248 気合い!!【挿絵有】
二百四十八話 気合い!!
あれから西園寺の靴下を無事に神様へと献上できたオレはホッと胸を撫で下ろしながら1人家へと帰宅していた。
そういや美香のやつ、渡した後に何か言ってたな。
確か……
『ダイキ』
ミッションを済ませたオレが帰ろうと美香に背を向けた途端、美香がオレの名を呼ぶ。
『なんだ?』
『この靴下、かなり気に入った。 だからちょっと美香、独り言を言ってあげる』
そう言うと美香は西園寺の靴下を鼻に当てて息を吸いながらオレに顔を近づけてくる。
神様の独り言……まさかまだ結城に何か起こるとでもいうのか?
オレがゴクリと生唾を飲みながら美香を見据えると、美香はゆっくりとその口を開いた。
『言霊の力は凄い。 互いに了承容認したのなら、それは尚更。 だから今後は何においても2人で1つ……覚えておいて』
ーー……ん? いきなり何を言ってるんだ美香は。
オレは首を傾げながら小さく手を上げる。
『えっとすまん、美香、それは一体どう言う……』
『美香から言えるのはこれだけ。 それじゃあ』
『え』
美香はそれだけ伝えると、西園寺の靴下越しに空気を吸い込みながらどこかへと去ってしまったのだった。
ーー……結局なんだったんだ?
そんなことを思い出しながら歩いていると、いつの間にか玄関の前まで到着。
扉に手を伸ばそうとしたところでタイミングよく扉が開かれた。
「あ、福田……くん。 おかえり」
「結城さん?」
そこには私服姿に着替えた結城の姿。
「どこか行くの?」
「うん、お姉ちゃん、今日早く帰って来たから、今からお買い物行こうって」
へぇーと思っていると遅れてリビングから優香が登場。
「あ、ダイキおかえりー」とオレに温かい言葉をかけながら靴を履き始める。
「お姉ちゃん、結城さんと今から買い物なんだよね」
「うん。 今日の晩御飯の食材と、明後日の日曜……パーティーに必要なものも一緒に買おうかなって」
優香が「ねっ」と結城に振ると、結城も可愛く「うん」と頷く。
実に尊きかな。
「そうなんだ。 荷物多くなりそうだったらオレも手伝おうか?」
「ううん大丈夫だよ。 お買い物の前に桜子とお洋服見に行く予定だから、ダイキ的にはつまんないと思うし……家でゆっくり待ってて」
「あ、うん分かった。 じゃあ留守番してるよ、行ってらっしゃい」
オレは優香と結城が階段を降りて行くのを見送った後に家の中へ。
パタリと扉を閉めるなり、口角がグインと上がる。
「さっき結城はお気に入りっぽいピンクの靴下を履いていた……しかし今朝学校に行くときに履いてたのは黒い靴下。 と言うことは……」
オレは視線をゆっくりと洗濯機の置いてある脱衣所へと移動させる。
実は美香が直に靴下の臭いを嗅いでいる時、心底羨ましかったんだよナァ!!!!
いつもお風呂前に楽しんでるのは結城や優香のパンツばかりだったが、靴下で楽しむのも案外いいものなのかもしれない。
思ったら即行動! オレはリビングのソファー目掛けてランドセルを華麗にシュートすると、超高速で脱衣所へと向かった。
◆◇◆◇
「うへ……うへへへ、あったぁ……」
洗濯機の中に入れられていた結城の靴下を発掘したオレは本能のままにニヤつきながらそれを丁寧に掴んで顔の前へ。
これから始めるテイスティングタイムを集中するために数回深呼吸……今にも弾けそうなくらいに脈打っている心臓を落ち着かせていく。
近々結城は1階下の高槻さんの家へ。 週末たまに泊まりに来るとしても、もう毎日のように結城の香りを嗅ぐことができなくなるんだ……となればこの機会、本気で集中して楽しまなければ。
「では……失礼して」
オレは結城の靴下に小さく一礼すると、ひとまず呼吸を口からのみに限定してゆっくりとオレの鼻へ。
生地が鼻に触れたことを確認したオレはそこで口呼吸を停止。 鼻呼吸に切り替え全力で空気を吸い上げた。
スーーーーーーーーン!!!!!!
「!?!?!?!?」
結城の靴下越しの空気を取り込んだ瞬間、オレはとてつもない衝撃を受ける。
この芳醇でほのかに結城を感じる香り……とてもクセになりそうなんだけど、どうしてだ!?
自らの意思で嗅いでいるにも関わらず、何故か結城に支配されているような感覚に陥ってしまうんだが!!!
オレはしばらくの間床に寝転びながら結城の靴下の香りを堪能。 この謎の現象について考察していると、とんでもないことに気づいてしまう。
ーー……ハッ!!! そうか分かったぞ!!!
これはついさっきまで結城が履いていた靴下……それをオレが鼻に当てているということはつまり!! 間接的にオレは結城に踏まれているということではないか!!!!
