251 天使エルシィちゃん!【挿絵有】
二百五十一話 天使エルシィちゃん!!
プリンセス西園寺とのほぼデートのような1日を終え、とうとう『桜子をよろしくパーティー』の開催日!
開始時間はお昼かららしく、優香と結城は早朝からパーティーに必要な料理を作るためにキッチンにこもっていた。
「あのー……野菜切るとかは出来ないんだけど、何かやることある?」
「あ、桜子。 そこにお姉ちゃんが切ったやつあるからさ、さっと水で流しておいてくれる?」
「うん。 あ、お姉ちゃん、それ私後でやるから火の方見てていいよ」
「ありがとう」
「ーー……」
はい、オレの入る余地なし!
2人ともこのパーティーへの思い入れが強すぎるのか、前日の夜から気合入ってたもんな。
そんな2人の姿をぼーっと眺めていると、インターホンの音が鳴り響く。
「桜子、これどうかな。 ちょっと味見してみて」
「んーっ! 美味しい」
「ふふ、じゃあこの感じでいくね」
いや気づいてないのかよ!!
……となればここはオレの出番だな。
オレは「はいはい今行きますよー」と小さく呟きながら玄関へと向かい扉を開けた。
「あ、ダイキおはよー」
「おはぁーー!!!」
「えええ、エマにエルシィちゃん! まだパーティーまで時間あるぞ?」
オレがスマートフォンで時間を確認しながら尋ねると、エマが「それくらい知ってるわよ」と呆れながらため息をつく。
「え、じゃあどうしてだ?」
「ほら、高槻先生って年末もだけど……旅行の時に実感したけどさ、結構なお酒好きじゃない?」
「うん」
お酒好き……と言うよりは酒乱だけどな。
「だから、はいこれ!」
「ん?」
エマがパンパンに何かが詰まったビニール袋をオレに差し出す。
「なんだこれ……って重っ!! 中に何入れて……あ、ワインか!」
「そう。 フランスのパパが大人になったら飲みなさいって送ってきてたんだけど、絶対エマもエルシィも飲まないしさ。 だったら先生に飲んでもらおうって思ったわけなのよ」
「へぇー、エマにしては気が利くじゃねーか」
「うるさいダイキ。 それにエマが早くきたのはそれだけじゃないの。 何かお手伝いすることあったらしようかなって思ってね。 全部やってもらうのも申し訳ないしさ」
そう言うとエマは「はいダイキどいたー」と言いながらリビングの方へと向かっていく。
「あ、でもエマ、今は……」
「やっほ桜子。 おはよーございます優香さん」
「おはようエマちゃん。 どうしたのまだ早いけど」
「いやー、お手伝いしようかなって思いましてー」
「いいの? じゃあこれとこれを……」
いやなんで無視されてないんだよ!!!
オレは玄関からリビングにいる2人に向けて心の中でツッコミを入れる。
「どったぁ、だいき」
「エルシィちゃん、オレはエマたち3人から邪魔者扱いされてるのかもしれない」
オレはエルシィちゃんの目線の高さに合わせるように膝をつきながらショボンと顔を俯かせる。
「だいき、そーなん?」
「そーなんよエルシィちゃん」
「だいき、かなちー?」
「うんかなちー。 エルシィちゃんはオレのこと邪魔者扱いしないでね?」
オレが力なくエルシィちゃんの手を握るとエルシィちゃんが満面の笑みをオレに向けてくる。
「ん? どうしたのエルシィちゃん」
「エッチー、だいき、しゅきだから、だいじょぶよー?」
やっぱりこの子は天使だよみんな!! 間違いないよもう!!
「ほんと?」
「んー! だから、だいきに、こえ、あげゆのよー」
そう言うとエルシィちゃんはポケットから飴玉を取り出しオレに差し出してくる。
「え、いいのエルシィちゃん」
「んー! だいき、アメたべて、ニコってしゅゆー」
うわああああああ!!!! エルシィちゃん!!! 可愛いよ優しいよ尊いよおおおおおおお!!!!!!
オレの目にはいつぞやの脳内で降臨なされた……天使の羽を生やし白いドレスを纏ったエルシィちゃんの姿が映し出されていたのであった。
「ーー……あ、そうだ。 ねぇエルシィちゃん」
「んー?」
白いドレスの天使で思い出したオレはエルシィちゃんにあの時の話を振ってみることにする。
「あのさ、もしね? 結城さんが他の知らないお家に行かなければならなくなったとするでしょ?」
「ユッキーちゃんが?」
「うん。 それでもし、結城さんがそこに行きたくないって言ったら、エルシィちゃんはどうアドバイスする?」
「んー? だいきと、ケッコンしゅゆ!!」
エルシィちゃんが声を大にして自信満々に答える。
ーー……即答かよ。 それもオレの脳内天使と同じ答えじゃねぇか!!!
「えっとそれは……なんで?」
「だって、ユッキーちゃんとだいきが、ケッコンしたら、ふたりは、ずっと、いっしょなのよー?」
「ーー……ずっといっしょ?」
オレの聞き返しにもエルシィちゃんは「うんっ!」と大きく頷く。
「ケッコンは、ふたりは、だいしゅきでしょー?」
「え、うん。 まぁそうなるよね」
「だいしゅきだったら、だいじょぶなのよー?」
「ーー……ん?」
「エッチー、エマおねーたんだいしゅきだし、エマおねーたんは、エッチーのこと、だいしゅき! ふたりともだいしゅきだったら、バイバイは、ないのよー?」
んあああああ、なんとなくだけど言おうとしてることが分からなくはないぞ?
「えっと……それはつまり、結婚するってことはお互いに好きってことだから離れていくことがないって意味?」
「しょえーーー!!!!」
エルシィちゃんがピョンピョン跳ねながら頷く。
なるほどそう言う意味ね。 てっきりオレは心の中で赤ちゃんを作って既成事実を作れって意味なのかと思ってたぜ。
子供の純粋な考えおそるべし……歪んだオレの心をどうかお裁きください。
なるほどな。 ちょっとだけだけど、すっきりしたよ。
こうしてオレとエルシィちゃんは飴を舐めながらリビングへ。
エマや結城、優香が料理している姿を横目で見ながら録画していたアニメ・ラブカツを一緒に見ていたのだが……
「そういやエルシィちゃんはラブカツ毎週見てるの?」
「んんー、みてなー」
「へぇ、珍しいね。 じゃあどんなアニメ見てんの?」
「んとねー、エッチーしゅきなのねー、ハミュロックー!」
ーー……。
「ええええ!?!? ハムロック!?」
オレはあまりにもタイムリーな話題に一瞬固まった後に驚きの声を上げる。
「だいき、しってうー?」
「まぁ……少しは。 てかエルシィちゃん、教えて欲しいんだけど、ハムロックのどこが好きなの?」
「かぁいいーとこぉーー!!!!」
わ☆か☆ら☆ん!!!
だけど……
君のその笑顔! ハムロックよりも君の方が圧倒的に可愛いよ!!!!!
そしてこの時はまだオレは知らなかった。 この『ハムロック』がまさか身近に迫ってきていることに。
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大天使エルシィちゃん可愛くかけました!!!