーーっ!!! ねぇどう思う!?」
謎のJCにバスケで完敗した翌日の朝、教室では小畑がキーキー喚きながら三好と多田に昨日の出来事を話していた。
「えええ、美波、1回もボール取れなかったの?」
多田が驚いた表情で小畑に尋ねる。
「そう! あ、これ取れる!って思ってもひょいって避けられたりさ!! しかも向こうは余裕の顔だし……あああああ思い出しただけでムカつくーーーー!!!!」
「でもすごいねその中学生の子。 美波って結構体力ある方じゃない? なのにそれを相手にしても全然余裕なんて」
「でしょ!? だからさ、今日もし暇だったら麻由香や佳奈にも協力して欲しいって思って!!」
小畑が多田と三好を交互に見つめる。
なるほどな、別に1対1の戦いではないんだ。 勝つために人数を増やすということなんだな。
「え、うん。 ウチはちょうど塾ないからいいけど……佳奈、さっきから黙ってるけどどうしたの?」
快く了承した多田が三好に尋ねる。
確かにさっきから三好が一言も話していないような……。
オレも少し気にはなっていたので集中して会話に耳を傾けた。
「ーー……いや、それよりも先に気になったところあんでしょ」
三好が静かに口を開く。
「「え?」」
「美波、福田と付き合ってたのー!?!?」
ええええええええ!?!?!?
三好、どこからそんな話になるんだよおおおおおおお!!!!
三好の大声のせいで数人がオレと小畑に視線を向けてんじゃねえかあああ!!!!
「え、佳奈、なんで?」
小畑が大きく瞬きをしながら首を傾げる。
「だってその中学生、美波に彼氏も一緒にかかってこいみたいなこと言ったんでしょ!?」
「あー、まぁそうだけど別にそこはどうでもよくない?」
「どうでもよくないじゃん!!!」
「ちょっとなにムキになってんの佳奈」
「え、付き合ってんの!?」
「んなわけないでしょ」
小畑の発言を聞いたモブたちが「なんだよびっくりしたじゃん」と笑いながらそれぞれの会話へと戻っていく。
誤解させないようにわざわざ突っ込んでくれるなんて三好もいいやつじゃないか。
「とりあえず!! 今日こそはあの中学生倒すから! 佳奈も手伝ってくれるよね!」
「……まぁうん。 それはもちろん」
「よし! じゃあ今日は3人であの中学生倒すぞーー!!!」
「「お、おーー」」
ーー……あ、オレは呼ばれないのね。
まぁもとから行く気は無かったけど……こうも戦力外通告受けるとちょっとへこむな。
こうして放課後、小畑は三好と多田を引き連れて昨日の謎のJCのいる公園へ。
なんだかんだでオレも気になってしまい遠くから見てることにしたのだが、結果はまぁ思ってた通りに……
「はい、暗くなってきたから時間切れー。 残念でしたぁー」
「ぐぬああーーーー!!! むっかつくーーーー!!!!! ねぇ、あと1回!!!」
「いやいや君、後ろ見てみなよ。 お友達はもうヘトヘトみたいだよー」
「えぇ!?」
「ちょ……ちょっと美波、ウチ……もうムリ」
「私もギブ。 どんだけ体力あんのさ美波とあの人…」
JCに突っかかっている小畑の近くでは限界まで疲弊したのかコートの上で仰向けに寝転がっている三好と多田。
その後小畑は三好たちに引きずられながら公園を後にしていたのだった。
「どうするの? 明日もやるのー?」
「くうううう!!! 当たり前じゃん!!! 明日こそシュート決めてやるんだから!!!!」
ーー……にしてもあのJC、ほんとにバスケ上手いよな。
なんであんなに上手いのに学校行かないで公園にいるんだろう……。
◆◇◆◇
謎のJCのことを考えながら家へと帰っていると、マンション前で買い物帰りのエマと鉢会う。
「あれ、ダイキじゃない」
「おー、エマ」
「どうしたのよこんなに遅くまで」
「いやーちょっとな」
「もしかして、また誰かに狙われてた……とかじゃないわよね」
エマがグイッと顔を近づけてくる。
「んなわけあるかよ。 あったらさっさと行動に移してるっつーの」
「じゃあなんで?」
はぁ……つい最近小さなことを気にするやつはモテないって言ってたやつ誰だよ。
オレは小さくため息をつきながらエマに小畑と謎のJCとの件を簡潔に話すことにした。
「ーー……え、その中学生、ミナミにそんなこと言ったの!?」
エマが大きく目を開きながらオレに尋ねる。
「そそ。 で、理由を知りたいなら私からボール奪ってシュート決めろって言ってきてさ。 それで小畑がもう倒す気満々なわけ」
「え、でもその子、背は小ちゃいのよね? だったらどうとでもなるでしょ。 向こうがシュート決めるときに目の前で飛んで妨害するとかさ」
エマが軽く両手を上げながら首を傾げる。
ーー……いやな、エマ、お前そう簡単に言うけどな?