「てことはだ!! 今オレは結城に間接的に顔を踏まれている状況にあるわけだが、これを鼻ではなく……他の別のところに触れさせるとそれはつまり……」
オレは小さく呟きながら視線を自らの……どことは言わないが下半身へ。
ゴクリと生唾を飲むともう1つの靴下へと手を伸ばす。
……まさかこんな素晴らしいことに今まで気づかずにいたなんて。
オレは今までの自分に説教しながらも、もう1つの靴下を掴み……優しくオレの望む箇所に当ててみる。
するとどうだろう……まだ当てただけの段階だというのに一気にオレの中の何かが覚醒。 それと同時に勝手に声が漏れる。
「おひょおおおおおおおおおお!!!!!!!」
なんだ……なんなんだこれは!!!
今まで結構な回数を三好や多田……特にドSの女王・小畑に蹴られてはいたが、それはお互いの間に下着・ズボン・上履きとかなりの障害物があった。
しかしオレが今やっていることはもはやダイレクトアタック。 直接攻撃がこんなに心地のいいものだったなんて!!!
オレは思わずクシャミをしそうになるもそれを必死に我慢。
1分1秒でもこの香りや感触を楽しもうと気合いで己の限界を超え、優香たちが買い物から帰宅してくるまで存分に結城の靴下を堪能したのであった。
◆◇◆◇
その日の夜。
「ん? それどうしたのお姉ちゃん」
晩御飯時に優香の指に絆創膏が巻かれているのを発見したオレは優香に尋ねる。
「あー、これね。 買い物から帰ってたらに後ろから子供の乗った自転車が突っ込んできてさ。 ギリギリで気づいて桜子を庇ったんだけど、その時に近くにあった電柱に当たって軽く切っちゃったの」
優香が「でも大丈夫だから気にしないで」と笑いながら手をヒラヒラと振る。
「いやでもさ、その子供許せないね。 どんな見た目してた?」
「いいよ、別にちょっと怪我しただけだし……なんかブレーキが壊れちゃってたんだって。 後ろから走ってきたお母さんっぽい人が謝ってきてたし、なによりも桜子が無事だったからいいよ」
いやいや、にしても……だろ。
もしオレがその場にいたら怒りの炎で何してたか分からないな。
「あ、そうそうダイキ、足の指の感じはどう?」
オレが苛立っているのを察したのか、優香がいきなり話題を変えて尋ねてくる。
「え、うん。 右足はもう大丈夫そうかな。 左足の指はまぁ……ちょっとは痛いけど走っても問題ないかなーってくらい」
「そうなんだ、もしまだ結構痛かったら一緒にお風呂入ろうって思ってたけど、大丈夫そうだね」
「え」
優香と結城が仲良くお風呂へと向かい、オレがソファーでボーッとしているとスマートフォンが振動する。
どうやら西園寺からのメールのようだ。
【受信・西園寺】福田くん、明日何時から行けそう?
別段やることもなかったのでオレはすぐに返信することに。
【送信・西園寺】西園寺に合わせるよ。
【受信・西園寺】ほんと? じゃあ明日の10時に駅の改札前でいいかな。
【送信・西園寺】おけ。
【受信・西園寺】ありがとう。 楽しみにしてるね!
「そうか、明日は朝からか」
オレは小さく呟く。
てことは西園寺のやつ、結構な時間をノーパンで……かつ水を大量に飲んだ状態で過ごすってことだよな。
西園寺もオレの弄りに期待してるみたいだし、ちょうどこの誰か分からんクソガキに優香が怪我させられたことを知ってムシャクシャしてたところだ! 存分に楽しみ、そして楽しませてやるとしよう!!!
そして当日!
オレが早めに西園寺の指定した待ち合わせ場所である駅に着くと、すでに着いていた西園寺がオレに気づいて可愛く手を振ってくる。
なんだかすでに顔が赤いぞ? それに今から変態プレイを開始するとは思えない……気合の入った服装だな。
「おはよう福田くん」
「あぁおはよ。 てか西園寺、気合い入ってんな」
「そう?」
「うん。 めっちゃオシャレじゃん」
「そ、そうかな」
ーー……ん? なんだ? やけに嬉しそうだな。
「それはそうと西園寺、お前も元気だよな」
「な、なんで?」
「だってこんな寒い日にノーパンで……かつめっちゃ水飲むんだろ? さすがガチのドM」
「ーー……あ」
オレの言葉を聞いた西園寺が一瞬固まる。
「ん、なんだ西園寺。 何か忘れ物か?」
尋ねてみると西園寺は左右に首を振りながらオレを見る。
「むしろ……その逆かな」
「逆?」
「普通にパンツ履いてきちゃった」
ーー……は?
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●今回の挿絵高画質VERですが、後ほど作者Twitter(@mikosisaimaria)にて載せておくのでよろしければ覗いてやってください♪
作者は気に入りすぎてスマホの壁紙にしちゃってます 笑




