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247 献上品を求めて!【挿絵有】


 二百四十七話  献上品を求めて



 結城が近々高槻さんの家で住むが決定したことを優香に話したオレたち。

 一体どんな反応になるのかオレは内心かなり心配だったのだが……



「えー! そういえばちょっと前に引っ越し業者さん入ってたけど、あれ高槻先生だったんだね! それなら桜子もいつでも来れるしよかったじゃない」



 優香が結城の頭をいつも通りに優しく撫でる。



「それでね、お姉ちゃん。 私……また泊まりに来ていい?」


「もちろんだよ。 桜子は私の可愛い妹……高槻先生がお仕事から帰ってくるまで、もし1人で寂しかったらいつでもおいで」


「うんっ! ありがとうお姉ちゃん!」



 尊い。 なんて優しい世界なんだ。

 そして結城よ、今までで一番の笑顔だよありがとう。

 


「じゃあ今週の日曜日にでも高槻先生を招いて、桜子をよろしくパーティでもしよっか」


「いいの?」


「うん! 私も桜子の姉として、お母さん代理の高槻先生にはちゃんご挨拶しないといけないからね」



 この優香の提案をオレが夜に高槻さんに電話して確認してみたところ、高槻さんは快く承諾。

 こうして今週の日曜日、『桜子をよろしくパーティー』が行われることが決定したのだった。



 ◆◇◆◇



「いやー、心が明るいと視界に映る全てが美しく見えるぜ!」



 翌日の朝、オレがルンルンで廊下を歩いていると「ダイキ」とオレの名を呼び声が。



「ん?」



 振り返ってみるとそこには神様……美香の姿。

 窓際の手すりにもたれ、エマの使用済みリップを唇に当てながらオレに視線をジッと見つめていた。



挿絵(By みてみん)



「おぉ神さ……美香。 どうした?」


「ダイキ、結城桜子の結果は?」



 お! なんだよ心配してくれてたのかよさすが神様だぜ!



「美香のおかげで上手くいったよ、ありがとう」



 オレは満面の笑みで親指を立てる。



「ーー……で、靴下は?」



「え」



 ーー……あ、忘れてた。



「美香のおかげでダイキ、冷静に行動できた。 それでダイキ、靴下はいつ?」


「えっと、それは今探しているところで……」


「で、いつ?」



 美香がグイッとオレに顔を近づけてくる。



「もうしばらく待っててくれええええええ!!!!!」



 さすがは神様だ、問いかけてくるときの圧が他のそれと比べ物にならねぇ!

 オレは急いでその場から離れ、神様への貢物である靴下を探す旅に出かけた。




「ーー……とは言ったもののなぁ」



 オレは席に座りボーッと周囲を見渡しながら呟く。


 三好は嫌って言ってたしエマに頼めば殺されるし……多田や小畑はタイツだし、かと言ってその辺のモブに頼むのも違うしなぁ。

 一番手っ取り早いのは洗濯機から結城の靴下を拝借すればいい話なんだけど、それはぶっちゃけオレが欲しいからな。

 だからそれ以外だとすると、他には誰が……



「んあーー、ダメだ、思いつかん」



 オレは髪を髪乱しながら机の上に突っ伏す。

 このままでは美香に怒られて天罰が下ってしまうかもしれない……そんなことを考えていると、一際大きな声が廊下の方からオレの耳に入ってきた。



「西園寺ーー!! きらーーい!!」



 この声は……綾小路か。

 それにしても最近まで不登校だった割にはかなり元気だよなあいつ。


 耳を澄ませて聞いていると「じゃあ付きまとわないでよ」と呆れながら突っ込む西園寺の声。

 西園寺もなんだかんだで相手をしてあげてるようだし、やっぱり根は優しい女の子なんだなぁ……。


 

 ーー……ん? 西園寺?



「ありじゃね?」



 ◆◇◆◇




「頼む西園寺! お前のその今履いている靴下を……何も言わずにオレにくれ!!!」



 昼休み、西園寺をいつもの女子トイレに呼び出したオレは深く頭を下げる。

 こんなことを頼めるのはもう西園寺しかいない!! 

 そうだよな、なんで思いつかなかったんだ……西園寺はタイツじゃなくて靴下だし、学年マドンナ候補にも選ばれている誰もが認める美人! そんな子が履いてる靴下なら美香も喜ぶに違いない!!

 


「急に呼ばれた何かなって思ったら……靴下? なんで?」



 くそ!! やはりそこは女子……こういうこと言われたら気持ち悪いって思っちゃうよな。

 でもオレもここで引き下がるわけにはいかないんだ!!

 言葉で無理なら目で訴えてやると、オレは頭を上げて西園寺の顔に視線を向けた。



「なぁ西園寺……って、えええええええええええ!?!?!?」



 なんということだ。 

 オレが西園寺に視線を向けると、すでに西園寺が靴下に手を当てて脱ごうとしているではないか!!!



