24 どんだけ人生ハードモード!?
二十四話 どんだけ人生ハードモード!?
明日は土曜日で休みということもあり、オレはダイキの残したイジメノートに目を通していた。
「んー、一番厄介そうだった杉浦は出席停止にさせて処分しただろ? で、村本もヤンチャだった西園寺にやられて大人しくなってるし……」
他にも男子の名前は書かれてはいるがあまり気にするほどのことでもなさそうだよな。
基本的には杉浦のイジメに参入するだけの雑魚ばっかりみたいだし、将来エリートの小畑は別として三好・多田もオレの手中にあるしな。
「今度は誰にするか……」
あぁ、ずっと脳を動かしてたら無性に炭酸を飲みたくなってきたぞ。
ということでオレは姉・優香の部屋に向かい、軽く扉を開けた。
「ーー……? ダイキ、どうしたの?」
ベッドの上でスマートフォンをいじっていた優香がオレに視線を向ける。
うん、やっぱり扉を開けた瞬間漂ってくる女の子特有の甘い香り……実に堪らん。
オレはそんな香りを体内に取り入れながらも優香に話があることを説明。 「なんかジュース飲みたくなっちゃってさ。 近くのコンビニまで買いに行こうと思うんだけど、お姉ちゃんなんかいる?」と尋ねてみたのだが……
「え、でももう結構遅いし危なくない?」
さすがは小学生の弟を持つ姉。 危機管理が徹底されているぜ。
しかしそこで簡単に引き下がるほどオレの炭酸を飲みたい欲は解消されるはずもなく……。
「大丈夫だって。 まだ塾行ってたりしてる子もいる時間だし、それにコンビニ近くじゃん」
「んー、なら心配だしお姉ちゃんも行こうかな。 待ってて、すぐ準備するから」
「え」
そういうと優香はスマートフォンを置いてベッドから降りることに。 体の向きを変え床に足をついて立ち上がろうとしたのだが、その時に見えてしまったのだ。
ちょうど優香の着ている服は大きめのパーカー1枚……なので足の隙間からこんにちはしてくるパンツさんが。
いやぁ……やっぱりパンツはJSよりもJC、JCよりもJKだよな。
オレは心の悟りを開きながら優香が着替え終えるのを待った。
◆◇◆◇
「ついでだから家にないもの一緒に買っちゃおうか」
コンビニに着いたオレたち。 オレの目の前で優香が色々なものをカゴに入れていく。
「お、お姉ちゃん……これ持てるの?」
「大丈夫だって。 お姉ちゃん、よく夕食の食材とか買って帰ってるでしょ? それで鍛えられてるんだから。 あ、そうだ絆創膏もあまりなかったからストック置いとかないとね」
その後会計を済ませたオレたちはコンビニを出てまっすぐ家に帰ろうとしていたのだが、それはコンビニの自動ドアを出てすぐのこと。
「ーー……ねぇ、あの子どうしたんだろ。 大丈夫かな」
「ん?」
優香が心配そうに視線を向けていたのはコンビニの向かいにある塾の階段。
そこに私服姿の女の子が膝を抱えて座り込んでいる。
ていうか待て、いやあれは……
「ちょっとそこで待っててお姉ちゃん」
「え、ちょっ……ダイキ?」
オレは女の子に近寄り顔を確認することに。
すると……ビンゴだったな。
「やっぱり。 結城さんじゃん」
「ーー……あ」
そこにいたのはあのいじめられっ子の結城桜子。
結城はオレに気づくなりじっとオレを見上げる。
「どうしたの? 塾帰り?」
そう尋ねるも結城は何も答えず。 しかしその代わりに静かに首を左右に振る。
「じゃあ何で……」
「ーー……」
うーーん、塾じゃないとしたら一体なんなんだ?
