243 一筋の光!!
二百四十三話 一筋の光!!
ダーク優香の活躍?によりお金の心配が解消されて母と縁を切ることはなくなった結城。
それは大変喜ばしいことで、これで全てが解決したと思っていたのだが……
「えっと……世間体……ですか?」
優香が目を大きく開かせながら結城母に尋ねる。
「はい、本当なら恥を忍んで桜子を福田さん宅に今後も預けたいところなのですけど、先日高槻先生からそのような話を聞いてしまいまして」
優香が視線を高槻さんへと向ける。
簡単に説明すると、オレと優香の家の付近住人の誰かが『福田家によく小学生の女の子が頻繁に泊まっているようだけどあれは大丈夫なのか』といった問い合わせを学校の方に寄せてきているというのだ。
しかも1件ではなく複数。
結城母はその話を高槻さんから聞いてしまい、娘をよくしてもらっていただけにこれ以上迷惑はかけられないからどうしよう……と高槻さんに相談していたらしい。
「えっと先生、桜子のお母様の……今の言葉は本当なのですか?」
優香の問いかけに高槻さんは「はい」と頷く。
「ですから近頃はどうやってその問い合わせにお答えしようものかとよく先生方と話し合っているんですよ」
「え、でもそれはただ単に家族ぐるみで仲がいいから良く泊まりに来てるって言えばよくないですか?」
「お姉さんの仰った通り、そうお答えしたこともあるんです。 ですが返ってきた言葉は『だったら親が送り迎えにくるなり少なからず挨拶に行ってるはず。 でもそんな姿、見たことがない』なんですよね」
「そんな……」
高槻さんの言葉を受けて優香はどうしようものかと口元に手を当てて考え出す。
「で、でも先生? 私は別に周りが何て言ってきたところで気にはしませんけれども……もしそんなこと言ってくる人がいたらその場で消しますし」
ビクッ
普通の言葉の中にすっと恐怖ワード入れてきますね優香さん。
今の言葉を聞いたオレたちの背筋がピンと伸びる。
「えっとですねお姉さん、その気持ちも分からなくはないんですが……問題はこの件を長引かせれば、根も葉もない噂が周囲に浸透しちゃうってことなんです」
「そうなんですか?」
「はい。 人の噂って絶対にそのまま伝わり広まることってないんです。 なのでそれを誰かに話す際、少なからず誇張したり……その話にインパクトを持たせようと、ありもしない出来事を付け加えて話すんです。 それが時間をかけて広まったなら……それはもう結城さんの保護どころではなくなりますよ」
高槻さんが真剣な眼差しで優香を見る。
「桜子の保護どころでは……なくなる?」
「えぇ。 そのうち噂を信じた誰かが教育委員にでも連絡しちゃうでしょう。 そうなったが最後……結城さんのお母様が家にいないことを知られると、十中八九、結城さんはお母様と疎遠の遠い親戚の家に行かされるか、施設に送られることになるでしょうね」
「「「え」」」
オレや結城、優香の声が病室に響き渡る。
「そんな……」
優香が結城を見つめながら小さく呟く。
まぁでもそうだよな。 オレたちだって結城母の話を聞くまでは、結城を苦しめるだけのただのクソババァってだけの認識だったし……それと似たようなものか。
確かに近所の人たちからしたら、今まで結城が置かれていた状況なんて知る由もない。 だから休日や長期休暇中にずっと他の家の女の子が住み着いてたり、行き来してる姿を見たら不審に思うのも仕方がないものなのだろうな。
オレがそんな人の思い込みの怖さを改めて実感していると、結城母が小さく口を開いた。
「それでですね、私と高槻さんで話し合った結果、桜子を……」
「や……だ……」
母親の言葉を遮るように結城がポツリと呟く。
「桜子?」
「せっかくママと一緒にいれるってなったのに、今度は福田……くんや優香さんと離れなきゃ……いけないの?」
結城がオレや優香に視線を向けながら母親の手を握りしめる。
「いや、あのね桜子聞いて、離れなきゃって言うのは……まぁそうなんだけど、ちょっと違うっていうか……」
「やだ!! 私、福田……くんや、お姉ちゃんとがいい!!」
結城は結城母から離れると、近くに立っていた優香に飛びつき抱きしめる。
「さ、桜子!?」
「お姉ちゃん! さっきのオジサンたち追い払ったみたいに何かいい方法ないの!?」
「えっ……それは……」
「じゃあ……福田くん!!」
「え、あ、はい!?」
優香から離れた結城が今度はオレのもとへ。
するとどうだろう……目の前にやってくるなりまさかのオレにもギュッと抱きついてきたではないか!!!
「!!!!!!!!」
今までこんな……結城からここまで積極的なことがあっただろうか。
オレの目の前には結城の後頭部。 結城はオレを強く抱きしめながらオレの胸に顔を埋めている。
こーれはヤバい、ヤバいぞおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ブオオオオオオオオオオオン!!!!!