「え、えっと……西園寺? いい……のか?」


「あのね、これ……ドキドキするよね」


「え」



 西園寺は顔を真っ赤に染めながらハァハァと息を荒げている。



「あのー……なんで?」


「だってさ、福田くん言ったじゃない、『何も聞かずに靴下をくれ』って」


「え、うん」


「てことはさ、アレに使うんでしょ?」


「アレ?」



 オレの問いかけに西園寺は元気よく「うん」と返事。



「昨日ね、保健の授業で習ったんだ! 男の子ってさ、エッチなものを見ながらやるんでしょ? 確か、マス……」


「ちょまてーーーーーい!!!」



 オレは手を前に出しながら西園寺の言葉を遮る。

 なんだろう……なんか分からないけど、嫌な予感がしたんだよ。



「お、おい西園寺、何か勘違いしているのかもしれないな」


「そうなの!? 私てっきり福田くんがソレをした靴下を履いて1日中過ごせって言われるものかと……」



「んなわけあるかああああああああああ!!!!!」



 オレは全身全霊を込めてツッコミを入れる。



「じゃあ……なんで?」


「それは聞かれると困る!! でも断じてそんなことに使うわけじゃないんだけど……じゃあこうしないか!? その靴下をくれたらお前の望みをなんでも1つ叶えてやる! それでそうだ!?」


「え、ほんと?」


「ん、あぁ。 もちろんオレに出来ることで常識の範囲内でならな」



 オレがそう答えると、西園寺は「じゃあさ!」と前のめりになりながらオレに顔を近づけてくる。

 西園寺のやつ、一体何を言おうとして……



「今週の土曜日……つまり明日さ、私パンツ履かないでお出かけしようと思ってたんだけど、福田くん、一緒に来てくれる!?」


「え、なんで」


「そこで私さ、いっぱい水飲んで限界にチャレンジしようって思ってたんだけど、福田くんいたら『もっといけるだろ』って応援してくれるかなって思って!」


 

 西園寺、目をキラキラ輝かせすぎだぜ。

 しかしそうか……それに付き合えば西園寺の靴下はゲット……美香に怒られずに済むってわけか。

 結城のパーティーは日曜日だし、まぁ丁度いいといえば丁度いいが……



「よし、その話のった」



「ひゃあああああ!!! 想像するだけで脚が震えてきちゃうよぉーー!!!」



 こうしてオレは西園寺から靴下を入手。

 早速それを美香のもとへ届けようと女子トイレを出ようとしたのだが……



「ああああああ!!! やっぱりここにいた福田と西園寺ーー!!!!」



「え」

「あ……」



 そこに現れたのは綾小路。

 顔を真っ赤にさせ怒り狂った視線をオレに向けてくる。



「あー、やぁ綾小路」


「黙れうるさい福田!! アタシから西園寺奪ってそんなに楽しいの!? 西園寺はアタシのなんだから!!!」



 うわー、めんどくせーー。



 オレが冷めた空気を醸し出しながら綾小路を見つめていると、綾小路はそんなオレの横を通り過ぎて後ろにいる西園寺のもとへ。 手を腰に当てながらおそらく明日の妄想をしているのであろう西園寺の肩を激しく揺らしだした。



「あーー!! 西園寺、また福田に何かやられたの!?」


「ううんーー、まだやってもらってないけど、その約束しただけーー」


「だからなんで福田なのよー! アタシがやったげるって言ってるじゃん!!!」



 綾小路の猛烈アピールに少しずつ興奮が冷めてきた西園寺が視線を逸らしながら口を開く。



「言ったでしょ、まだそこまでの関係性じゃないし、綾小路のことはそこまで好きじゃないって」


「じゃあ福田はどんだけ好きなのよーー!!!」


「え、福田くん?」


「そう! 福田は西園寺の中で好きの部類に入ってるから、こうして羨ましいことするの許してるんでしょ!? その中でもどのくらい好きかって聞いてるの! それ教えてくれないとアタシも目安が分かんないじゃない!!」


「えっと……私が福田くんのことをどのくらい好きか……?」



 西園寺がキョトンとした表情でゆっくりと視線をオレに向けてくる。



「ーー……」


「ん? 西園寺? おーい」



 西園寺の目の前で綾小路が手を小刻みに振っている。



「私にとって……福田くんは……あれ?」


「ちょ、ちょっと!! なにボーッとしてんの!? 早くアタシに教えろーー!!!!」



 綾小路は無理やり西園寺の顔を自身の方へと向けるとグワングワンと揺らし始める。

 ーー……なんか分からんがこれはチャンスだな。



「じゃあ西園寺、詳細はまた夜にでもメールくれ」



 オレはそう西園寺に伝えると、そそくさと女子トイレを抜け出して美香のもとへと向かったのだった。

 産地直送!! 今いくぜ神様ーーー!!!!



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