オレは今の小学生の習い事といったら他に何があるのだろうと考えていたのだが、少し時間がかかり過ぎていたのだろう。 後ろから優香が「どうしたの? ダイキのお友だち?」と尋ねてきた。
「あー、友だちというか……うんまぁ、そんな感じ。 クラスは違うけど名前は結城さんっていうんだ」
「そうなんだ。 私はダイキの姉の優香だよ。 よろしくね」
優香が結城の前でゆっくりとしゃがみこむ。
するとやはりこういう場合は同性同士の方が話しやすいのだろうか。 結城は優香の顔を見るなり小さく口を開いた。
「結城……桜子、です」
「うん、桜子ちゃんよろしく。 それで、どうして桜子ちゃんはこんなところに1人でいるの?」
「お母さんの彼氏が家に来てて……日曜日の夕方までどこかで過ごしなさいって」
「ーー……え?」
「まじか」
まさかの結城の発言にオレと優香は言葉を失い絶句。
都会ではないとしても、翌日の夕方まで帰ってくるなって子供に言う親がドラマ以外で本当にいるなんて。
ちなみにその後優香がそれでどうしてここを選んだのかを聞いていたのだが、その結城の返答は「近くにコンビニあって明るいし、変な人来たらすぐに逃げれるから」というもの。
ーー……これは頻繁にやられてるな。
ていうか今は少しはマシになったはずではあるが最近までは学校でいじめられ、家では邪魔者扱いされてるって……それって結構、いやガチで辛くないか?
「桜子ちゃん、ご飯とかはどうするの?」
優香の問いかけに桜子はポケットから何かを取り出し、優香に見せる。
見てみるとそれは五千円札。 『これでどうにかなるでしょ』と母親に言われているらしい。
おお、これはかなりダークな問題きたよ。
絶対に自殺しようとしたダイキよりも遥かにヤバそうだよな。
それについては優香もオレと同意見だったようでおもむろにポケットからスマートフォンを取り出す。
「お姉ちゃん? どうしたの?」
「うーん、とりあえずさ、桜子ちゃんのお家に連絡しても意味なさそうだし……これはもう警察に保護してもらうしかなくないかな」
「あー確かに……」
「そ、それはダメ!!」
突然結城が少し声を張り上げて立ち上がる。
「さ、桜子ちゃん?」
「警察、前にも呼ばれたことあったけど……そしたらお母さん怖くなる。 私を叩く。 だからやめて……」
ええええええええええええええ!?!??!?!?
まさかの家庭内暴力付き発言。 どんだけ人生ハードモードなんだよ結城ぃい!!
これには流石の元・大人のオレも対策は警察に相談する以外まったく考えつかず。
優香は結城の涙目にやられて動く事が出来ず。 なのでここは結城の希望には反するが結城の安全上そうするしかないと思い静かにスマートフォンを取り出したのだが……
「じゃあさ、日曜日の夕方までウチ来る?」
優香が結城に優しく微笑みかける。
「エ?」
「ーー……え」
「桜子ちゃんがイヤだったら無理にとは言わないけど」
「あ、あのー、お姉ちゃん?」
オレは恐る恐る優香に声をかける。
ていうかそれってバレたら何かヤバそうやつじゃなかったかな?
あーでもそれは成人男性が家出の女の子を泊めた場合か? くそ、そこらへんがよく分からん!!
そんなことをオレが1人で脳内会議していると、優香がオレにそっと耳打ちをしてきた。
「私ね、この子がダイキみたいなことをしそうで怖いの。 だからいいでしょ?」
「ーー……!!!」
オレは結城に視線を移す。
目にあまり光がない……もしかしてオレの魂が入る前のダイキもこんな感じの目をしてたのだろうか。
だとしたら……オレには何も言える権利はないよな。
「うん、結城さん、ウチおいでよ」
そう言いながら手を差し出すと、結城は「……いいの?」とオレの手を見つめる。
「もちろん」
「でも……迷惑じゃない?」
「全然。 ね、お姉ちゃん」
「うん」
「じゃ……じゃあよろしくお願い……します」
こうして結城がオレの手を握り返したことで互いの同意が成立。 オレと優香は結城を加えた3人で自宅へと戻ったのだった。
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