「ばかやろー、それで突き指したらどうすんだ。 怖いだろ」
「はぁ……その程度じゃ突き指なんてそうそうしないわよ。 どんだけ貧弱なのよあんた……」
エマが深く息をつきながらオレの肩をトンと押す。
「は? なんだその私は出来ますけど的な言い方は」
「当たり前でしょ。 忘れたの? エマ、小山楓時代は中学1年からバスケしてたし途中からはスタメンにも選ばれてたのよ? それくらい出来て当然よ」
エマは腕を組みながら偉そうに鼻をフンと鳴らす。
あー、そういういや過去のこと話してくれてたときにバスケやってた的なこと言ってたな。
ーー……ん? てことは……
「えっと……じゃあさ、お前なら背の小さい相手からボールを奪う技術とかそういうのも知ってるわけ?」
「もちろんよ」
「ならさ、教えてあげてくれよ小畑たちに」
「は? ムリよ」
「えぇ!?」
まさかの即答。
オレは思わずバランスを崩して転びそうになるのをギリギリのところで持ちこたえる。
「な、なんで?」
「あのねダイキ、そう簡単に言うけどその中学生って多分だけど経験者でしょ? 素人に簡単に教えたところで敵うはずがないでしょうよ」
せ……正論だ。
オレはエマの言葉に反論できずグヌヌと声を詰まらせる。
「じゃ……じゃあ勝てないままなのか?」
オレの苦し紛れの質問にエマは「え?」と大きく目を開かせる。
「いやいや何言ってんのよ。 エマが出れば済むことじゃない?」
「え」
思ってもいなかったエマの提案にオレの頭が一瞬止まる。
そうだよな、ていうかそれが一番効果的な案な気もするけど……
とりあえずそう決めたところで外も寒いこともありオレたちはそれぞれ帰宅。
その後しばらくするとエマからメールが届いた。
【受信・エマ】あ、そうそう。 エマが出てあげるって話、ちょっと条件あるんだけど。
【送信・エマ】なんだ?
【受信・エマ】それだと帰りが遅くなっちゃうからさ、桜子が帰ってきたタイミングからでいいから一緒にいてあげてくれるようにお願いしてくれないかしら。
なんだ条件ってそんなことか。
しかしエマのやつ、本当にエルシィちゃんのことを大事に思ってんだな。
その愛が伝わってきてこっちまで幸せな気持ちになってくるぜ。
【送信・エマ】分かった。 結城さんにお願いしておくよ。
まさかオレがここまで小畑たちに肩入れするようになってるとはな。
人との関わりがここまで感情を揺さぶってくるものだったとは……。
「とりあえず……あの生意気なJC、明日楽しみにしてるんだな!」
オレは明日のエマの活躍に期待しながらも、そのことを小畑や三好たちに連絡したのだった。
【受信・小畑】え! エマ経験者なの!? やった!! これは明日の勝利は貰ったも同然だね!!
【受信・多田】いや、明日はウチ塾だから行かないよ?
【受信・三好】いやいやもう私行かないし。 あんなの拷問じゃん。
ーー……お?
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