オレはあまりの恥ずかしさと嬉しさから体全体の体温が急上昇!
頭に血が上り、蒸気機関車顔負けの蒸気を頭から放出させていく。
「ゆ、ゆゆゆゆゆ結城さん!?!?」
結城の感触、香り、近距離からの声……オレは萌え死……意識が飛びそうになるのを必死に耐えながら結城に声をかけた。
「福田……くんなら、何かいい方法思いつくよね!?」
「え……」
「だって今まで福田……くんは、いろんな方法でたくさん私を助けてくれた……! 上履きの時も……いじめられてる時も……競技会の時も……! だから今回のも福田……くんなら!!!」
うわああああああああ!!! 覚えてもらえてたよ嬉しいよおおおおおおお!!!
てか言葉だけ聞く限りだとめちゃめちゃ頼られて……好感度高そうじゃないですかああああああ!?!?!?
オレの心臓がバクバクと超高速……いや、超光速なビートを刻んでいく。
「福田……くん、何か……何かない?」
ここまで結城に言われて答えなしでは実にダサいぞ。 考えろ……考えるんだオレのブレインーーーーー!!!!!
オレは脳に『最適な案を提示せよ』と指令を送り、全神経を研ぎ澄ませて案が降ってくるのを今か今かと待ちわびた。
ーー……ん?
するとオレの脳内……暗雲の立ち込めた空の隙間から一筋の光が差し込んでいるのを発見する。
これは……何か思いついたのか?
オレは結城の香りを体内に取り入れながらもその光に意識を集中させた。
するとなぜかは分からないのだが……その光の上の方に天使の羽を生やし白いドレスを纏ったエルシィちゃんの姿を発見する。 天使エルシィちゃんは翼を可愛く羽ばたかせながらパタパタと無邪気に天から舞い降りてくると、これまた無邪気にオレを見上げて微笑んだ。
『だいき、エッチー、いいほーほー、しってうの』
いい方法!? なんだ!? 教えてくれエルシィちゃん!!
『えっとね、だいき、ユッキーちゃんと、けっこんすれば、いいのよー?』
ーー……え?
理由を聞こうとしたのだが、エルシィちゃんは「ばばーい」と翼を羽ばたかせて再び天へ。
一体今のはなんだったんだろうと思いながらオレは首を傾げる。
「ーー……オレと、結婚……?」
「えっ?」
結城が顔を上げてオレを見上げる。
「ん、どうしたの結城さん」
「えっと……なんで?」
「え?」
「今、福田……くん、『オレと結婚』って……」
「ーー……え? エエエエエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?」
オレはこれ以上ないくらいに動揺しながら視線を優香に向ける。
そんな……ありえない!
オレは今の言葉を口にした記憶なんてまったくないぞ!?
これはおそらく結城の空耳か思い込み……他の人には別のセリフで聞こえているはずだ!!
「お、おおおおおお姉ちゃん! オレ今そんなこと言った!?」
「ーー……うん」
ガーーーーーーーン!!!!!
「た、高槻さん!! 空耳とかじゃなかったですか!?」
「あらー、先生はキュンってしちゃいましたけど」
ガガーーーーーーン!!!!
「えっと……結城さんのお母さん……そう聞こえました?」
「うん……けど勇気あるわね、親の前でいきなりプロポーズなんて」
ズガガーーーーーーン!!!
オレは心の準備なしになんてことを言ってしまったんだとショックを受けながらその場で膝から崩れ落ちる。
「ふ、福田……くん? それで、なんで……結婚……なの?」
結城がオレの顔を覗き込んで尋ねてくる。
「あ……あはははなんでだろうね、オレにもよく分かんないや。 今度エルシィちゃんにでも聞こうかな、あはははは」
「エルシィちゃん? なんでそこでエルシィちゃんの名前が……」
結城が首を傾げていると、高槻さんが「えっと、そろそろ時間もあれなのでお母様の代わりに私がお話させていただきますね」と小さく手を叩きながら結城母の前に立ち、オレたちを見渡した。
「高槻先生、よろしいのですか?」
結城母が後ろから高槻さんに尋ねる。
「はい、ここは私がビシッと伝えちゃいます」
高槻さんの話ってなんだろう。 結城母が「それではお願いします」と高槻さんに頭を下げてるし、結城に関するものなのだろうけども……。
オレや優香、結城の視線が向けられたのを確認した高槻さんは優しく微笑みながら結城を見つめる。
「ーー……? 先生?」
「ということなので結城さん、お母様の了承は頂いておりますので、先生と一緒に暮らしましょう」
「「「えええええええええええええええええ!?!?!?!?」」」
お読みいただきましてありがとうございます!!
下の方に☆マークがありますので、評価していってもらえると励みになります嬉しいです!
感想やブクマ・レビュー等心よりお待ちしております!!!!




